Wednesday, May 11, 2022

女性ジャーナリスト・政治家に対する暴力01

欧州安全保障機構(OSCE)のジェンダー問題特別代表の年次報告書『女性ジャーナリスト・政治家に対する暴力――増大する危機』(2021)が出た。

Violence against Women Journalists and Politicians: A Growing Crisis, OSCE,2021.

雑誌『マスコミ市民』6月号の短いコラムで、こういう報告書があると紹介した。日本でも女性ジャーナリストに対する暴力、名誉毀損、オンライン暴力が増えている。裁判事例も多くなってきた。

以下で、報告書の全体の趣旨をごく簡潔に紹介する。報告書は59頁あるが、末尾は資料で、本文は47頁まで。

序文

1

危機の概観

女性ジャーナリスト・政治家に対するオンライン暴力

女性ジャーナリストに対する暴力

女性政治家に対する暴力

女性ジャーナリスト・政治家に対する暴力に対処する障壁

結論

2

OSCEの諸政府の構成におけるジェンダーバランス

ウクライナ特別監視団における女性代表

OSCE常設委員会代表のジェンダーバランス

OSCEにおけるジェンダーバランス

付録

2部は、OSCEの事務局、関連機関のスタッフなどのジェンダーバランスを分析し、さらに各国の内閣、国会議員、国際事務局など、各機関におけるジェンダーバランスを統計データに基づいて詳しく検討している。

1部が女性に対する暴力の本体である。

「危機の概観」によると、ジャーナリストや政治家は男も女も被害を受けるが、女性に対する暴力は異なる性質を有する。ジェンダー化され、性的な意味を有する。女性に対する暴力は女性が公的領域にいられないようにする。ジャーナリストや政治家としての仕事とかかわりのないこと、女性の外見、人間関係、職業の信頼性、好感度に焦点があてられる。実行犯の大多数は男性であり、伝統的なジェンダー役割を維持し、女性の公的な参加を制限する目的を有する。

女性ジャーナリスト・政治家に対する暴力はしだいに問題となり、より広いグローバルな文脈で悪化している。民主主義が退潮し、権威主義が伸びており、個人の自由を犠牲にして当局に従うことが増え、ジャーナリストと政治家の危機が増加し、実行犯のコストは減っている。権威主義に向かう動きが、家父長制の再現を招き、ジェンダー平等にマイナスの効果を持っている。権威主義的な指導者が、不寛容、女性嫌悪、恐怖をもたらしている。例えば20215月、ハンガリーとポーランドは、ポルトガルにおけるEU社会サミットから「ジェンダー平等」の語句を除去させた。20213月、トルコはイスタンブール女性に対する暴力条約から離脱した。ロシアはDV法を縮減した。

女性ジャーナリスト・政治家に対する暴力は有害な男性主義によって助長される。有害な男性主義は男性に、男性が公的領域を支配するべきであり、女性が社会における男性の役割を低下させてはならないと信じさせる。

ここで報告書は、ホワイト・リボン・キャンペーンの『男の子は泣かない』を紹介している。

White Ribbon CampaignBoys Dont Cry.

これで検索するとYoutubeなど、いろいろと出て来る。日本語でもホワイト・リボン・キャンペーンのページがある。

女性運動はジェンダー平等を李から強く推進してきた。#MeToo運動や女性の抵抗運動は女性の人生全体において暴力が女性に悪影響を与えていることを告発してきた。性的発言やハラスメントは「仕事の一部だ」などという主張はもはや容認されず、メディアや政治の世界にも変化が訪れている。

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