Wednesday, July 11, 2018

目取真俊の世界(8)初の長編小説『風音』


目取真俊『風音』(リトル・モア、2004年)


目取真俊の最初の長編小説だ。もとは『水滴』(文藝春秋、1997年)に収録された短編だが、「風音」が書かれたのは1985年。2003年に映画化された際に脚本とともに、長編小説となった。


特攻隊の若者のしゃれこうべを風が吹き抜けるためにおきる音。笛の音にも鳥の声にも似ているが、それとは違う、風の音。沖縄戦の記憶が風となり、風音となり、人々の心にしみ渡る。沖縄戦の記憶も人それぞれであるが、日本軍兵士、沖縄の住民、子どもたち、いずれも戦争に翻弄された。戦争に引き裂かれた人生を、切ない風音が吹きすぎる。過去と現在を行きつ戻りつしながら、目取真は沖縄の終わらない物語を紡ぐ。


映画『風音』はまだ観ていない。一度観なくては。

https://ja.wikipedia.org/wiki/風音_(映画)