Saturday, May 14, 2022

女性ジャーナリスト・政治家に対する暴力04

「女性政治家に対する暴力」では、女性政治家も男性政治家に比べて独特のリスクにさらされているという。女性ジャーナリストと女性政治家は多くの点で共通の状況である。

政治の舞台における女性の数が増えているが、女性の政治代表が増えるにつれバックラッシュが生じている。世界の政治暴力を調査した「武力紛争地・事件データプロジェクト」2019年報告書によると、女性に対する政治暴力は過去最高となっている。実行し助長しているのは男性政治家の場合が多い。

A 議会選挙、公開集会における暴力

2018年の国連「女性に対する暴力」特別報告者によると、女性政治家に対する暴力は、ジェンダーに基づく暴力や脅迫であり、女性政治家が女性であるがゆえに対象とされ、身体的、性的、精神的害悪を被る。議会選挙は歴史的に男性によって設定されてきたので、議会は今日でも男性支配的である。女性が議員に選出されると、ジェンダー規範に挑戦していると見做され、男性議員からの抵抗に遭遇する。

世界的状況の調査によると、女性は候補になったとたんに攻撃される。家族や親族から反対され、選挙運動は暴力的に邪魔され、暗殺するなどの脅迫を受ける。選挙に当選すると、女性は、立法府における敵対的労働条件、セクシュアルハラスメント、ソーシャル・メディアでの攻撃を受ける。

政治領域における女性に対する暴力の調査データは限られている。列国議員連盟の調査が数少ない世界的調査である。2016年に39か国の55人の女性議員の調査、及び2018年の欧州評議会の議会の協力による123人の女性議員への聞き取りである。

2016年調査では、女性がジェンダーゆえに受ける差別と暴力が浮き彫りになった。82%が精神的暴力を受け、22%が性的暴力、26%が身体的暴力、33%が経済的暴力を受けた。

精神的暴力とは、男性議員やソーシャルメディアでの性差別的発言、殺すとかレイプするといった脅迫である。2019年、アメリカの議員イルハン・オマールは女性嫌悪、イスラム嫌悪、レイシズムにより政治家から攻撃された。

性的暴力はセクシュアルハラスメントや性的関係の強要の試みである。2016年調査ではセクシュアルハラスメントは共通の出来事であり、胸期触るような望まない不適切なジェスチャーが、議場や政治集会やディナーや公用旅行の際に行われる。ベラルーシでは、スヴィトラーナ・チハンスカヤ議員はいつも性暴力の脅迫を受けてきた。

欧州各国の女性議員の47%が殺す、レイプする、殴る等の脅迫を受けた。59%がオンラインの性的攻撃を受けた。68%が外見についてのコメント、あるいはジェンダーステレオタイプによるコメントの対象とされた。

B 政治における女性に対するオンライン暴力

女性も男性もオンラインでの攻撃を受けるが、男性については政治活動に向けられるのに、女性には直接向けられ、女性が恐怖、恥、傷害により政治生活ができなくなるように仕向ける。暴力が頻繁に繰り返され、性的な性質を有することが多い。

オンライン暴力はソーシャルメディア上だけでなく、暴力的な攻撃の目標とされ、身体的害悪の脅迫もある。列国議会連盟の調査では、ヌード写真モンタージュで侮辱するものや、ポルノ映像を配布する例も報告されている。

C 攻撃される政治家

女性議員が攻撃される中、特に攻撃が強まるのは、野党の女性議員であり、女性の権利をテーマとする場合である。一定の住民集団との関係にも着目され、年齢、ジェンダー、人種、セクシュアリティが取りざたされる。2018年調査によると、若い女性議員のほうが被害を受けやすい。若い女性議員の77%が性的言動による攻撃を受けている。76%が品位を貶める攻撃を受ける。36%がセクシュアルハラスメントを経験している。

人種的又は宗教的マイノリティに属する女性議員は特に攻撃される。2016年調査によると、外国出身とされる女性議員が極右から攻撃される。2019年のカナダの調査では、イクラ・カリド議員は、女性嫌悪、レイシズム、イスラム嫌悪による憎悪メッセージの標的とされた。2017年のアムネスティ・インターナショナル・イギリスの調査では、最初の黒人女性議員ダイアナ・アボットが受けたツイッターの45%以上が攻撃的であった。アボット以外の場合でも、黒人やアジア系の女性議員は35%以上、嫌がらせツイートを受けている。

LGBTQの議員も被害を受ける。2019年のカナダでは、レズビアンと公表している政治家が他の女性議員よりもずっと多くの被害を受けている。

D 政治領域への影響

女性に対する暴力は、女性の政治参加を妨げ、投票、立候補、議会での活動に影響がある。政治から離れる女性も多いし、最初から政治に参加しないようになる。少女に政治への関心を失わせる。

女性の心身への影響はジャーナリズムと同様である。2016年の調査で欧州の女性議員は、暴力の結果、傷害を受け、錨、悲しみ、不安、精神的暴力を感じさせられる。仕事を失う恐怖、孤立感、投げやり感に苛まれる。