Saturday, August 15, 2020

ヘイト・クライム禁止法(177)ハンガリー

 

ハンガリーがCERDに提出した報告書(CERD/C/HUN/18-25. 12 November 2018

2012年に、1978年刑法第4章を改正し、ヘイト・クライム規制を厳格化し、2013年7月1日に発効した。いかなる社会的属性または人的属性に基づいて住民に集団に対して行われたヘイト・クライムの規制である。

刑法216条(コミュニティ構成員に対する暴力)

刑法332条(コミュニティに対する煽動)

刑法333条(ナチス及び共産主義政権が行った犯罪の公然否定)

刑法335条(全体主義のシンボルの使用)

このうち刑法216条と332条は、国民、民族、人種又は宗教集団を列挙するだけではなく、性的志向、ジェンダー・アイデンティティ又は障害のような保護された属性の保護を提供する。しかし、列挙は網羅的ではない。

刑法332条の改正の背景は、表現及び意見の自由に関するハンガリー基本法第4修正である。欧州評議会から、ハンガリー法が2008年欧州評議会枠組み決定を履行していないと指摘があったためである。基本法第9章は次のように改正された。

(4)表現及び意見の自由は、他者の人間の尊厳を侵害することを目的としえない。

(5)表現及び意見の自由の行使は、ハンガリー国民の尊厳、又はいかなる国民、民族、人種又は集団の尊厳を侵害することを目的としえない。これらの集団構成員は、自己の人間の尊厳を侵害する言説を裁判所に提訴する資格を認められる。

刑法216条のコミュニティ構成員に対する暴力については、人に対する現実的身体的攻撃以前の事案にも射程を及ぼす。現実的身体的攻撃については刑法216条2項が暴行脅迫を罰するとしている。

コミュニティ構成員に対する暴力の実行は、銃器・武器の使用、実体的法益侵害、重大な苦痛、集団的行為、犯罪共謀の場合は、刑罰が加重される。

刑法333条(ナチス及び共産主義政権が行った犯罪の公然否定)は新しい実行行為の定義を取り入れたので、ナチス及び共産主義政権が行ったジェノサイド又は人道に対する罪を正当化しようとすることも処罰対象である。この改正理由もハンガリー基本法第4修正、及び2013年の憲法裁判所決定である。憲法裁判所によると、全体主義体制の被害者及び家族の人間の尊厳を保護するので、処罰規定は合憲である。憲法裁判所は、基本法第4修正が表現及び意見の自由の濫用を禁止することに留意した。憲法裁判所は、ナチス及び共産主義政権が行った犯罪を否定することは、表現及び意見の自由の濫用であるとする。

刑法332条(コミュニティに対する煽動)、刑法333条(ナチス及び共産主義政権が行った犯罪の公然否定)、刑法335条(全体主義のシンボルの使用)は、いずれも犯行が公衆の前で行われたことを必要とする。刑法は公衆の前でという要件に付き定義をしていない。考慮すべき事項として、比較的多数の人々の現在すること、犯行時に公衆がいなかったが、公衆が現在する現実的可能性があったことが示されている。人々が現実にその言説を認知したことは要件とされていない。

人種主義行動への支援について、コミュニティ構成員に対する暴力犯罪の準備行為や財政支援は、処罰されうる。教唆・幇助も可罰的である。

「公共の安全に対する不法組織」犯罪が規定されている。刑法351条は結社の権利の濫用について、指導者としての参加、公共の平穏を侵害する方法での参加を可罰的とする。当該組織は裁判所命令により解散できる。

公の当局や公務員による人種差別扇動について、刑法は特別の処罰規定を用意していないが、2012年議会法改正により、議員が、国民、民族、人種又は宗教コミュニティの人々の個人または集団を甚だしく攻撃する言説を規制している。

ハンガリー政府は表現及び意見の自由を促進し、ヘイト・スピーチを根絶する政策枠組みを採用している。ハンガリーの立法者も行政も、反ユダヤ主義、反ロマ、その他の偏見と人種主義の諸形態に反対し、制裁を科す。

人種主義又は偏見同期に基づく犯罪は刑罰加重事由となる。犯行者が当該刑罰規定に明示された人種主義同期を持たない場合であっても、刑法上の刑罰加重事由に該当すれば刑罰が加重される。人種動機や偏見同期は合理的な疑いを超えて証明される必要がある。

最高裁判所は、判決言い渡しに際しておおむね次の姿勢を表明してきた。ナチス及び共産主義政権が行った犯罪の公然否定犯罪について、保護観察付又は罰金。コミュニティ構成員に対する暴力犯罪について、罰金または社会奉仕命令。これらの犯罪型の犯罪と結びついている場合に、刑事施設収容であるが、執行猶予が付くこともある。

CERDがハンガリーに出した勧告(CERD/C/HUN/CO/18-25. 6 June 2019

人種主義ヘイト・クライムと効果的に闘うため、ヘイト・クライム予防の迅速な措置を講じ、被害を受けやすい集団を保護すること。そのための法適用に関する詳細な情報、特に告発、捜査、有罪判決、制裁に関する情報を提供すること。警察官、検察官、弁護士、裁判所にヘイト・クライム対処のための研修を行うこと。ヘイト・クライムを記録、捜査、訴追し、適切な刑罰を科すこと。

一般的勧告35号を想起し、人種主義ヘイト・スピーチ及び暴力の扇動を止めるため迅速な措置を取り、メディアやインターネットにおける政治家などのヘイト・スピーチを非難し、被害を受けやすい集団を保護すること。人種主義ヘイト・スピーチを予防し、関連法規を強化すること。人種主義ヘイト・スピーチを確認、記録、捜査、訴追し、政治家やメディア関係者など責任者に制裁を科し、次回報告書において詳細な情報を提供すること。

条約第4条に従って、人種憎悪を助長し扇動する組織を違法であり禁止されたものと宣言しすること。当該禁止法を完全に履行すること。