Friday, October 21, 2011

安斎育郎『福島原発事故』

安斎育郎『福島原発事故――どうする日本の原発政策』(かもがわ出版、2011年)


http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ha/0441.html



「あとがき」が4月18日付で5月に出た本です。原発問題に長年取り組んできた放射線防護学の専門家だけあって、いち早く重要な問題提起をされていました。当然のことながら5月以後の情勢は含まれていません。



放射線に関する解説は、著者の他の本ではずっと詳しいのですが、本書では福島第一原発事故の理解に必要な限りで書かれているので、読みやすいです。もっとも、低線量被曝について詳しく知りたいと言う場合には、本書ではなく、著者の他の本を読むべきことになります。



巻末付録の1972年の日本学術会議での演説を読んで驚愕しました。これが39年前の演説? いや~~本物は違う、とため息が出ます。素晴らしい問題提起です。「32歳の若造だったくせにと、ときどき顔が赤くなる思いですが、よく言ったという感じもあります」とご本人も書いていますが、さすが、です。



原発問題について6つの点検基準を整理しています。


1.自国に根ざした自主的なエネルギー開発であるのか否か。


2.経済優先の開発か、安全確保優先の開発か。


3.自主的・民主的な地域開発計画とどう抵触するのかしないのか。


4.軍事的利用への歯止めが保障されているか否か。


5.安全性の確保、すなわち発電所労働者と地域住民の生活と生命の安全を保障し、環境を保全するに十分な歯止めが、どれほどの実証性をもって裏づけられているのか。


6.民衆的な行政が実態として保障されているのか否か。
























第一章


福島原発事故による放射能災害と私たちの生活


1、福島第一原発事故の態様


2、放射性物質の危険性


3、事故の収拾に向けて


4、私たちはどうすべきか


第二章


放射線による被爆とは何か


1、放射線とは何か


2、放射線の人体への影響


3、被曝への対処はどのようにしたらいいのか


第三章


原発の、何が問題なのか


1、原発とは何か


2、「原発安全神話」を改めて見直す


第四章


どうする、日本の原発政策


1、福島第一原発の廃炉は避けられない


2、既存の原発の総点検を


3、日本の原発政策の再検討を


4、原発の歴史から見えてくること


5、これからのエネルギー政策を考える


第五章


生き来し方を振り返って


1、私と原子力分野との関わり


2、アカデミックハラスメントを超えて


付


一九七二年日本学術会議原発問題シンポジウムでの基調演説

Tuesday, October 18, 2011

宮台真司・飯田哲也『原発社会からの離脱』

宮台真司・飯田哲也『原発社会からの離脱』(講談社現代新書、2011年)

http://www.isep.or.jp/koudan110617.html

6月に出た本ですが、最近入手して読みました。

ネット上で見ると大変好評の本のようです。

http://www.akihiro-ohta.com/2011/07/post-1477.html

http://mayuharu21.at.webry.info/201108/article_10.html

http://gatemouth8.blog87.fc2.com/blog-entry-105.html

http://d.hatena.ne.jp/state0610/20110619/p1

帯に印刷されている「これからのエネルギーとこれからの政治を語ろう」という言葉の通り、原発をやめられない社会を変えて、脱原発を実現していく具体的な方策が提言されています。エネルギーに関する、飯田氏の提言は、今では良く知られている通りです。

民主党が政権成立の際に、宮台氏が民主党の福山とかいう代議士と2人でつくった本に「革命だ!」と書いて興奮していましたが、そんなことはすっかり忘れてしまったようです。今度は「エネルギー革命だ!」と叫ぶのでしょうか。

本書は要するに「脱原発ビジネス」の本です。悪い意味で言っているのではありません。原発に代わる政治経済を実現するためには、代替エネルギーの提言が重要であることはもちろんであり、そのための脱原発ビジネスが必要になります。各地でみんなが飯田氏の発想に学んで、自然エネルギーを、町づくり、共同体自治につなげて展開していくことが必要です。同時に生活スタイルの見直しも徹底する必要がありますが。

服部禎男『「放射能は怖い」のウソ』

服部禎男『「放射能は怖い」のウソ』(ランダムハウスジャパン、2011年)
http://ameblo.jp/iwasaki0408

電子書籍版
http://noahsbooks.co.jp/sakuhin/sakuhin_detail_B02.html

<原発と放射能を第一線で見続けてきた著者が語る、放射能の真実。マンガつきのQ&A形式で、難しい話が簡単にわかります! 「ここでお話しする内容は実際に私が見たり聞いたりしたことばかりです。世の中にはデマや噂があふれています。どうして作り話がとびかうのでしょうか。どうかそんなものに流されることなく、正しい情報を知って、行動してほしいと思います」(「はじめに」より)>

著者は、中部電力で浜岡1号機計画を推進し、動燃事業団、電力中央研究所理事を経て、電力中央研究所・元名誉特別顧問。原子力ムラの一員です。1989年に放射線ホルミシス研究委員会委員長。

福島第一原発から出ている放射能は「恐れるレベルの放射能ではないので、そこで生活しても何の問題もありません」(30頁)と断定しています。「そこで」は、何度読んでも福島第一原発としか読み取れませんので、原発周辺で生活しても大丈夫という趣旨のようです。子どもや妊娠中の女性も大丈夫と主張しています。

福島第一原発事故がレベル7という点について、「福島が7なら、チェルノブイリは10以上になるんじゃないかな」と述べています(52頁)。7までしかないのに。

細胞は修復することと、低線量被曝は健康にいいというホルミシスの主張に貫かれています。プルトニウムは「飲んだって平気」「たとえ血液に入ったって問題ありません」(117頁)。そして、ICRPの見解は、1927年のマラーのショウジョウバエ実験に基づいているデタラメだそうです。

本書のユニークさは、第1に、福島第一原発で放出された放射能の総量について数値を示すことなく、実証抜きで、恐れる必要はない、大丈夫と断定していることです。

第2に、ラッキー博士に始まるホルミシス理論をはじめとするいくつかの論文を推奨していますが、その具体的内容がきちんと紹介されず、文献の出典も示されず、「トップレベル医学者」「権威」としていること。

第3に、不思議な陰謀論。例えば、「原子力発電が広まることで損をするグループの存在。いろんな背景が電力の裏には潜んでいるんだよ。これは怖い話になるからここまでにしておこうね。」(119頁)。何度かほのめかしているのですが、反原発の陰謀が存在するらしいです(爆笑)。

Saturday, October 15, 2011

池田聖治『原発と陰謀』


池田聖治『原発と陰謀』(講談社、2011年)



http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2172585&x=B


<http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2172585&x=B>



本当はこんなに危ない日本!


特殊工作員の「原発テロ」対策を調査・研究した元自衛隊陸将補が語る「原発の


弱点」とは?


私たちがいま「すべきこと」!!


権力者の「ウソ」に騙されずに生き延びろ!!


「いますぐ健康に影響が現れるというものではない」「年間20ミリ シーベルト


などたいしたことはない」というマインドコントロールが行われ、いま、日本人


の多くが油断しつつあります。騙されてはいけませ ん。大切なことは、政府や


経産省、東京電力ではなく、御用学者でもメディアでもなく、あなた自身が自分


の頭で考えることです。3・11大震災とフクシマの事故が教えてくれたことは、


これではありませんか?――<本文より>



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著者は、防衛大学校出身、陸上自衛隊で小平学校人事教育部長、陸上自衛隊陸


将補で退官。特殊工作員による「原発テロ」対策を調査・研究していたそうです。



その観点から「原発の弱点」を強調しています。テロリストが何を狙うかと言


う話。



原発事故への認識、対策をどうするか、原発をどうするかについては、なんと


脱原発派と同じです。第4章は「原発をすべて止められるこれだけの理由」で


す。電力会社が儲けるだけ。本当は原発コストが一番高い。火力 発電がベス


ト。全原発停止でも電力は足りる。「東電栄えて日本経済は滅びる」。



本書の特徴は、第6章「日本を騙し続けるアメリカ、騙された振りをし続ける


日本」です。日本の原発も、ビンラディンも、その他あれこれは「謀略国家・ア


メリカ」に始まるという陰謀論です。真珠湾攻撃もアメリカの 陰謀に乗せられ


たという、あの陰謀論です。



こういう本も出ていることを知っておくのはいいことかと。


川上武志『原発放浪記』

川上武志『原発放浪記――全国の原発を12年間渡り歩いた元作業員の手記』(宝島社、2011年)


http://tkj.jp/book/?cd=01853501



著者は、1980年代にプラント建設会社から派遣されて原発作業員として、美浜、伊方、福島第一、玄海などで働き、一時はタイに行っていましたが帰国後、2003年から5年間、今度は浜岡で働いて、合計12年間、原発で働いたそうです。



「放射性物質が発する熱が壁にも床にも染みついていて、本当に窒息しそうになる。匂いはないと言うけれど、高放射線エリアで働いたことのある私は、放射能の発するいやな匂いを嗅いだことがある。錯覚と言われても、嗅いだとしか思えないのだ。/それに、高放射線エリアには独特の空気の濃さがある。放射能は眼では見えないが、この空気の濃厚さ、濃密さが我々労働者の体に危険を教えてくれる。その空気に包まれた瞬間、体が警報を発する。「逃げろ!」と教えてくれるのだ。」



こうした記述がいたるところにあり、現場を知らない私たちに想像させてくれます。特に第1章の高放射線エリア突入は生々しいです。目次を見るだけでも、孫請けのさらに下請けの労働者がどういう現場でどういう扱いを受けて、被曝させられているのかがわかります。搾取、ピンハネ、名ばかりの安全教育、偽装請負、身代りホールボディチェック、不当解雇・・・



著者はいまは原発労働をやめて、浜岡の脱原発の運動とも連絡を取っているようです。中部電力との交渉の様子もわかります。



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まえがき

第1章 高放射線エリアへの突入
 放射性物質の発する「熱」と「匂い」
 安全教育という名のマインドコントロール
 刺青者も集まってきた美浜原発の定検工事
 トンデモ作業員と美しすぎる燃料プール
 福島第一原発での除染作業
 …ほか

第2章 放浪生活から原発へ
 原子力発電所での経験はあるんかね?
 寮生活での家族的な待遇
 ボタ山のある風景
 初仕事は四国の伊方原発
 飯場さながらの宿舎生活
 …ほか

第3章 「浜岡原発」下請け社会
 会社を退職してタイに渡る


 昔の仲間からの思いがけない電話
 原発労働者と結婚
 雇用保険も健康保険もない雇用契約
 作業現場は管理区域の通称「ゴミ課」
 …ほか

第4章 原発労働者の生活
 浜岡原発前のじゃぱゆきさん伝説
 中古のパソコンを購入してホームページを始める
 ハイキングと富士登山
 1カ月半の“失業宣告”
 原発労働者の習性
 …ほか

第5章 解雇、籠城、ガン
 雇用保険への加入を求めたら「解雇通告」
 会社の寮で1カ月余り籠城する
 ガン発症と労災申請
 不当解雇される派遣労働者
 5万円の日当がピンハネで8000円に

Friday, October 14, 2011

原爆症認定訴訟熊本弁護団編著『水俣の教訓を福島へ』

原爆症認定訴訟熊本弁護団編著『水俣の教訓を福島へ』(花伝社、2011年)
 
http://kadensha.net/books/2011/201108minamatanokyoukun.html
 
誰が、どこまで 「ヒバクシャ」なのか?
内部被曝も含めて、責任ある調査を!
長年の経験で蓄積したミナマタの教訓を
いまこそ、フクシマに生かせ!
 
なぜ、シンポジウムを開いたのか原爆症認定訴訟熊本弁護団事務局長、ノーモア・ミナマタ訴訟弁護団事務局長 弁護士 寺内大介
 
Ⅰ部 パネラー報告
1 過少評価できない放射線の内部被曝  琉球大学名誉教授 矢ヶ崎克馬
2 フクシマとミナマタをつなぐもの  熊本日日新聞論説委員・編集委員 山口和也
3 プロジェクト04で明らかになったこと  平和クリニック院長  牟田喜雄
4 メチル水銀の長期低濃度汚染について  協立クリニック院長 高岡滋
5 ミナマタの教訓を福島へどう生かすか  元熊本学園大学教授 原田正純
 
Ⅱ部 リレートーク
 
Ⅲ 部 特別寄稿
1 ノーモア・ヒバクシャ!  熊本県原爆被害者団体協議会事務局長 中山高光
2 原発事故にミナマタの教訓を生かす  水俣病不知火患者会会長 大石利生
3 フクシマにミナマタの教訓をどう生かすか  ノーモア・ミナマタ国賠訴訟 弁護団団長 園田昭人
 
本書は7月2日に熊本学園大学で開催されたシンポジムの記録です。熊本学園大学と言えば、水俣病と闘い続けた市民科学者、原田正純さん。そして、水俣病の被害者を支えた弁護団は、熊本被爆者訴訟にも水俣訴訟の経験を生かして、道を切り開いていきました。彼らが開催したシンポジウムですから、とても参考になります。原爆訴訟では、日本政府は外部被ばくに限定し、内部被ばくを無視し続けました。これを打開したのが熊本弁護団と矢ヶ崎克馬さん。矢ヶ崎さんには、私たちアフガニスタン国際戦犯民衆法廷でも証言していただきました。国際的にもそうですが、日本でも、まず内部被ばくを無視する。どんな嘘をついてでも頑張る。無視できなくなると、次に、できるだけ過小評価する。この抵抗を打ち破ってきた科学者たちが、いま各地を飛び回っています。被曝だけではありません。水俣病に対する日本政府とチッソの態度がまったく同じでした。ひたすら無責任な日本政府とチッソを相手に闘ってきた科学者と法律家の共同が本書です。
 

エントロピー学会編『原発廃炉に向けて』

エントロピー学会編『原発廃炉に向けて』(日本評論社、2011年)



http://www.nippyo.co.jp/book/5669.html



原子力学会は今年の総会で少しは反省のそぶりを示したようですが、エントロピー学会は一貫して反原発の学会です。4月23・24日同志社大学で開催されたシンポジウムの記録です。



エントロピー学会



http://entropy.ac/



「どなたでもエントロピー学会に入会できます」だそうで、よく言えば市民に開かれた学会、市民科学者の学会です。



本書は副題が長いのですが、「福島原発同時多発事故の原因と影響を総合的に考える」です。無故事を見てもわかるように、福島で何があったのか、何が進行しているのか、これからどうすべきなのかを、多角的に検討しています。8月の出版ですが、4月末のシンポの時点の情報に基づいていますから、今となっては古い部分もないわけではありませんが、全体としてひじょうに優れた内容だと思います。図版資料も充実しています。お勧めです。



はじめに/山田國廣



福島原発同時多発事故から何がわかったか/広瀬隆


福島原発で何が起こったか――原因と意味/井野博満


福島原発で何が起こったか――原発設計技術者の視点/後藤政志


東電・保安院などの事故対応の問題点/ 黒田光太郎


福島第一原発事故による放射線の健康影響/崎山比早子


福島第一原発事故による海洋汚染/福本敬夫


原発事故による土壌汚染を考える


 ――福島原発事故の原因と影響の総合的解明 の試み/山田國廣


飯舘村の放射能汚染調査に参加して


 ――足尾-水俣-福島:日本の公害の歴史から見えてくるもの/菅井益郎


原発廃炉の経済学――危険な低炭素言説の歴史的起源からからの考察/室田武


上関原発の工事中止の行方/三輪大介


パネルディスカッション原発廃炉に向けて/井野博満・黒田光太郎・後藤政志・菅井益郎・福本敬夫


三輪大介・室田武・山田國廣・和田喜彦


付表1 日本の原子力年表/和田喜彦


付表2 日本の原子力発電所一覧/和田喜彦