Sunday, June 27, 2021

スガ疫病神首相語録44 吾輩はコロナ坊ちゃんである

新型コロナ感染リバウンド状況になり、ワクチン接種とオリンピック開催をめぐる議論が続いている。理念も開催意義も失われたオリンピックに向けて「ずるずる、だらだらの暴走」が止まらない。

 

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 吾輩はコロナである。型名はまだ無い。

 どこで生れたか頓と見當がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所で武漢型とモゴモゴしていた事丈は記憶して居る。吾輩はこゝで始めて人間といふものを見た。

親讓りの無鐵砲で子どもの時から損ばかりしている。ロンドンに居る時分ロンドン一のおバカと言われた輩に感染させて一週間程除菌室に送られた事がある。

然もあとで聞くと、それはジョンソンといふ人間中で一番珍妙な種族であつたさうだ。此ジョンソンといふのは、時々我々を捕へてワクチンに差し出すといふ話である。

なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。ロンドンの二階バスから首を出して居たら、武漢型の一人が冗談に、いくら威張つても、そこから飛び降りる事は出來まい。弱虫やーい。と囃したからである。

然し其當時は何といふ考もなかつたから別段恐しいとも思はなかつた。但彼の掌に載せられてスーと持ち上げられた時、何だかフハフハした感じが有つた許りである。掌の上で少し落ち付いてジョンソンの顔を見たのが、所謂人間といふものゝ見始であらう。

医療用プレパラートに乗せられて歸つて來た時、おやぢが大きな眼をして二階位から飛び降りて腰を拔かす奴があるかと云つたから、此次はジャパニーズに感染させて見せますと答へた。

此時妙なものだと思つた感じが今でも殘つて居る。第一スパイクを以て装飾されるべき筈の顔が、つるつるして丸で薬罐だ。其後インド型やブラジル型にも大分聞いたがこんな型には一度も出會はした事がない。加之顔の眞中が餘りに突起して居る。そうして其穴の中から時々ぷうぷうと烟を吹く。どうも咽せぽくて實に弱つた。是が人間の飲む烟草といふものである事は漸く此頃知つた。

親類のものからデルタ型のスパイクを貰つて奇麗な刃を日に翳して、友達に見せて居たら、一人が光る事は光るが感染しさうもないと云つた。感染せぬ事があるか、何でも感染させて見せると受け合つた。

 そこでトーキョーに来てしばらくはよい心持に坐つて居つたが、暫くすると非常な速力でワクチン接種とあいなった。ワクチンが効いたのか自分が弱体化したのか分らないが無暗に眼が廻る。胸が惡くなる。到底助からないと思つて居ると、どさりと音がして眼から火が出た。夫迄は記憶して居るがあとは何の事やらいくら考へ出さうとしても分らない。

 ブラジル型が、そんならジャパニーズと共生してみろと注文したから、何だジャパニーズぐらい此通りだと北のススキノや南の国際通りまでぐるっと回って見せた。幸ひワクチンが遅れたのと、タローの官僚が無能だつたので、今だにジャパニーズと共生して居る。さてこそ傷痕は死ぬ迄消えぬ。

 ふと氣が付いて見るとイギリス型は居ない。澤山居つた兄弟が一疋も見えぬ。肝心の母親さへ姿を隱して仕舞つた。其上今迄の所とは違つて無暗に明るい。眼を明いて居られぬ位だ。果てな何でも容子が可笑いと、のそのそ這ひ出して見ると非常に痛い。吾輩は藁の上から急にワクチン広場へ棄てられたのである。急遽最強のトーキョー型に変異しなくてはと必死の工作中である。

 次第に訳がわからなくなってきた。井上ひさしの芝居には『吾輩は漱石である』があるが。猫と坊ちゃんをかけた試みは初めてだと思うが、予想通り収拾がつかない。