Wednesday, February 05, 2014

ヘイト・クライム禁止法(49)モンテネグロ

2月5日、雨のジュネーヴ、平和広場では「ヴェトナムに人権を」デモが約100人。                                                             人種差別撤廃委員会84会期は3日目、モンテネグロ政府報告書の審査だった。政府は10名、NGOの傍聴も10名前後。政府報告に続いて、いつもガムをかんでるケマル委員(パキスタン)が担当報告者で、未批准の人権条約の批准問題、家庭暴力、ロマ、IDP、人身売買、選挙におけるアファーマティヴ・アクションなどを取り上げた。その後、10人ほどの委員が発言。ディアコヌ委員が、ヘイト・スピーチ、差別のプロパガンダ、ジェノサイドの関連を指摘し、ヘイト・スピーチについて、刑事規制、民事規制、過激な差別団体の解散を効果的に行うよう求める発言をした。                                                                  モンテネグロ政府が人種差別撤廃委員会84会期に提出した報告書(CERD/C/MNE/2-3. 12 July 2013)によると、憲法第6条は人権の不可侵性、第7条は憎悪煽動の禁止、第8条はあらゆる理由に基づく差別の禁止を定めている。政府第1回報告書審査の結果としての人種差別撤廃委員会の勧告に従って、新たに「差別禁止法」を制定した。いつ制定したか書かれていないが、ケマル委員の質問の中で2011年と述べていた。新法は、差別の定義と差別煽動の定義を示している(同法3条)。                                                                                            「差別とは、性別、人種、皮膚の色、国民的関係、社会的又は民族的出身、マイノリティ国民性、又はマイノリティ国民コミュニティ、言語、信条、政治的又はその他の意見、性的志向、健康状態、障害、年齢、身体状態、ある集団の一員であること、ある集団の一員であると考えられたこと、その他の個人的特徴に基づいて、個人又は集団を他の人々に比べて、正当化できない法的又は事実上の、直接または間接の区別又は不平等な処遇、又は処遇をしないこと、個人を他の人々に比べて、排除、制限、優先することである。」                                                                                    「本条第一項で言及された理由で、ある個人や集団を差別する煽動は、差別であるとみなすべきである。」                                                                                      新法は、さらに、差別からの個人の保護、特別措置としてのアファーマティヴ・アクションなどを定めている。                                                                                      人種差別撤廃条約第4条については、刑法第15章「個人及び市民の自由と権利に対する刑事犯罪」で扱われている。刑法第158条は、マイノリティの言語使用のような事例で、当局による個人の権利行使の否定や制限を犯罪としている。刑法159条は平等侵害を犯罪とし、刑法163条は移動や居住の自由の侵害を犯罪としている。                                                                                         国民的又は民族的出自又は文化の表現の権利の侵害は刑法160条で処罰される。1年以下の刑事施設収容又は罰金である。公務員が行った場合は3年以下である。名誉に対する犯罪は刑法第17章であり、モンテネグロに居住する国民、国民集団、民族集団に対する公然たる侮辱は刑法第199条で規制される。                                                                                   刑法第370条は、国民、人種又は宗教的憎悪を惹起する犯罪、すなわち、人種、皮膚の色、宗教、出身、国民的又は民族的出自に基づいて、ある集団又は集団構成員に対する暴力又は憎悪を公然と勧誘した者は、6月以上5年以下の刑事施設収容とされる。同様の理由に基づいて、ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪が行われた場合も同じ犯罪であり、モンテネグロ法廷又は国際法廷の管轄となる。民間人や集団に対するジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪、ジェノサイド実行の教唆、文化的歴史的記念碑の破壊、宗教施設の破壊、科学・美術・教育目的の施設の破壊等は、刑法第35章に規定される犯罪である。                                                                                                      他方、公共平穏秩序法第17条によると、発話、文章、記号その他によって、公共の場において、市民の人種、民族、宗教の感情や公共道徳を侵害した者は、最低賃金の3倍以上20倍以下の罰金、又は60日以下の刑事施設収容とする。 モンテネグロ政府報告書(CERD/C/MNE/2-3. 12 July 2013)によると、2009年1月から2011年5月の間のヘイト・スピーチ処罰実例として、刑法第370条の憎悪惹起犯罪について、ポドゴリツァ高裁に3件の事件が係属し、いくつかの判決が出ている。第1の事件では被告人は7月の刑事施設収容、第2の事件では4月の刑事施設収容とされ、第3の事件は手続き中であるという。ただ、事件の内容が記載されていない。                                                                                               そのほかにもいくつかの裁判例があるが、報告書によると、多くが免責に終わっている。人種差別撤廃委員会で、この点につき委員から質問が出ていた。