Saturday, July 02, 2016

永続敗戦の、その先とは

白井聡『戦後政治を終わらせる――永続敗戦の、その先へ』(NHK出版新書)
ベストセラー『永続敗戦論』で、誰もが分かっているつもりになっていながら、実は正確に把握し損ねていた、この国と社会のどん底の真実を鮮やかに分析して見せた著者による、真の「戦後レジームからの脱却」をめざす現状分析である。鹿児島大学大学院の木村朗ゼミでの授業の記録をもとにした本書で、著者は、安倍晋三がご都合主義的に唱える「戦後レジームからの脱却」を逆側から成し遂げるために、戦後日本の憲法体制、資本主義の転回、社会意識の在り方に即して、再整理している。
序章 敗戦の否認は何をもたらしたか
1章 55年体制とは何だったのか
2章 対米従属の諸相(1)
3章 対米従属の諸相(2)
4章 新自由主義の日本的文脈
終章 ポスト55年体制へ
『未完のレーニン』の著者が『永続敗戦論』の著者として登場した時に、意外性と言うか、驚きを感じたものだが、驚いたのは読者の勝手であって、著者の研究は一貫しているのだろう。すでに崩壊している「戦後レジーム」に本当の終わりをもたらすポスト55年体制のために著者は、3つの「革命」が必要だという。永続敗戦レジームを失効させる政治革命、近代的原理を徹底させる社会革命、そして「太初に怒りあり」の精神革命である。「要するにそれは、意志の問題です」という指摘には納得しかねる面もないではないが。

沖縄の現状について、著者は「正しい形で政治対立の構図が表れた」という。なるほど、2014年の県知事選は、「永続敗戦レジームの代理人」と、これにノーを突きつけた「永続敗戦レジームを拒否する勢力」としての「オール沖縄」の対立であった。著者は、これこそ現代日本におけるあるべき対立であるのに、本土ではそのことに気づこうとしないという。重要な指摘だ。