Sunday, April 12, 2026

平和をつくるオンライン講座<第4回>

平和をつくるオンライン講座<第4回>

 

3月9日、防衛省九州防衛局は国内初の長射程ミサイルを同月31日に熊本市の陸上自衛隊健軍駐屯地に配備すると発表しました。そして9日未明、ミサイルの発射機などを健軍駐屯地に搬入しました。他国の基地などを攻撃する反撃能力(敵基地攻撃能力)を持ち、九州から中国大陸沿岸部に届くミサイルの運用が可能な状態になりました。

「敵基地攻撃」用ミサイルを配備したことで、熊本は軍事攻撃対象となりました。住民の安全は守られるのでしょうか。防衛省は住民に対する説明を拒否しています。

熊本の軍拡の現状報告と、なぜ「女たちの会」が軍拡に声を上げているのかを現地から報告します。

4月27日(月)19時~21時

私が軍都熊本で声をあげるわけ

講師:海北ゆきこ

平和を求め軍拡を許さない女たちの会・熊本 事務局長

戦争止めよう!沖縄・西日本ネットワーク共同代表

1968年熊本市生。高校卒業後渡米。カリフォルニア州アダルトスクール(難民語学学校)在学中、友人刺殺事件、人種差別を経験し、社会活動へ。その後、再渡米するも20019.11をきっかけに翌年帰国。現在は医療通訳の仕事の傍ら、外国人労働者支援、平和活動をしている。20232月、軍拡によって生活が脅かされ、搾取され、虐げられてきた地方の声を上げるために「平和を求め軍拡を許さない女たちの会・熊本」を結成する。

 

参加無料

希望者は、4月25日までにEメールで申し込んでください。

ZOOMURL)をお知らせします。

 

主催:「無防備地域をいま、改めて考える」実行委員会

090-4092-8581(土橋)、070-23071071(前田)

ZOOM申込み先:E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

E-mail: akio-t@e-mail.jp

Saturday, April 11, 2026

沖縄を最前線とする戦争準備に反対する声明 

2026410

沖縄を最前線とする戦争準備に反対する声明                     

 

宛先 高市早苗首相 小泉進次郎防衛大臣 在日米軍司令部 村井勝沖縄防衛局長

   玉城デニー沖縄県知事

 

賛同団体:与那国の明るい未来を願うイソバの会、石垣島の平和と自然を守る市民連絡会、基地いらないチーム石垣、ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会、ミサイル配備から命を守るうるま市民の会、 沖縄平和サポート、 沖縄平和市民連絡会、沖縄県平和委員会、ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会、沖縄・韓国民衆連帯、VFP(平和を求める退役軍人の会)琉球・沖縄支部、監視社会ならん!市民ネット沖縄、あつまれ辺野古 日中友好協会沖縄県支部、 沖縄・琉球弧の声を届ける会 琉球・パレスチナの平和を求める会

 

 

 2026年度の防衛省予算(概算)は南西諸島の軍事強化長射程ミサイルの大量生産配備ドローン・無人機の集中配備-を柱とし、高市政権の安保3文書の改悪により沖縄の軍事強化と戦争の危機が一気に高まりかねません。そのさなか沖縄の米軍ホワイトビーチを経由した米軍艦船がイランをトマホーク攻撃し、在沖海兵隊がイランに出撃しました。嘉手納空軍も派遣されました。政府は、在日米軍の出撃について、在日米軍基地からの派遣は「移動」だとして、「安保条約上も問題はない」と強弁しましたが、明らかに日米安保条約6条に違反し、在日米軍基地から戦地への出撃は事前協議の対象です。事前協議はこれまで一度も行われておらず、制度は機能していません。私たちは、米軍の沖縄基地からの自由出撃を断固、拒否します。

 41日、共同通信は、中国に届く長射程ミサイルの「敵基地攻撃 運用開始」と全国配信しました。328日沖縄タイムスは「与那国に対艦ミサイル、対空弾とセット配備」報じました。既に宮古、石垣、沖縄島に自衛隊の地対艦・地対空ミサイルが配備され、与那国配備により島々の「ミサイル要塞化」が さらに増強されます 。ミサイル基地が有事に攻撃目標となるのは軍事の常識です。沖縄県民はミサイル基地と同居できません。私たちは島々のミサイル基地の撤去、与那国配備計画の撤回を強く要求します。

 玉城デニー知事、与那国、宮古、石垣、うるま、宜野湾、嘉手納など基地所在27市町村は「長射程ミサイル配備反対」を日米政府に申し入れています。玉城知事は「ミサイル基地は攻撃目標となるリスクが高まる」と政府に伝えています。石垣市議会も3月24日、「長射程ミサイル配備反対」の3度目の意見書を議決しました。「長射程ミサイル配備反対」は県民の総意です。

 高市首相は国会で「台湾有事は日本の存立危機事態」と答弁し、小泉防衛大臣とヘグセス米戦争長官は中国を名指しに「沖縄、南西諸島の日米同盟の抑止力・対処力強化」を確認しました。沖縄を「台湾有事の最前線」とする意図が明らかです。沖縄は「人間の住んでいる島」(阿波根昌鴻)です。沖縄の戦場化、県民の犠牲を当然視する首相、防衛大臣、米長官の発言は絶対に認められません。

 防衛省は2026年度に那覇の「陸自第15旅団を師団に格上げ」し、隊員を大幅増員、戦闘車を配備し、那覇基地に弾薬庫を計画しています。「師団」は「陸自の作戦部隊。独立して一正面の作戦を遂行」と防衛白書に記され、台湾有事に対処する作戦部隊にほかなりません。沖縄市の弾薬庫建設に190億円。米軍嘉手納弾薬庫も共用しミサイル弾薬を貯蔵。宮古島の「電子戦部隊配備」に続き、石垣島にも同部隊を配備、さらに電磁波で対空攻撃する「対空電子戦部隊」を26年度に与那国、27年度に那覇駐屯地にも配備する計画です。一方で自衛隊基地の地下化、那覇基地(那覇空港)では滑走路修復、遺体処理、血液製剤の準備や負傷日米兵員の戦傷医療 救護輸送訓練など継戦能力を維持する戦争準備が行われています

 米軍も石垣島に無人ミサイル発射機、無人防衛システムを展開、与那国にも米軍ハイマース投入を計画し、嘉手納基地に無人機が常駐、F35戦闘機やオスプレイが嘉手納、普天間から先島を飛び交い、全県に拡大展開しています。自衛隊・米軍強化とともに沖縄全域で日米実戦訓練が激化し、まさに「戦争前夜」のすさまじさです。

 戦争準備の一方で宮古、石垣、与那国の実現不可能な「全島住民避難」計画が既定方針のように進んでいます。米軍、自衛隊が集中し、軍事専門家が「攻撃リスクが大きい」と指摘する沖縄島は「屋内避難」です。日米は宮古、石垣、与那国を主戦場と想定し、戦闘の邪魔になる住民を全島疎開させる意図ではないか。「攻撃リスクが大きい」沖縄島住民の安全は捨て置き、沖縄全域で戦争態勢を進める考えではないか。

 陸自宮古司令の市民恫喝を防衛大臣が容認し、市民運動の制圧がまかり通る事態は絶対に認められません。地域行事への自衛隊の参加が公然化、戦争に県民、若者を動員する隊員募集の勧誘、宣撫活動を強化する一方で、戦争準備に反対する市民による憲法が保障する言論・表現・結社・集会の自由、請願権の行使を封じることは断じて許されません。

 那覇空港、石垣港、平良港が平時から有事に軍事使用する「特定利用空港・港湾」に指定、那覇空港周辺道路が「特定利用道路」に指定されました。さらに政府は島々の空港、港湾を利用指定する構えです。米軍、自衛隊基地だけでなく空港・港湾・道路が軍事使用されてしまいます。沖縄防衛局長は「勝連分屯地のミサイル発射機は基地を出てミサイルを発射する」と認めました。自衛隊、米軍基地だけでなく沖縄の島々全体が攻撃拠点となり攻撃目標となります。有事で避難に使う空港は、「有事に兵員・物資の輸送に使う。優先すべき対処措置等の内容をあらかじめ確定することは困難」と防衛省は石垣市民に回答しました。空港港湾が攻撃目標となり、住民は避難の退路を断たれます。防衛省は沖縄・西日本ネットワークに「存立危機事態のみが認定されている場合に住民避難計画はない」と回答しました。有事下に自衛隊は戦闘に専念し、住民は島に取り残されるのか。日米「離島奪還」作戦訓練は、住民が取り残された島に米軍、自衛隊が着上陸して武力制圧し、海、空からの火力支援集中砲火も訓練しています。沖縄県民の犠牲を当然視する無謀な戦争計画と訓練に断固として反対します。

 辺野古新基地建設が進む一方、「普天間基地を継続使用」の米公文書が報道されました。宜野湾市の真中にあって「世界一危険」と言われる普天間基地を「台湾有事」には米海兵隊と自衛隊の出撃拠点とすることを意味し、絶対に容認できません。辺野古新基地は完成のめどもなく膨大な国費と土砂を海に投入し、既設部分でオスプレイ使用など台湾有事の前線基地にもなりかねません。辺野古新基地工事の海で平和学習の船が転覆し2人の人命が失われたことに哀悼を表します。しかし反対運動や平和学習への誹謗中傷を受け入れるわけにはいきません。普天間辺野古移設反対は沖縄の民意です。普天間基地の即時無条件返還と辺野古新基地建設の即時中止等「建白書実現」を求め続けます。

 私たちは沖縄の島々の戦争準備を絶対に受け入れません。別表のとおり日米政府、米軍・自衛隊に対する要請、与那国・石垣・宮古住民からの要請を一刻も早く解決するよう関係機関に求めます。

 玉城デニー知事には「長射程ミサイルの沖縄配備に反対」、「空港・港湾・道路」の軍事・特定利用指定にも反対する姿勢を堅持するよう求めます。

別表

【日米政府、米軍・自衛隊への要請】

①沖縄の島々への米軍・自衛隊のミサイル配備・弾薬庫建設、嘉手納弾薬庫の自衛隊共用などあらゆる戦争準備の軍事強化を中止すること。

②台湾有事に対処する「日米共同作戦計画」を廃棄し、同計画に基づく日米実戦訓練を中止すること。「日米共同作戦計画」の内容を公表すること。

③陸自那覇の「旅団から師団」格上げを中止し、新たな自衛隊訓練施設の建設を断念すること。

④空港・港湾・道路を軍事使用する「特定利用指定」に反対する。那覇空港、石垣港、平良港の「特定利用指定」を解除すること。

⑤与那国、石垣、宮古の実行不可能な「全島住民避難計画」を中止すること。米軍、自衛隊が集中する沖縄島を「屋内避難」とする理由を説明すること。

⑥県知事、基地所在27市町村の軍転協が反対する「自衛隊長射程ミサイル沖縄配備」を断念すること。米軍ハイマース、無人ミサイル発射機、無人機を撤去すること。

⑦米軍の石垣展開を中止すること。与那国、宮古への米軍展開に反対すること。

⑧民意に反する「辺野古新基地建設」を中止すること。普天間基地は即時撤去し、同基地の継続使用、代替する那覇空港、下地島空港の使用に反対すること。

⑨イラン戦争、台湾有事ほか海外紛争への在沖米軍の出動に反対すること。日本政府は日米の事前協議制に基づき、あらかじめ「在日、在沖米軍の出撃拒否」を米国政府に通告すること。

⑩宮古前陸自隊長の恫喝発言と市民運動制圧に抗議し、厳正な処分を求めること。

 

【玉城デニー知事、沖縄県への要請】

①玉城デニー知事は「長射程ミサイルの沖縄配備に反対」、会長を務める沖縄県軍用地転用促進協議会も反対を堅持し、「空港・港湾・道路」の特定利用指定に反対するよう要求します。

②知事、沖縄県は在沖米軍の他国における戦争への出撃に反対し、日米の事前協議制に基づき在日、在沖米軍の出撃に反対するよう政府に要求すること。米軍、自衛隊が台湾有事に介入しないよう日米政府に申し入れるよう要求します。

 

【与那国からの要請】

暮らし自体がいよいよ立ち行かなくなり、島の存亡がかかっている。百年を超える歴史ある自治を守り、暮らし続けられる島を次世代に引き継ぎたい。そのために、以下を要求します。

米軍または米軍と共同する自衛隊の島利用は止めていただきたい。

島の自治や暮らしの土台であるインフラを機能不全にしかねない、自衛隊のさらなる人員増や機能強化は止めていただきたい。

去る3/2の住民説明会で明らかにされた比川集落の人口に比してあまりに大規模な自衛隊官舎建設計画は、集落の自治を壊しかねません。一旦白紙に戻し、当該の自治公民館や町役場などと協議することを求めます。

 

【石垣からの要請】

➀石垣島に長射程反撃能力ミサイルを配備しないこと、米軍を常駐させないこと

➁今年度配備予定の電子戦部隊についての住民説明会の開催。

③➁の住民説明会開催をせずに、また住民の理解が得られないまま電子戦部隊用宿舎建設についての土地取得・調査は行わないこと

④石垣港の緊急時以外の米・自衛隊艦船の利用の中止

⑤石垣空港の特定利用空港化中止、緊急時以外の米軍機の使用中止、及び日米共同、自衛隊の訓練に使用しないこと

⑥石垣港・石垣空港を利用するミサイル・弾薬類の搬入における住民への周知と安全の確保。安全の保障のない搬入、搬送は行わないこと

⑦駐屯地内で現在進行中の覆道射場、グランド等の工事の進捗状況や今年度の建設工事の内容を明らかにすること

⑧駐屯地グランドから県道87号に通じるゲートの設置は中止すること

⑨駐屯地内の汚水・排水について宮古駐屯地同様に「蒸発散式」で処理し、駐屯地外への排水は中止すること

 

【宮古からの要請】

①比嘉前隊長と防衛省に対して「誤った発言の撤回と恫喝行為に対して真摯に謝罪する」ことを求める

②電子戦部隊と車両がすでに配備され、宮古島駐屯地を住民との約束を反古にして拡張し施設建物を建設する予定が明らかになっているが、住民への説明が一切ない不誠実な対応を改め、住民説明会を行うこと

③ 米軍が宮古に上陸して自衛隊との共同訓練を行わないこと。自衛隊の基地外での軍事訓練を行わないこと

④宮古空港、下地島空港の特定利用空港指定に反対すること、米軍、自衛隊共に一切の軍事利用を行わないこと、下地島空港について屋良覚書を遵守すること

 

                                        以 上

Friday, April 03, 2026

近代フェミニズム史を学び直す

近代フェミニズム史を学び直す

 

江原由美子『フェミニズム』(岩波新書)

https://www.iwanami.co.jp/book/b10155824.html

序 章 フェミニズムをどう見るか

第1章    近代社会と女性――近代フェミニズムの問題域

第2章 市民革命と女性

第3章 女性参政権――イギリスとアメリカ

第4章 社会主義とフェミニズム

第5章 二つの世界大戦と戦間期における女性

第6章 日本のジェンダー秩序とフェミニズム

第7章 第二波フェミニズム――第二次世界大戦後の社会

第8章 現代社会とフェミニズム

第9章 フェミニズムは近代社会で何をしてきたのか

ありそうで、なかった。近代フェミニズム史の好適な入門書だ。

西欧近代の啓蒙思想と市民革命がもたらした自由と平等のプロジェクトから排除され差別された女性たちの闘いの歴史がよくわかる。

270頁ほどのコンパクトな新書で、欧米の第一波フェミニズムの形成と展開、これに学んだ日本フェミニズム、そして第二次大戦後の第二波フェミニズムの展開過程を追いかける。

江原は時代的限界や個人的限界と断りをしつつ、江原の研究と実践に基づいてフェミニズム史の潮流を描き切る。フェミニズムは何と、どのように闘ったのか。その基本線を明瞭に打ち出し、決してぶれない。

細かな論点に立ち入って記述し始めると、さらに数百ページを要するだろう。フェミニズムと言っても、多様な論者がいて、互いに矛盾・対立しながら発展してきた。矛盾・対立に踏み込めば、無用な分断を繰り返すことにしかならない。

西欧に始まり、アメリカに引き継がれ、日本もその波に乗ってきた近代フェミニズムの基本線をていねいに論じるとこうなる、という見本だろう。

キーワードはジェンダー視点、公私二元論、性役割分担、女性参政権、奴隷制度廃止、『女らしさの神話』、リベラル・フェミニズム、ラディカル・フェミニズム、「個人的なことは政治的」、リプロダクティブ・ヘルスだ。つまり、30年来ずっと繰り返されてきた周知のキーワードと理論枠組みだ。

でも、これだけ明快で、全体が見渡せるフェミニズム史は、これまでなかったのではないか。オビに「第一人者による待望の入門書」とある通りだ。

思い起こしてみると、江原の初期の作品群『生活世界の社会学』『女性解放という思想』『フェミニズムと権力作用』『ラディカル・フェミニズム再興』『ジェンダー秩序』は、フェミニストであろうとなかろうと、人文社会系の研究者にとって必読書であった。

1980年代後半から90年代にかけて上野千鶴子や江原がさっそうと登場した時、フェミニズムは単なる女性解放の「主張」ではなく、「学問」と「実践」を繋ぐ理論であり、思想であった。誰もが学ばなければならない思想の書物が次々と送り出された。

最近、上野と江原が編集した『挑戦するフェミニズム――ネオリベラリズムとグローバリゼーションを超えて』(有斐閣、2024年)は、日本フェミニズムのまとめであり、到達点だろう。

私はフェミニストではないし、フェミニズム研究者でもない。何しろ、日本刑法の研究者だった。日本フェミニズムについては無知だ。1980年代後半から90年代にかけて上野や江原らの著作に学んだが、それは思想の方法に興味があったからだ。院生時代の研究テーマは「権力犯罪と人権」だったので、人権を抑圧する日本司法の在り方を批判的に検討する際に、フェミニズムの問題提起にも学ぶ必要があった。当時はそれだけだった。

1990年代中葉から国連人権機関に通うようになり、そこで全く別のフェミニズムに出会った。いまではグローバルサウス・フェミニズムや脱植民地フェミニズムに代表される。2000年代にはアフガニスタン・フェミニズムにも学び始めた。脱植民地フェミニズムについて論文を書き、アフガニスタン・フェミニズムについても紹介を続けているが、その地点から日本フェミニズムについて発言することは控えてきた。

江原の『フェミニズム』は非常に勉強になる好著だが、欧米中心フェミニズムと日本フェミニズムに限定されている。日本女性による日本フェミニズムの理解・把握にとって最適の著作だが、日本帝国主義による侵略と植民地支配を経験したアジアのフェミニズムの視点はていねいに遠ざけられている。そしてアイヌ民族、琉球民族、在日朝鮮人、及び被差別部落の女性たちの経験と思想が見事に排除されている。これらを含みこめば、もっと肥沃なフェミニズム論になるだろう、と思うのは私だけだろうか。

Tuesday, March 31, 2026

『コリアン・ジェノサイド』出版記念シンポジウム

『コリアン・ジェノサイド』出版記念シンポジウム

関東大虐殺は国際刑法のジェノサイド犯罪に当たります。アルメニア・ジェノサイドやガザ・ジェノサイドと同じレベルの、世界史における出来事です。

実行犯は軍隊、警察、そして自警団の民衆です。国家責任と民衆責任を解明する必要があります。

それでは主犯は誰でしょうか。最高責任者は誰でしょうか

前田朗『コリアン・ジェノサイ』出版を契機に、ともに考えましょう。

 

前田朗『コリアン・ジェノサイド――関東大虐殺の法的考察』(三一書房)

https://31shobo.com/2026/02/26000/

 

530(土) 午後6時開場、開会630分~830

東京ボランティア市民活動センター会議室

JR飯田橋駅隣ビル10階)

参加費:500

<パネリスト>

uhiさん(アクティビスト)

山本すみ子さん(関東大震災時朝鮮人虐殺の事実を知り追悼する神奈川実行委員会代表、『神奈川県関東大震災朝鮮人虐殺関係資料』編者)

安田浩一さん(ジャーナリスト、『地震と虐殺 1923-2024』著者)

司会:前田朗

共催:平和力フォーラム

連絡先:070-2307-1071

E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

小説は事実を超える?

小説は事実を超える?

柴田哲孝『暗殺』(幻冬舎文庫)

 

 安倍晋三元首相狙撃事件をモチーフにした政治サスペンス小説だ。狙撃事件が20227月で、本書出版は20246月でベストセラーになった。20263月に文庫化されて初めて読んだ。

 狙撃事件の時、私は上野動物園でパンダを見ていた。スマホのニュース速報を見て、数人のジャーナリストに電話で事件について話したのを覚えている。事件直後で、情報はほとんどなかったが、単なる狙撃事件ではなく、背後に暗いうごめきがあり、真相は明らかにならないだろうと言うことで、みな一致した。その通りになった。

 狙撃事件に関する警察発表は到底信用できない。あちこち矛盾することは誰もが指摘してきた。にもかかわらず、政治的にも刑事裁判でも、警察のシナリオ通りに進んでいる。

 批判的に検証しようとする動きもあったが、おおむね「陰謀論」の名の下に退けられた。本書も「陰謀論」の一種とみなされるだろうが、そのことも踏まえて、あえて状況設定がなされている。赤報隊事件との繋げ方はなかなかの趣向だ。

 柴田哲孝の本は下山事件について2冊読んだ。1冊はノンフィクション、もう1冊は小説だ。どちらもすぐれた作品だった。他の作品を読んだことがないが、ミステリー、サスペンス、政治小説、社会派小説など多彩な作品を送り出しているようだ。

Sunday, March 29, 2026

 琉球民族遺骨返還を求める

研究者は「日本人優秀論」「日本人起源論」のために琉球民族の墓を暴き、遺骨を盗みました。

京都大学に続いて、東京大学に遺骨の返還を求める運動が続いています。

他人・他民族の墓を暴き遺骨を盗む学問とは何でしょうか。

学問研究の名における植民地主義と差別を改めて問う必要があります。

5月23日(土)18時開場、1830分開会~2030

東京ボランティア市民活動センター会議室

JR飯田橋駅隣ビル10階)

参加費:500

 

東京大学遺骨返還請求問題の現在

松島泰勝(龍谷大学教授)

遺骨から見た日本植民地主義

前田朗(東京造形大学名誉教授)

共催:平和力フォーラム

琉球人遺骨返還を求める会/関東

連絡先:070-2307-1071E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Friday, March 27, 2026

インタヴュー講座 脱植民地主義のために(第3回)

インタヴュー講座

脱植民地主義のために(第3回)

敗戦80年の今日、日本の政治社会は過去の侵略戦争と植民地支配を忘却し、日本人の戦争被害だけを語ります。歴史の風化と浸蝕が進んでいます。しかし、植民地主義は過去の歴史ではなく現在の「日本問題」です。過去を問い直しながら現在と将来の課題に挑む必要があります。

今回は、日本軍性奴隷制(慰安婦)問題の歴史と現在を象徴する「平和の少女像」を通じて、日本の植民地主義を再考します。

◉日時:5月16日(土) 午後6時半~8時半(6時開場)

◉会場:東京ボランティア市民活動センター(飯田橋RAMLA10階)

参加費:500

「平和の少女」が見た世界、

世界から見た日本

〜ドイツ報告を中心に

岡本有佳さん

*講師プロフィル: 編集者。「表現の不自由展・東京」共同代表、Fight for Justice日本軍「慰安婦」問題サイト理事。編著に『《自粛社会》をのりこえる――「慰安婦」写真展中止事件と「表現の自由」』(共著、岩波ブックレット)『歴史は強者ファーストか?──日本社会にはびこる歴史否定を世界的に考える』(共著、岩波ブックレット)『あいちトリエンナーレ「展示中止」事件――表現の不自由と日本』(岩波書店)、『表現の不自由展からの挑戦――消されたアートと対話する12のヒント』(梨の木舎)『〈平和の少女像〉はなぜ座り続けるのか』(世織書房)『弾劾可決の日を歩く私たちはいつもここにいた』(タバブックス)など。

*主催:平和力フォーラム

連絡先:07023071071(前田)

E-mail:akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

奴隷条約100周年(03)

奴隷条約100周年(03

 

326日、国連総会が奴隷制に関する決議を採択しました。

奴隷貿易への賠償求める決議、国連総会が採択 日本は棄権、米国反対

https://www.asahi.com/articles/ASV3V0FYTV3VUHBI033M.html?msockid=39656b98262d63d91b7179fe27c76213

1990年代、国連国際法委員会で、「植民地支配犯罪」を国際犯罪にしようとしましたが、旧宗主国等の反対で挫折しました。

2001年のダーバン会議の時、第3世界諸国は「植民地支配は人道に対する罪だった」と頑張りましたが、最終文書のダーバン宣言では「植民地時代の奴隷制は人道に対する罪だった」にとどまりました。

https://www.hurights.or.jp/wcar/J/govdecpoa.htm

今回は、同じことを国連総会で決議した上で、賠償と謝罪の具体的取り組みを求めた点が重要な成果と言えます。

この間、ダーバン宣言のフォローアップ作業が、先進諸国のサボタージュのため、進みませんでした。

国連ウエブサイトから簡潔に紹介します。

「国連決議は、奴隷制という『歴史的悪行』に賠償を促した」

ガーナが提出した決議に賛成123、反対3(アルゼンチン、イスラエル、アメリカ)、棄権52(日本も棄権)

ガーナ大統領ジョン・ドラマニ・マハマは、アフリカ54カ国を代表して、「今日、真実を確認し、癒しと賠償の正義への途を追求して厳粛に連帯しています」と述べた。

「盗まれ、縛られ、船積みされた」

400年もの間、アフリカから数百万の人々が盗まれ、縛られ、新世界へと船積みされ、綿、砂糖、珈琲園で働かされた。人間性を否定され、名前を奪われ、搾取され、黒人に対する人種主義と差別が今日まで続いている。

決議は「奴隷にされたアフリカ人の取引は人道に対する最も重大な犯罪である。規模、期間、組織的性格、残酷さは世界史に特筆される。

「奴隷制の被害者のスピリットは、いまこの瞬間、この会場に、ある。彼らが耳を傾けているのはたった一つの言葉、正義である」と、バルバドスの栄誉ある詩人エスター・フィリップスは述べた。

アメリカの反対理由は、国連の任務は国際の平和と安全保障であって、個別の課題ではない。当時の国際法に下では違法でなかった歴史的悪行についての賠償の権利は認められない、というものである。

国連総会議長のアナレナ・ベルボックは、国連憲章と世界人権宣言に注意を喚起した。

国連事務総長アントニオ・グテーレスは、奴隷制の継続する遺産として不平等と人種主義に言及した。

「賠償の正義なしに平和はない」

バルバドスの詩人エスター・フィリップスは、自分の詩を朗読し、「奴隷制の被害者のスピリットは、いまこの瞬間、この会場に、ある。彼らが耳を傾けているのはたった一つの言葉、正義である」と述べた。

Wednesday, March 25, 2026

反差別連続講座第7回 フェミサイドと闘うグローバルサウス・フェミニズム

反差別連続講座第7

フェミサイドと闘うグローバルサウス・フェミニズム

前田 朗

5月9日(土)13201630 開場1300

浦和コミュニティセンター第13集会室

JR浦和駅東 浦和パルコ上10F

参加費800円 学生・障がい者500

今回のテーマは「フェミサイド」。

日本ではほとんど聞きなれない言葉ですが、日本軍「慰安婦」問題や沖縄米軍兵士・性暴力事件をフェミサイド(植民地主義、家父長制、女性に対する暴力)の視点で考えます。

欧米にはフェミサイド刑法がありますが、日本ではあまり議論されていません。

<参考文献>

①前田朗「フェミサイド研究のために――ラテンアメリカのフェミサイド刑法の紹介」『女性・戦争・人権』23号(2024年)

②前田朗「フェミサイド処罰の世界の動き(一)(二)」『マスコミ市民』683号・684号(2026年)

③前田朗「植民地主義とフェミサイド」『部落解放』880号(2026年)

主催: 外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク埼玉

協賛: ヘイトスピーチ禁止条例を求める埼玉の会

子どもの人権埼玉ネット

朝鮮・韓国の女性と連帯する埼玉の会

問合せ:080-1245-3553(斎藤)

シオニズムの広さと深さと不可解さ

鶴見太郎『シオニズム――イスラエルと現代世界』(岩波新書)

https://www.iwanami.co.jp/book/b10151794.html

 

 それなりに知っているつもりだったが、どうやら随分と違うようなので、本書を手にした。その通り、知らないことがたくさん書かれている。これまでのシオニズム観は英語文献に依拠した、西欧のシオニズム観だ。しかし、ロシア東欧圏のシオニズムを無視しているため、極めて一面的だ。鶴見はロシア東欧圏のシオニズムを詳しく紹介して、全体像を提示しようとする。シオニズムの歴史的地理的広がり、思想の深まりと変遷が詳しく描かれる。

「イスラエルはなぜ国際的に孤立してまで、パレスチナ人を徹底して攻撃するのか。パレスチナにユダヤ人の民族的拠点をつくるという思想・運動である「シオニズム」。ホロコースト以前に東欧で生まれ、建国後もイスラエルを駆動し続ける思想の起源と変遷を、国際社会とのかかわりの中で描く。現代世界を読み解くために必携の書。」という宣伝の通り、非常に詳細な、しかもバランスの取れた記述で、シオニズムについて知り、理解することができる。

 ここまで知らなくてはならないのか、と思いながら読み進めることになる。しかも、本書を読みえ終えても、実は「イスラエルはなぜ国際的に孤立してまで、パレスチナ人を徹底して攻撃するのか」は、わかったようで、わからない。考えようによっては、ますますわからなくなる。それは良くあることだ。どの思想運動についてもいえることだ。優れた著作は、実に多くの事を教えてくれるし、考えさせてくれる。そのため、考えたことのなかった疑問がまた生まれて来る。永遠の謎かもしれない。

 ネタニヤフという一人の政治家の生理と病理を理解するために本書は最良のテキストだが、読み終えた途端、ネタニヤフの理解が困難になる。

 しかも、イスラエルは、パレスチナ人を徹底して攻撃するだけではない。今やイラン人を攻撃している。イスラエルは人類そのものへの憎悪に突き動かされているのではないかと思いたくなるような現実が目の前にある。鶴見には次々と著書を送り出してもらわないといけない。

Thursday, March 12, 2026

忘れられたヘイト・クライム 1998年・千葉朝鮮会館強盗殺人事件

茅ヶ崎追悼会2026年度連続市民学習会・第二回

忘れられたヘイト・クライム

1998年・千葉朝鮮会館強盗殺人事件

講師 前田 朗

京都朝鮮学校襲撃事件が起きた時「日本でヘイト・スピーチが起きるようになった」と語られました。ウトロ放火事件が起きると「ついにヘイト・クライムが起きた」と語られました。とんでもない間違いです。1923年の関東大虐殺をはじめ膨大なヘイト事件の歴史があります。1998年の千葉朝鮮会館事件とは何だったのか。なぜ忘れられたのか。ともに考えましょう。

4月11日(土)第1部10時~11時40分(9時30分開場)

第2部14時~15時30分(希望者で)

茅ヶ崎市立図書館第1会議室(第1部)、第2会議室(第2部・質疑)

アクセス 茅ヶ崎駅南口から徒歩5分、地図参照 

参加費  資料代 500円(学生・障がい者無料)

主 催  関東大震災茅ヶ崎での朝鮮人虐殺犠牲者を追悼する市民の会

共 催  ビースカフェ ちがさき

協 力  ソーラーハウスにしかわ

お開合せ/電話お申込先 090-8815-0150(あまの)

0467-53-4448(おごせ)

Tuesday, March 10, 2026

奴隷条約100周年(02)

奴隷条約100周年(02

 

1 国連人権特別報告者たちの声明

2 古橋綾論文

 

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1 国連人権特別報告者たちの声明

 

36日、国連人権機関の特別報告者たちが、日本軍性奴隷制に関する声明を発表した。

https://www.ohchr.org/en/press-releases/2026/03/justice-truth-and-reparations-long-overdue-survivors-so-called-comfort-women

 

①女性と少女に対する差別に関する作業グループ、②女性に対する暴力特別報告者、③強制又は非任意の失踪に関する作業グループ、④人権擁護者の状況に関する特別報告者、⑤女性と子どもの人身売買に関する特別報告者、⑥真実・正義・補償・再発防止保障の促進に関する特別報告者、⑦子どもの売買・性的搾取・性的虐待に関する特別報告者、⑧奴隷制の現代的諸形態に関する特別報告者による連名の声明である。おおよその内容を紹介すると、

おおよその内容を紹介すると、

80年も経たのに、被害者及びその家族は、真実、正義、補償、記憶への権利の否認に直面している。

2015年の日韓合意をはじめとする従来の努力は、生存者中心の正義をもたらしていない。

生存者と家族がその国内裁判所や日本の裁判所に訴訟を起こしてきた。この努力に支援が求められる。

戦争犯罪と人道に対する罪については主権免責は採用できない。

日本政府が生存者の権利を認めて実現するよう呼びかける。

高官による残虐行為の否定、被害者団体や研究者に対するハラスメントがあり、他方、被害者/生存者は数十年、認定、謝罪、補償を待っている。>

1990年代の国連人権委員会における審議に始まって、多数の報告書、勧告、声明が出されてきた。女性差別撤廃委員会、国際自由権委員会、強制失踪委員会などからも勧告が相次いだ。

日本政府、メディア、社会は無責任を決め込んでいる。

 

2 古橋綾論文

 

古橋綾「35年目の日本軍『慰安婦』問題を考える――その『解決』を積み重ねるために」『PRIME』49号(明治学院大学国際平和研究所、2026年)

1.      はじめに

2.      日本政府の対応と課題

1)「解決」のための要求と日本政府の対応

2)国際社会からの視線

3)日本政府が取り組むべき課題

3.最近のアカデミアでの議論への批判的検討

1)「被害者」についての語り

2)東アジアの未来を構想する?

4.おわりに

古橋は、1990年代からの日本軍「慰安婦」問題に関する議論状況を再確認し、日本政府が被害者救済を怠ってきたこと、政策の混迷を点検することを怠ってきたことをていねいに論じる。「アジア女性基金」や2015年の「日韓合意」の失敗を踏まえて、真相究明の努力をする必要性を指摘する。そのうえで、古橋は、最近の研究状況の特徴を批判的に検討する。

1つは、朴裕河の『帝国の慰安婦』を擁護する論文集『対話のために』である。古橋は「解決運動に対する攻撃を加える際のうっすらと漂う嘲笑の雰囲気に、帝国主義的でミソジニー的な視線を感じざるを得ない」と言う。指摘の通りである。同書出版当時、私は次のように書いた。

https://maeda-akira.blogspot.com/2017/08/blog-post_20.html

その一部は、前田朗『ヘイト・スピーチ法研究原論』第3章「『慰安婦』へのヘイト・スピーチ」第3節「歴史修正主義とヘイト・スピーチ」(143150)に収録した。

2つは、『和解学叢書』である。全6巻に及ぶ総合的な共同研究だが、浅野豊美、外村大、東郷和彦など中心メンバーは『対話のために』と同じである。朴裕河擁護の「和解学」である。「紛争解決学」を否定する「和解学」は「人権」や「植民地責任」も否定する。日本が考える価値に沿って東アジアの未来を構築しようと言う。その問題性を、古橋はいくつかの論点に絞って検討する。特に「解決運動に対する無知と軽視に基づく批判が目に付く」と言う。

「国際的な努力で打ち立てられてきた人権概念を捨て、日本になじむ認識枠組みで東アジア共同の未来を構想するというその方法に帝国の位置から抜け出せない日本人のナショナリズムを感じるためである」。

私は「解決学叢書」を読んでいない。出版当時、読んでも仕方がない、得るところがないだろうと思ったためだ。古橋論文を読んで、やっぱり、と呟いた。

国連人権機関の特別報告者たちの声明と古橋論文を読むことで、日本軍性奴隷制問題へのさらなる取り組みの重要性を痛感させられた。