Thursday, October 28, 2021

ナチス賛美との闘い――ホロコースト否定犯罪を考える03

13 ハンガリー

基本法第15条に平等取り扱いの原則が掲げられている。反ユダヤ主義に対してゼロトレランス政策を宣言してきた。ユダヤ人コミュニティの保護のための法律には基本法、刑法、民法、メディア法があり、「国際ホロコースト記憶連合」が定式化した反ユダヤ主義の定義を採用している。

2018年のEU基本権調査によると、ハンガリーはユダヤ人にとってもっとも安全な国の一つである。政府と協力している「行動保護基金」の提起監視活動が行われ、反ユダヤ主義の事件はこの10年間減少している。

20121月、警察はヘイト・クライムに関する独立専門家制度を立ち上げた。2012年、「ヘイト・クライムに反対する作業部会」と協力し、NGOの協力も得て、より効果的にヘイト・クライムと闘うためにガイダンス制度が設立された。不寛容とヘイト動機を特定する指標の定義が効果的である。

14 イラク

ナチスやネオナチの集団や運動は存在しない。しかし2014年、ダエシュ・テロリスト集団が登場し、イラク人や特定の民族的宗教的集団に対する大規模人権侵害を惹き起こしている。殺人、拷問、誘拐、強姦、性奴隷、強制改宗、子ども徴募などの国際人道法違反が起きている。一部は人道に対する罪に当たる。

過激主義政党に反対するために2016年の法律32号は、人種主義やテロリズムや民族浄化のイデオロギーを煽動・助長する政党を禁止している。2015年の法律36号(政党法)は人種主義、テロリズム、民族的宗派的国民的過激主義に基づく政党の設立を禁止している。

15 イスラエル

歴史的に、危機の時代には過激主義が盛り上がってきた。新型コロナ禍も例外ではなく、人種主義、排外主義の温床となり、特定の集団をスケープゴートにしがちである。フェイクニュース、誤情報、ヘイト・スピーチが飛び交うようになっている。

政治的社会的に分極化するため新型コロナが社会の緊張と分岐を強めている。評価を下すには時期尚早であるとはいえ、世界が直面している経済的抑圧がヘイト・クライムにつながっている。

ヘイト・スピーチに関しては、インターネットとソーシャル・メディアの役割が増大していることに注意が必要であり、政府と市民社会には、より安全なインターネットを形成する迅速な関与が求められている。

メインストリームのソーシャル・メディア・プラットフォームのヘイト・スピーチ規制には積極的な傾向が見られるものの、まだ改善の余地がある。オンライン・ヘイト・スピーチに取り組む努力の結果、多くの過激主義者がオルタナティブ・ソーシャル・メディア・プラットフォームに移動した。

オルタナティブ・ソーシャル・メディア・プラットフォームが白人国民主義やネオナチの天国となっている。「反ユダヤ主義サイバー監視システム」はリアルタイムの監視システムであるが、これによると、ナチス・イデオロギーの賛美、ホロコーストの否定、ユダヤ人に対する暴力の呼びかけが見られる。

20212月、ディアスポラ省、戦略的外交省、外務省は、反ユダヤ主義と闘うため、反ユダヤ主義ヘイト・スピーチ・オンラインと闘うアプローチの政策を提言した。提言案はなお審議中である。

16 イタリア

「人種差別に反対する国家事務局」は人種、民族的出身、宗教又は信念、年齢及び性的指向又はジェンダー・アイデンティティに基づくすべての形態の差別からの保護に責任を有する。同事務局は現代的諸形態の人種主義や人種差別の傾向を監視し、差別の申し立てを記録し分析する。同事務局は差別被害者を支援する。

人種主義、排外主義、暴力的過激主義について法的枠組みがあり、2020616日、反ユダヤ主義の認定のための作業部会を設置した。作業部会は20211月に最初の報告書を出し、反ユダヤ主義に反対する国家戦略に関する提案を含んでいる。同じ戦略はEU評議会の要請に従い、反ユダヤ主義と闘う宣言を含んでいる。オンライン・ヘイト・スピーチと闘う措置について、戦略には議会への立法提案を含み、ヘイト・スピーチの報告と削除のシステムを用意している。

オンライン・ヘイト・スピーチの予防と闘いに関して、全国的に、ヘイト・メッセージを発信するウエブ・プラットフォームを特定する戦略が実施されている。

17 キルギスタン

憲法第4条は宗教的又は民族的基礎の政党、並びに宗教団体による政治目的の政党創設を禁止する。過激主義の現象に反対し、根絶する措置を講じている。タリバーン運動、統一教会など6つの宗教団体が過激主義故に禁止されている。

憲法第16条は平等原則、人種及び民族に基づく差別を禁止する。人種差別撤廃委員会勧告に従って、反差別法を採択し、201922年の計画を策定した。

201317年、人民統合及び民族間関係を強化する戦略が実施されている。2014年、民族間紛争を早期に予防するシステムを創設し、早期警報システムにより10,128件の予防措置をとり、市民からの通報5,908件を検討した。

18 マルタ

「人種主義と排外主義に反対する国家行動計画」を作成した。人権担当官は「EUの権利、平等、市民権計画」に基づいて2か年計画の「すべての人の平等」を統括する。「人種主義に反対する欧州ネットワーク」及び「宗教と信念に関する欧州ネットワーク」と協力している。

プロジェクトの対象はマイノリティ構成員であり、宗教や信念、人種や民族的出身に基づく差別の被害者、複合差別の被害者である。