Thursday, August 23, 2018

女性国際戦犯法廷判決の引用 パトリシア・ビサー・セラーズ論文


アンドリュー・クラハム、パオラ・ゲータ、マルコ・サソリ編『1949年ジュネーヴ諸条約――註釈』(オクスフォード大学出版)の新版が出たと思ったら、2015年版が2018年にペーパーバック版になったものだ。1600頁ある分厚いコメンタリーだ。

Andrew Clapham, Paola Gaeta, Marco Sassoli(ed.), The 1949 Geneva Conventions, A Commentary, Oxford, 2018.

国連欧州本部の売店で、値段も高いし、日本に持って帰るには重たいから、あとで必要ならアマゾンで注文しようと思いながら頁をめくっていたところ、各論の「強姦、その他の性暴力」をパトリシア・ビサー・セラーズとインディラ・ローゼンタールが書いている。

Rape, and Other Sexual Violence (Patricia Viseur Sellers and Indira Rosenthal)

343368頁まで25頁ほどの論文。ジュネーヴ第4条約27条の註釈だ。山下奉文事件判決、極東国際軍事裁判判決、バタヴィア事件判決にも言及があり、メインは旧ユーゴスラヴィア国際刑事法廷とルワンダ国際刑事法廷の多くの判決を検討している。さすがセラーズと思いながら見ていくと、女性国際戦犯法廷判決が出てきた!!

パラグラフ35354355頁)で、強制売春行為を性奴隷制とする見解を、奴隷制の現代的諸形態に関する作業部会、1998年のゲイ・マクドウーガル報告書、ケリー・ドーン・アスキン論文を引用し、「慰安婦」ではなく強制売春であり、性奴隷であるとし、「慰安婦」に対して行われた犯罪の法的記述としては、性奴隷制という用語が正確で適切だという文脈で、2001年の女性国際戦犯法廷判決パラグラフ634639をあげている。Alpha-Canadaのウェブサイトのアドレスものっている。

セラーズは女性国際戦犯法廷の23年後くらいの論文でも女性法廷判決を引用していたが、18年後にも引用している。というわけで、1600頁の重たい本を買ってしまった。

セラーズは国際刑事裁判所の検事局特別助言者、オクスフォード大学客員教授。インディラ・ローゼンタールは国際人権・人道法研究者。