鶴見太郎『シオニズム――イスラエルと現代世界』(岩波新書)
https://www.iwanami.co.jp/book/b10151794.html
それなりに知っているつもりだったが、どうやら随分と違うようなので、本書を手にした。その通り、知らないことがたくさん書かれている。これまでのシオニズム観は英語文献に依拠した、西欧のシオニズム観だ。しかし、ロシア東欧圏のシオニズムを無視しているため、極めて一面的だ。鶴見はロシア東欧圏のシオニズムを詳しく紹介して、全体像を提示しようとする。シオニズムの歴史的地理的広がり、思想の深まりと変遷が詳しく描かれる。
「イスラエルはなぜ国際的に孤立してまで、パレスチナ人を徹底して攻撃するのか。パレスチナにユダヤ人の民族的拠点をつくるという思想・運動である「シオニズム」。ホロコースト以前に東欧で生まれ、建国後もイスラエルを駆動し続ける思想の起源と変遷を、国際社会とのかかわりの中で描く。現代世界を読み解くために必携の書。」という宣伝の通り、非常に詳細な、しかもバランスの取れた記述で、シオニズムについて知り、理解することができる。
ここまで知らなくてはならないのか、と思いながら読み進めることになる。しかも、本書を読みえ終えても、実は「イスラエルはなぜ国際的に孤立してまで、パレスチナ人を徹底して攻撃するのか」は、わかったようで、わからない。考えようによっては、ますますわからなくなる。それは良くあることだ。どの思想運動についてもいえることだ。優れた著作は、実に多くの事を教えてくれるし、考えさせてくれる。そのため、考えたことのなかった疑問がまた生まれて来る。永遠の謎かもしれない。
ネタニヤフという一人の政治家の生理と病理を理解するために本書は最良のテキストだが、読み終えた途端、ネタニヤフの理解が困難になる。
しかも、イスラエルは、パレスチナ人を徹底して攻撃するだけではない。今やイラン人を攻撃している。イスラエルは人類そのものへの憎悪に突き動かされているのではないかと思いたくなるような現実が目の前にある。鶴見には次々と著書を送り出してもらわないといけない。