Tuesday, August 26, 2014

刑務所は受刑者に向き合えるのか

岡本茂樹『凶悪犯罪者こそ更生します』(新潮新書、2014年)

臨床教育学者で、立命館大学産業社会学部教授だが、LB級刑務所で篤志面接委員を続けていると言う。その経験をもとに、13年に『反省させると犯罪者になります』(新潮新書)をだし、本書が第2弾だと言う。本書でも「反省させると犯罪者になります」という考えが解説される。いささか過激なタイトルともいえるが、反省から更生につなげるプロセスを、受刑者がどのように辿るのかについて著者なりの研究、経験をもとに展開している。気づきを経て、自分と向き合うことなしに「反省」させても、そこにはごまかしが含まれて、本当の反省にはなりえないことが強調される。刑務所に収容された受刑者は「反省」を求められ、迫られ、「反省」すれば成績が良くなり、「反省」しなければ仮釈放が遠のくのだから、いやでも「反省」する。それは「反省したふり」でもある。「反省したふり」の上手な受刑者は本当に反省することがない。落ちるところまで落ちて、自分が起こした事件に向き合い、被害者とその遺族に向き合い、事件を起こすにいたったきっかけを自ら探り当て、自分にしっかり向き合って初めて反省することができる。受刑者も一人の対等な人間であることを踏まえて接することで、面接員も受刑者のホンネに接することが出来る。本書の最後の問いかけは「刑務所は受刑者に向き合えるのか?」である。