Wednesday, June 21, 2023

フェミサイド――見えない被害者

欧州ジェンダー平等研究所EIGEが『フェミサイド――見えない被害者に光を当てる』というパンフを出している。簡潔なパンフで、わかりやすい。

EIGE, Femicide: shedding light on the “invisible” victims.2022.

 

フェミサイドの予防、フェミサイドとの闘いに関連して、第1に賠償、第2に補償、第3にリハビリテーション、第4に弁済、第5に再発防止を掲げている。

続いて「フェミサイド:ジェンダーに基づく暴力化、ジェンダー中立殺害か」として、欧州の地図とともに、法的対処の類型を示している。ドイツ、フランス、ポルトガル、ルーマニアはジェンダー中立殺害の法律を持つが、スペインはフェミサイドをジェンダーに基づく暴力と定めるという。スペインはフェミサイドに対処する統合アプローチを採用している。捜査官も検察官もフェミサイドについて専門知識を持つように訓練を受けている。

また、フェミサイドは独立の犯罪とするべきだが、独立の犯罪としている国はまだない。フェミサイドをジェンダーに基づく暴力犯罪として、より見えるようにするべきである。そうすれば、法規定の適用を簡明にできる。フェミサイド防止の特別措置を設定できる。DV防止につながる。被害者が警察に届け出やすくなる。

被害者の権利を明確化することにより、第1に捜査官が被害者に敬意をもって接し、被害者が見えるようになる。被害者の権利に関する情報はまだ不十分である。救済にはギャップがある。法廷における再被害者化を防ぐ。メディアの報道にも影響を及ぼす。

以上を受けて、勧告をまとめている。

EUレベル

1に暴力から女性を保護する法基準を発展させる。

2に女性に対する暴力のすべての形態と闘うために加盟国を支援する。

3にフェミサイドの結果残された子どもへのEU共通の対応を定める。

EU加盟国レベル

1にフェミサイドに対処する行動を策定する。

2に女性が暴力被害を届け出やすくする。

3にフェミサイドへの法的対応を強化する。フェミサイドを独立犯罪とする。捜査マニュアルを策定する。フェミサイドの刑事手続きに関する専門部局を設置する。

4にフェミサイドを監視する国内機関を設立する。

5に司法へのアクセスを容易にする。

6に賠償と補償のメカニズムを設定する。

EUレベルではフェミサイド・ウオッチが推奨されている。国連人権理事会でもフェミサイド・ウオッチが稼働している。サウス・フェミニズムではフェミサイドは最大の関心事項だ。日本ではそうした動きがみられないようだ。日本フェミニズムは国際人権分野のフェミニズムとあまり縁がないようだが、なぜだろう。