Wednesday, March 25, 2026

反差別連続講座第7回 フェミサイドと闘うグローバルサウス・フェミニズム

反差別連続講座第7

フェミサイドと闘うグローバルサウス・フェミニズム

前田 朗

5月9日(土)13201630 開場1300

浦和コミュニティセンター第13集会室

JR浦和駅東 浦和パルコ上10F

参加費800円 学生・障がい者500

今回のテーマは「フェミサイド」。

日本ではほとんど聞きなれない言葉ですが、日本軍「慰安婦」問題や沖縄米軍兵士・性暴力事件をフェミサイド(植民地主義、家父長制、女性に対する暴力)の視点で考えます。

欧米にはフェミサイド刑法がありますが、日本ではあまり議論されていません。

<参考文献>

①前田朗「フェミサイド研究のために――ラテンアメリカのフェミサイド刑法の紹介」『女性・戦争・人権』23号(2024年)

②前田朗「フェミサイド処罰の世界の動き(一)(二)」『マスコミ市民』683号・684号(2026年)

③前田朗「植民地主義とフェミサイド」『部落解放』880号(2026年)

主催: 外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク埼玉

協賛: ヘイトスピーチ禁止条例を求める埼玉の会

子どもの人権埼玉ネット

朝鮮・韓国の女性と連帯する埼玉の会

問合せ:080-1245-3553(斎藤)

シオニズムの広さと深さと不可解さ

鶴見太郎『シオニズム――イスラエルと現代世界』(岩波新書)

https://www.iwanami.co.jp/book/b10151794.html

 

 それなりに知っているつもりだったが、どうやら随分と違うようなので、本書を手にした。その通り、知らないことがたくさん書かれている。これまでのシオニズム観は英語文献に依拠した、西欧のシオニズム観だ。しかし、ロシア東欧圏のシオニズムを無視しているため、極めて一面的だ。鶴見はロシア東欧圏のシオニズムを詳しく紹介して、全体像を提示しようとする。シオニズムの歴史的地理的広がり、思想の深まりと変遷が詳しく描かれる。

「イスラエルはなぜ国際的に孤立してまで、パレスチナ人を徹底して攻撃するのか。パレスチナにユダヤ人の民族的拠点をつくるという思想・運動である「シオニズム」。ホロコースト以前に東欧で生まれ、建国後もイスラエルを駆動し続ける思想の起源と変遷を、国際社会とのかかわりの中で描く。現代世界を読み解くために必携の書。」という宣伝の通り、非常に詳細な、しかもバランスの取れた記述で、シオニズムについて知り、理解することができる。

 ここまで知らなくてはならないのか、と思いながら読み進めることになる。しかも、本書を読みえ終えても、実は「イスラエルはなぜ国際的に孤立してまで、パレスチナ人を徹底して攻撃するのか」は、わかったようで、わからない。考えようによっては、ますますわからなくなる。それは良くあることだ。どの思想運動についてもいえることだ。優れた著作は、実に多くの事を教えてくれるし、考えさせてくれる。そのため、考えたことのなかった疑問がまた生まれて来る。永遠の謎かもしれない。

 ネタニヤフという一人の政治家の生理と病理を理解するために本書は最良のテキストだが、読み終えた途端、ネタニヤフの理解が困難になる。

 しかも、イスラエルは、パレスチナ人を徹底して攻撃するだけではない。今やイラン人を攻撃している。イスラエルは人類そのものへの憎悪に突き動かされているのではないかと思いたくなるような現実が目の前にある。鶴見には次々と著書を送り出してもらわないといけない。

Thursday, March 12, 2026

忘れられたヘイト・クライム 1998年・千葉朝鮮会館強盗殺人事件

茅ヶ崎追悼会2026年度連続市民学習会・第二回

忘れられたヘイト・クライム

1998年・千葉朝鮮会館強盗殺人事件

講師 前田 朗

京都朝鮮学校襲撃事件が起きた時「日本でヘイト・スピーチが起きるようになった」と語られました。ウトロ放火事件が起きると「ついにヘイト・クライムが起きた」と語られました。とんでもない間違いです。1923年の関東大虐殺をはじめ膨大なヘイト事件の歴史があります。1998年の千葉朝鮮会館事件とは何だったのか。なぜ忘れられたのか。ともに考えましょう。

4月11日(土)第1部10時~11時40分(9時30分開場)

第2部14時~15時30分(希望者で)

茅ヶ崎市立図書館第1会議室(第1部)、第2会議室(第2部・質疑)

アクセス 茅ヶ崎駅南口から徒歩5分、地図参照 

参加費  資料代 500円(学生・障がい者無料)

主 催  関東大震災茅ヶ崎での朝鮮人虐殺犠牲者を追悼する市民の会

共 催  ビースカフェ ちがさき

協 力  ソーラーハウスにしかわ

お開合せ/電話お申込先 090-8815-0150(あまの)

0467-53-4448(おごせ)

Tuesday, March 10, 2026

奴隷条約100周年(02)

奴隷条約100周年(02

 

1 国連人権特別報告者たちの声明

2 古橋綾論文

 

**********************************

 

1 国連人権特別報告者たちの声明

 

36日、国連人権機関の特別報告者たちが、日本軍性奴隷制に関する声明を発表した。

https://www.ohchr.org/en/press-releases/2026/03/justice-truth-and-reparations-long-overdue-survivors-so-called-comfort-women

 

①女性と少女に対する差別に関する作業グループ、②女性に対する暴力特別報告者、③強制又は非任意の失踪に関する作業グループ、④人権擁護者の状況に関する特別報告者、⑤女性と子どもの人身売買に関する特別報告者、⑥真実・正義・補償・再発防止保障の促進に関する特別報告者、⑦子どもの売買・性的搾取・性的虐待に関する特別報告者、⑧奴隷制の現代的諸形態に関する特別報告者による連名の声明である。おおよその内容を紹介すると、

おおよその内容を紹介すると、

80年も経たのに、被害者及びその家族は、真実、正義、補償、記憶への権利の否認に直面している。

2015年の日韓合意をはじめとする従来の努力は、生存者中心の正義をもたらしていない。

生存者と家族がその国内裁判所や日本の裁判所に訴訟を起こしてきた。この努力に支援が求められる。

戦争犯罪と人道に対する罪については主権免責は採用できない。

日本政府が生存者の権利を認めて実現するよう呼びかける。

高官による残虐行為の否定、被害者団体や研究者に対するハラスメントがあり、他方、被害者/生存者は数十年、認定、謝罪、補償を待っている。>

1990年代の国連人権委員会における審議に始まって、多数の報告書、勧告、声明が出されてきた。女性差別撤廃委員会、国際自由権委員会、強制失踪委員会などからも勧告が相次いだ。

日本政府、メディア、社会は無責任を決め込んでいる。

 

2 古橋綾論文

 

古橋綾「35年目の日本軍『慰安婦』問題を考える――その『解決』を積み重ねるために」『PRIME』49号(明治学院大学国際平和研究所、2026年)

1.      はじめに

2.      日本政府の対応と課題

1)「解決」のための要求と日本政府の対応

2)国際社会からの視線

3)日本政府が取り組むべき課題

3.最近のアカデミアでの議論への批判的検討

1)「被害者」についての語り

2)東アジアの未来を構想する?

4.おわりに

古橋は、1990年代からの日本軍「慰安婦」問題に関する議論状況を再確認し、日本政府が被害者救済を怠ってきたこと、政策の混迷を点検することを怠ってきたことをていねいに論じる。「アジア女性基金」や2015年の「日韓合意」の失敗を踏まえて、真相究明の努力をする必要性を指摘する。そのうえで、古橋は、最近の研究状況の特徴を批判的に検討する。

1つは、朴裕河の『帝国の慰安婦』を擁護する論文集『対話のために』である。古橋は「解決運動に対する攻撃を加える際のうっすらと漂う嘲笑の雰囲気に、帝国主義的でミソジニー的な視線を感じざるを得ない」と言う。指摘の通りである。同書出版当時、私は次のように書いた。

https://maeda-akira.blogspot.com/2017/08/blog-post_20.html

その一部は、前田朗『ヘイト・スピーチ法研究原論』第3章「『慰安婦』へのヘイト・スピーチ」第3節「歴史修正主義とヘイト・スピーチ」(143150)に収録した。

2つは、『和解学叢書』である。全6巻に及ぶ総合的な共同研究だが、浅野豊美、外村大、東郷和彦など中心メンバーは『対話のために』と同じである。朴裕河擁護の「和解学」である。「紛争解決学」を否定する「和解学」は「人権」や「植民地責任」も否定する。日本が考える価値に沿って東アジアの未来を構築しようと言う。その問題性を、古橋はいくつかの論点に絞って検討する。特に「解決運動に対する無知と軽視に基づく批判が目に付く」と言う。

「国際的な努力で打ち立てられてきた人権概念を捨て、日本になじむ認識枠組みで東アジア共同の未来を構想するというその方法に帝国の位置から抜け出せない日本人のナショナリズムを感じるためである」。

私は「解決学叢書」を読んでいない。出版当時、読んでも仕方がない、得るところがないだろうと思ったためだ。古橋論文を読んで、やっぱり、と呟いた。

国連人権機関の特別報告者たちの声明と古橋論文を読むことで、日本軍性奴隷制問題へのさらなる取り組みの重要性を痛感させられた。

Saturday, March 07, 2026

深沢潮を読む(14)「深沢潮宣言」

深沢潮『はざまのわたし』(集英社インターナショナル、2025年)

https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-7976-7458-3

 

20251月に出版された著者の最初のエッセイ集だ。

「金江のおばさん」でデビューしたのが2012年。それ以来、女性が抱える恋愛、仕事、家族、子育てなどの現実を通して現代社会を描くとともに、在日朝鮮人の歴史に分け入って過去と現在をつなぎ、深く思索する歴史小説を送り出してきた。

本エッセイでは「食べることは生きることであり、生きてきた軌跡の断片をこのエッセイに書いた」とあるように、「食」をテーマにしている。

キムチ、珈琲、寿司、カップ麺、酒、フライドチキン、肉、ベーグル、チョコレート、アフタヌーンティー、サンドイッチ、ヌルンジ/お茶漬けを取り上げて、思い出を語る。日本と韓国の食の比較、在日の食の位置づけなどが繰り返し話題となり、日韓文化論になっている。

そして表題にある通り、「日韓のはざまの深沢潮」を対象化する。

「在日コリアンのアイデンティティがさまざまであるように、在日料理も多様で、オリジナリティの濃淡もそれぞれ異なり、いろどり豊かである。」

それゆえ、次の7行につながる。

「別に、どちらの国の人でもいいじゃないか。

 どちらの国の人でなくてもいいじゃないか。

 自分は、自分なのだ。

 唯一無二のごちゃまぜの存在じゃあだめなのか。

 そもそも、誰が、何の権利があって、なにを根拠に、ジャッジするのか。

 本物かそうでないかなんて決める必要はないのではないか。

 だいたい、本物ってなんだ。」

 これを乱暴に否定したのが、『週刊新潮』の高山正之「創氏改名2.0」だった。

 深沢は抗議の記者会見を開かざるをえず、新潮社から版権を引き上げることになった。さらに、高山がコラムを収録した本を出版したため、訴訟を起こさざるを得なかった。

 【週刊誌問題】深沢潮 激動の2025年を振り返る【版権引き上げ】

https://www.bing.com/videos/riverview/relatedvideo?q=%e6%b7%b1%e6%b2%a2%e6%bd%ae%e3%80%81%e3%81%af%e3%81%96%e3%81%be%e3%81%ae%e3%82%8f%e3%81%9f%e3%81%97&mid=0035B0DF8EEBB66053E70035B0DF8EEBB66053E7&FORM=VIRE

Thursday, March 05, 2026

アルバネーゼ『ガザへの集団犯罪――私たちはいかにジェノサイドに加担しているか』

 フランチェスカ・アルバネーゼ『ガザへの集団犯罪――私たちはいかにジェノサイドに加担しているか』(地平社、2026年)

もくじ

I 正義よ、私たちの嵐となれ――ネルソン・マンデラ財団年次講演

II 占領経済からジェノサイド経済へ

III ガザにおけるジェノサイド――集団犯罪

解説1 ジェノサイドを、植民地支配を終わらせよ!――アルバネーゼ二報告の射程と意義(早尾貴紀)

解説2 沈黙という選択肢はない――米国トランプ政権による国連特別報告者に対する制裁(小坂田裕子)

国連人権機関のパレスチナ問題特別報告者による2つの報告書の翻訳である。冒頭には、ネルソン・マンデラ財団年次講演が収録されていて、そのキーワードは「ウブントゥ」と「スムード」である。

「ウブントゥとスムードの信念を体現した、すべての人にとって人間性と連帯、正義、平等が尊重される世界に向かって。私たちはひとりでは儚くて蝶々の羽根のように脆い。しかし、小さな羽根を皆で一緒にはためかせれば、嵐を起こせるのです。正義よ、私たちの嵐となれ。」

ガザにおけるジェノサイドは、巨大な複合犯罪である。ジェノサイド条約及び国際刑事裁判所規程のジェノサイドの定義には5つの行為類型が含まれる。集団構成員に対する殺人だけではなく、生存を脅かす生活条件を課すことや、子どもを他の集団に移すことも含まれる。過去の多くのジェノサイド事件でも、単一のジェノサイドではなく、複合犯罪としてのジェノサイドが起きてきた。だが、ガザのジェノサイドは、その規模の大きさ、期間の長さ、犯行者の多様さと広がりなど、いくつもの点で際立った巨大さと複雑さを有している。

アルバネーゼ報告書は「占領経済からジェノサイド経済へ」と題して、「経済ジェノサイド」の全貌を描き出す。ガザにおけるジェノサイドは、ガザにおいてイスラエル軍によって行われているだけではない。むしろ、ガザの外で行われている。イスラエル軍ではなく、イスラエル軍や企業と結びつき、協力してきた世界、特に欧米各国、そしてその企業によって行われている。日本も含めて世界資本主義の主要なプレイヤーが、ジェノサイドとつながりを有している。そのネットワークは長年にわたって形成されてきており、世界資本主義の「常態」となっており、そのためそれがジェノサイドへの加担であることが見えにくくなっている。その全貌をアルバネーゼ報告書は描き出す。

自由と人権と平和を求める世界の民衆の最先端を駆けるアルバネーゼは、その知性と志ゆえに敬意を持って迎えられている。ただし、アメリカとイスラエルからは「反ユダヤ主義者」と罵声を浴びせられてきた。

イスラエル/パレスチナ問題はもとより、世界各地の紛争とジェノサイドに関心のある人すべてにとって、最重要の著者が迅速に翻訳された。ジェノサイドは紛争の現場で起きるが、実は同時に世界中で起きている。世界のビジネスがジェノサイドを支援し、助長しているからだ。資本主義、植民地主義、人種主義、ジェノサイドは解きほぐせない糸で雁字搦めに結びついている。経済ジェノサイドの真相を把握するための必読書である。

アルバネーゼは1977年、イタリア生まれ。ピサ大学で法学を修め、ロンドンSOAS大学で修士課程修了。国連人権高等弁務官事務所勤務歴。ジョージタウン大学国際移住研究所の研究者だったが、アメリカが彼女に制裁を課したため、2025年末にはその任を離れた。パレスチナ問題グローバルネットワーク創設者。2022年、国連のパレスチナ問題特別報告者に任命された。