Thursday, September 25, 2025

いつも「日本人ファースト」だった ―植民地主義と排外主義の現在―

いつも「日本人ファースト」だった

―植民地主義と排外主義の現在―

 

1018日(土)開場13時、開会1315分~1545

札幌市教育文化会館302研修室

札幌市中央区北1条西13丁目

※地下鉄東西線「西11丁目」駅より徒歩5

参加費800円(25歳以下は無料)

 

2025年夏、「日本人ファースト」が声高に叫ばれました。いつも見てきた光景です。大日本帝国憲法の下、周辺各国を侵略した日本は「大東亜の盟主」と称しました。日本国憲法は象徴天皇制を冒頭に掲げ、「国民の権利」を唱えて、外国人の権利を著しく制限しました。21世紀に入っても差別とヘイトと排外主義がはびこっています。実際は「アメリカ・ファースト、日本人セカンド、その他の外国人ラスト」が実態で、アメリカに追随して言いなりになる「日本主義」です。差別と排外主義を克服するための市民の課題を共に考えましょう。

 

◆市民会議メンバーからの報告(30分)

 「アイヌ史実を学ぶパネル展から」 鈴木 澄江

 「日常のなかから出会わさせられること 曺金 時江

 「朝鮮学校差別」 黒田 敏彦

◆ゲスト講演(60分) 前田朗

◆質疑・意見交流(30分)

 

札幌市に人種差別撤廃条例をつくる市民会議

問合せ先 TEL.090-6446-3974(チョキムシガン) 

syu@sapporoyu.org(さっぽろ自由学校「遊」:小泉)

Thursday, September 18, 2025

深沢潮を読む(3)非日常へのささやかな挑戦

深沢潮を読む(3)非日常へのささやかな挑戦

深沢潮『ランチに行きましょう』(徳間書店、2014年)

 

8月末から9月中旬にかけて、東京、さいたま、横浜、川崎、茅ケ崎で関東大虐殺の追悼式に参加した。千葉や本庄や寄居でも開かれたがバッティングしていて参加できなかった。102年目の現在、「日本人ファースト」というねじまがった排外主義がこの国を覆っている。もともと日本主義、日本人優先思考が定着している国だ。日本国憲法自体がレイシズムの根拠と言っても良い。天皇制と国民主義が外国人差別を正当化してきた。それでも飽き足りなくて、「日本人ファースト」と叫ぶ。それほど自由と平等が弱体化し、マジョリティの自己中心主義が蔓延している。

深沢の作品は、日常の中の小さな物語の集積を通じて、この社会の縮図を描き出す。

「幼稚園ママ」「シングルママ」「スピリチュアルママ」「ママブロガー」「ビューティフルママ」――成城学園に家庭を持ち、幼稚園の子どもの送迎の場で出会った女性たちが、育児、子どもの進学、幼稚園でのいじめ、家庭、夫の浮気の疑い、素敵なレストランでの食事、インチキ・スピリチュアルでの性被害など、多様な場面で遭遇し、すれ違い、ぶつかりあい、それでも仲良くランチをともにする。

信頼、安心、不信、疑惑、嫉妬、悩み事相談、助言、ひそひそ話、裏切りを、お互いに共有しながら、それぞれの「自分」を生きようとする。

都会の家庭の日常が次々と積み上げられ、堀り崩され、交錯する。若きママたちの平凡で、悩み多き人生の一断面である。

ところが、深沢はここで一瞬飛躍を試みる。最終章「チームママ友」で、5人のママたちが一丸となってTV番組に挑戦する。5人組が競い合うクイズ番組『チームで挑戦』に出場した5人は、家庭環境の違いも子どもたちのいじめも超えて、自分のために、だが一致団結してクイズに挑戦する。日常ではなく、TV番組への挑戦という非日常に乗り出すことで、深沢作品が小さな変化を見せる。クイズ挑戦は、TV局の裏工作によって、挫折するが、それでも5人は結束して歩みながら、日常に帰っていく。

ここから深沢作品の次の展開が始まるのかどうかわからないが、いい意味で読者を裏切る試みだろう。

Wednesday, September 10, 2025

コリアン・マイノリティ研究会 1998年のヘイト・クライム ―千葉朝鮮会館強盗殺人事件

コリアン・マイノリティ研究会

第251回月例研究会

 

1998年のヘイト・クライム

千葉朝鮮会館強盗殺人事件について

 

前田 朗(朝鮮大学校法律学科講師・東京造形大学名誉教授)

 

日 時:2025年10月25日(土)15:00~17:00 終了後、懇親会

場 所:猪飼野セッパラム文庫

 (大阪市生野区新今里2--16 もと辻本写真館1階 新今里公園北側) 

近鉄「今里駅」から5分・地下鉄「今里駅」から10分 大阪コリアタウン東端から東へ徒歩15分

参加費:1000円・会員800円・学生・院生・U25無料

 

ウトロ放火事件(2021年8月30日)が起きて、ヘイト・クライムという言葉が普及しました。ヘイト・クライムは長年ずっと起きてきました。1998年の千葉朝鮮会館強盗殺人事件、2018年の朝鮮総連本部銃撃事件が典型です。これらの事件を日本社会は忘れようとしますが、消すことのできないヘイト・クライムです。

 

「〈羅勲(ラフン)副委員長殺害事件〉千葉殺人放火事件から1年/理解しがたい捜査」『朝鮮新報』19991013

 総聯千葉支部の羅勲副委員長(当時42歳)が殺害され、犯行現場の千葉朝鮮会館が放火された事件は、15日で丸1年となる。真相は今もって闇の中だが、犯人を追うべき警察の理解しがたい動きも含め、在日同胞と総聯にとっての不安材料は、解消されるどころかむしろ増大している観さえある。

 「なぜ総聯と取り引きするのか」「総聯の人間は北朝鮮で教育を受けて活動する日本の敵だ」   

 9月22日、会館に出入りする日本人業者は突然、事件の捜査を担当している県警捜査一課員から脅しとも取れる暴言を浴びせられた。

 また、捜査員が年初の2月9日に朝銀職員を、9月14日には総聯職員を尾行していた事実も発覚してい

る。

 近年、チマ・チョゴリを着た朝鮮学校の生徒をはじめ、在日同胞をねらった暴力事件、いやがらせの例には枚挙にいとまがない。とくに昨年8月末以降、狂乱的とも言える「テポドン」騒動の中で事態は深刻さを増した。羅副委員長殺害事件は、その代表的なものだと言える。

 しかし、再発防止のための捜査、対策が徹底された形跡はまるで見当たらない。逆に、取材していて聞こえて来るのは、公安当局の「総聯シフト」の情報ばかりだ。

主 催:コリアン・マイノリティ研究会 NPO 法人 猪飼野セッパラム文庫内

090-9882-1663 masipon2023@gmail.com 懇親会への参加の有無も

 

Monday, September 08, 2025

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

無防備地域宣言で憲法9条のまちを!

 

武力は平和を作れない!

武力は平和を守れない!

武力は国民を守れない!

殺すことも殺されることもない

チェンジを!

 講演:前田朗


日時:927日(土)午後1:30~3:30、受付1:00,

会場:日本キリスト教団高崎教会

(群馬県高崎市東町1347JR高崎線高崎駅東口徒歩7分)

参加費:500

 

主催:公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会

連絡先09074288055

Monday, September 01, 2025

深沢潮を読む(2)平凡で普通でつまらない人生と溢れる物語

深沢潮『伴侶の偏差値』(新潮社、2014年)

 

週刊新潮差別コラム事件は、その後、深沢潮がその著書の版権を引き上げると発表がなされた。新潮社の方は、型通りのお詫びですませようとしている。お詫びと言っても、差別したことを詫びていない。謝罪していない。差別と批判されるようになった事態、世間を探せたことをお詫びしているにすぎない。日本的と言うか、なんというか。編集長を変えることもないのだろうか。

831日、紀伊国屋書店が、「差別的な表現を助長しかねない」と謝罪表明をした。紀伊國屋書店大阪・本町店の公式X(旧ツイッター)で、同アカウントで紹介した書籍が「差別的な表現を助長しかねない可能性があった」として、謝罪文が掲載された。当該投稿を削除したことも報告された。同アカウントでは直前に、トルコ国籍のクルド人をめぐる社会問題をテーマにしたノンフィクション書籍の販売を伝える投稿が拡散されたが、その後、見られなくなっている。埼玉県鶴ヶ島市議会議員の福島めぐみ氏が「書店としてさまざまな本を置くのは100歩譲って認めるとして、せめてヘイト本を宣伝しないでほしい」とXにポストしていたという。

『伴侶の偏差値』は深沢の第2作で、最初の長編小説だ。

有名女子大学卒業の仲良し3人組、真紀、佳乃、未央が久しぶりに表参道のカフェで会う。真紀は会社員として勤務しているが、未婚の30代女性。佳乃は早めに結婚して子育て中。未央は作家志望だったり歌手志望だったり、チャレンジ精神に富むが芽が出ない。

仲良し3人組だったが、いつも少しぶつかりあい、疑りあい、嫉妬しあい、同情しあい、だが相談し合う仲。2000年代から2010年代にかけて、有名女子大学卒業で、それなりにめぐまれながらも、自己実現に悩み、恋愛やパートナーとの生活に悩み、家族との関係に悩む。言ってみれば、平凡で普通でつまらない庶民の日常が描かれるが、そこに物語が溢れている。

結婚願望を強く持ち、将来住むべくモデルルームをめぐる趣味の持ち主でもある真紀は、母親と弟に翻弄されながら、会社では同僚男性と間延びした恋愛中。なんとか結婚をと思っていたのに、東日本大震災のさなか、彼氏はお別の同僚女性と浮気し、妊娠させて、結婚する。捨てられた真紀は、表参道のカフェの好青年と付き合うが、この青年は自分を育ててくれた男性への思慕から逃れられない。真紀は昔の不倫相手と性愛にふけるが、それも重荷にしかならない。

最初から最後まで、真紀、佳乃、未央の日常、ささいな不満、呟き、家族の物語である。唯一、東日本大震災という巨大な場面転換が訪れ、話題が飛躍的に展開するかと期待しても、そうはならない。むしろ、大震災の衝撃は、平凡で普通でつまらない人生の意味を問い直す方向に機能する。大文字の政治や社会ではなく、等身大の庶民の日常を描き続けることで、深沢はいま、ここで、生きる人々の精神世界を浮き彫りにする。