Tuesday, August 03, 2021

ヘイト・スピーチ研究文献(183)b ヘイトをとめるレッスン

ホン・ソンス『ヘイトをとめるレッスン』(ころから、2021年)

目次

プロローグ

レッスン1 ヘイト表現とは何か?なぜ問題なのか?

レッスン2 マジョリティへのヘイト表現もある?

レッスン3 ヘイト表現を類型化する

レッスン4 ヘイトのピラミッドを知る

レッスン5 ヘイトが拡散する

本書は15のレッスンから成る。15章編成だ。最初の5章は、ヘイト・スピーチの定義、性質、拝啓、類型を扱う。

著者はヘイト・スピーチの本質を差別や差別の煽動によって被害を惹き起こす点に着目しつつ検討する。

スピーチは確かに表現だが、表現なら何でもありという奇妙な「自由論」は採用せず、表現がいかなる効果を持ち、いかなる結果を生むかを検討し、沈黙や無視では対処できないことを示す。ヘイト表現の類型は、偏見の助長、侮辱、憎悪の煽動などであるが、類型化にも限界があることを認める。

ヘイトのピラミッドは、アメリカで用いられているピラミッドを紹介し、精神的苦痛という点と、共存条件の破壊に注目する。共存条件の破壊というのは、ヘイトが他者の社会参加を否定し、民主主義を破壊することと同じである。

 「ヘイト表現が共存の条件を破壊するなら、これは憲法が保障する『人間の尊厳』、『平等』、『差別からの自由な権利』、『連帯性』などを棄損するのだ。表現の自由も重要だが、表現がこのような価値を破壊するのであれば、表現の自由が優先されてはならない。もしヘイト表現がマイノリティを社会から実質的に排除し、聴衆を差別と排除に同調するように誘導するというような現実的危害を持っているなら、平等と人間の尊厳など他の憲法的価値を守るためにヘイト表現を規制しなければならないだろう。」

的確だ。私が「民主主義とレイシズムは両立しない」「民主主義と人間の尊厳を守るためにヘイト・スピーチを処罰する」と強調してきたのと同じ思考といえよう。