Saturday, August 16, 2014

サントクロワ・オルゴール博物館散歩

8月15日はサントクロワのオルゴール博物館CIMAへ行ってきた。あいにくの雨模様――降ったり止んだりだったが、ジュネーヴからイヴェルドン・レバンへ出て、お城のイヴェルドン博物館、ペスタロッチ記念館を見学し、昼食後に、登山鉄道でサントクロワへ。イヴェルドンが標高400メートルを超えるので、サントクロワはたぶん800メートル以上の高地だろう。                                                      
サントクロワには2つのオルゴール博物館があるが、今回は時間の都合で駅前にあるCIMAにした。午後2時からガイド付きの見学に加わった。もっとも、ガイドはフランス語なのでさっぱりわからない。オルゴールづくりの歴史、部品のあれこれ、各種のオルゴールの違いを学び、それぞれの音色を楽しんだ。年代物のオルゴール、からくり時計、からくり人形、自動筆記人形など次々と奏でる音楽がとてもよかった。90分のガイドを終えて、絵葉書を買って帰ってきた。神戸のオルゴール博物館もよかったが、やはりサントクロワだ。                                 

夜はジュネーヴに戻ってLes 5 Portesでマグロのたたきとビーフ・タルタル、Le Port des Soupir, Geneve, 2102.

Wednesday, August 13, 2014

人種差別撤廃委員会アメリカ報告書審査

13日午後、パレ・デ・ナシオンで人種差別撤廃委員会CERDのアメリカ報告書審査が始まった。CERDはいつもならパレ・ウィルソンで開かれるが、アメリカ審査には100人を超えるNGOが大挙してやってきたので、ナシオンの大会議室。アメリカ報告書審査は前回会期のはずだったが、アメリカ政府代表がさぼってジュネーヴに来なかったため、今回にずれ込んだ。                                   
アメリカ報告書は69頁とやや長い。直前に印刷したので読んでいないが、報告書の作り方はオーソドックスで、2008年の時よりも読みやすくなっている。担当者が他の国の報告書の作り方を勉強したのだろう。審査では、最初にアメリカのプレゼンテーションだが、6人ほどがコンパクトにまとめた内容をスムーズにリレーする方式で、実にスマートだった。しかも、まずオバマ大統領の人権論を引用し、ラティーノの最高裁判事が誕生したことを報告した。また、最初の2人が女性でとてもヴァイタル。もっとも、内容はたいしたことはない。                                 
アミル委員がアメリカ担当で1時間ほどかなりの早口で質問を並べ立てた。1条の定義に始まり、2条の政府の責任、4条の留保問題とヘイト・スピーチなど。ディアコヌ、クリックリー、ファン、リングレン、ラヒリ、ケマルなど続々で、ダー委員の発言は翌日回し。アフリカン・アメリカンが最大の話題だが、ネイティヴ・アメリカン、ムスリム、ラティーノ、アジアン・アメリカン、アラスカ・ネイティヴィ、ネイティヴ・ハワイなども取り上げられた。刑事司法における差別(死刑、刑事施設収容率)、教育における隔離・分離の強化、メキシコ国境における越境者の現場処刑などが大きなテーマ。                                            

クリックリー委員は猛スピードで質問を並べ、通訳がついていけなかった。ファン委員が「私はクリックリーさんみたいに早口で話せないので」と笑いを取っていたが、さらに「アメリカは毎年、世界各国の人権状況をまとめて発表しているが、そこにアメリカの情報が入っていない。アメリカの状況を反映した報告書を作ってはどうか」と言ったのも笑えた。ヘイト・スピーチ関連では、2009年のマシュー・シェパード・ヘイト・クライム法のことが報告されていたが、スピーチについては処罰しないので、委員からは指摘が相次いだ。ラヒリ委員がfreedom against racial speechと述べたのが印象的。CERDでこの言葉は前にも聞いた。

Tuesday, August 12, 2014

国連人権理事会諮問委員会でヘイト・スピーチにつき発言

8月12日、国連人権理事会諮問委員会13会期の2日目は、「腐敗が人権に与える影響」及び「スポーツとオリンピック憲章を通じて人権促進」の審議を行った。                           
「スポーツとオリンピック憲章を通じて人権促進」作業部会報告書は提出が遅れたためか配布されず、会期中にネット上で公表された。報告書は「スポーツと人種差別」についても1節を割いていたので、急遽、発言することにした。国際人権活動日本委員会(JWCHR、前田朗)は要旨、次の発言をした。                             
<3月23日、Japanese Only事件のため浦和レッズは無観客試合を行った。人種主義横断幕は遺憾であり、Jリーグの20年の歴史で初めての事態である。昨年、日本ではヘイト・スピーチが流行語になった。新大久保ではレイシストが韓国人に対する差別煽動デモを繰り返している。驚いたことに警視庁はヘイトデモに許可を与え続けている。              
2012年、国連人権高等弁務官主催の専門家ワークショプが人種差別煽動禁止に関するラバト行動計画を採択した。2013年9月、人種差別撤廃委員会はヘイト・スピーチと闘う一般的勧告35を採択した。                                      
人種主義ヘイト・スピーチは様々の形態をとる。人種差別撤廃条約1条の定義でも明らかなように、ヘイト・スピーチは間接的用語を使うこともある。条約当事国はあらゆる人種主義ヘイト・スピーチに注意を払い、それと闘うために効果的措置を取るべきである。最低基準として、民法、行政法、刑法を含む包括的立法が効果的である。                         
諮問委員会が、ラバト行動計画とCERD一般的勧告35によるガイドラインをスポーツ分野に適用できるようにするよう要請する。>                        

発言最後の要請について、「スポーツとオリンピック憲章を通じて人権促進」作業部会メンバーのレベデフ委員が「JWCHRの発言に賛成である」と応答してくれたが、事後に行ってみると「今日は頭痛がひどいんだ」と泣いていた。

Monday, August 11, 2014

国連人権理事会諮問委員会でフクシマ問題発言

8月11日、国連欧州本部で、国連人権理事会諮問委員会13会期が始まった。初日に議題2のうちの一つ「災害後・紛争後の人権の促進・保護」の審議が行われた。NGOの国際人権活動日本委員会(JWCHR、前田弓恵)は、次のような発言をした。                                         
<JWCHRは本議題の下でこれまで2度にわたって、東日本大震災とそれに続く原発事故の下での人権侵害状況を報告してきた。今日は最近の状況について報告したい。                             
福島原発事故から3年以上が経過したが、被災者は避難生活を余儀なくされ十分な賠償がされていないままである。被害者は多大な生活不安の中にある。生活空間の空間線量とそのマップ化、食品や土壌・灰などの放射能測定値は十分知らされていない。2013年夏に実施されたがれき撤去作業により、放射性物質が飛散し、原子炉から50km離れた農産物に付着していた。                                       
.そのような中で甲状腺がんに罹患している子どもの数は増加しており、約28万7千人中少なくとも50人と通常の少なくとも170倍高くなっている。さらに、原子力発電所で働く作業員の被ばく許容限度は、今年8月に100mmSVから250mmSVへ引き上げられた。                               
にも関わらず、日本政府は事故の解決を棚に上げて、停止していた原発の再稼働にやっきになっている。例えば規制委員会は、川内原発の適合審査について、避難計画が作成される前に審査通過をさせた。その理由は、避難計画の準備は地方自治体の責任であり、それが妥当かどうかを判断する「権限がない」というものであった。                                           

本年5月21日、福井地裁は、安全審査が不十分であるとして、大飯原発の再稼働を差し止める判決を下した。ところが、政府は安全確認を放棄しながら、原発の再稼働方針を決定した。政府は主権者である国民の意見、及び裁判所の判決を尊重するべきである。政府は、事故の再発を防ぐ事故についてよく検証するべきである。国際人権活動日本委員会は、日本政府に再稼働の中止を求めるとともに、福島原子力発電所の被害者への十分な補償措置を講じるよう要請する。>

Sunday, August 10, 2014

気分はアルビノーニのアダージョだが

まったく思いがけずジュネーヴで大切な友人で先輩を亡くしたため、この8月は悲しい月になった。労働運動、平和運動に取り組み、国連人権機関でのNGO活動を20年近く続けてきた仲間である。昨夜はジュネーヴ花火大会、そして今日はジュネーヴ祭りエンディングの日だった。気分はアルビノーニのアダージョで、寺井尚子。                    
https://www.youtube.com/watch?v=FLsFxS-BJ-s                             
午後にサンジョルジュ霊園で最後のお別れ。ローヌ川沿いのバス停からサンジョルジュ行きに乗ると、以前よく行ったジョンクションを通って少し先が霊園だ。明るく、広い公園墓地の一角に火葬場があり、その地下の安置室でお花と折鶴をささげてきた。                   
入口から火葬場に向かう途中、フェルディナンド・ホドラーのお墓に出会った。スイスを代表する画家だ。スイスの美術館めぐりの授業をするのに役立つと思い写真をパチリ。            
今日はなぜか、一日中、頭の中で鳴り続けたのはHOUND DOGの「ラスト・シーン」だった。頭がアダージョにならない。                           
https://www.youtube.com/watch?v=2lPj5ehsyw8                            

明日から国連人権理事会諮問委員会が始まる。                      

Monday, August 04, 2014

陣野俊史『サッカーと人種差別』

陣野俊史『サッカーと人種差別』(文春新書、2014年)                                       
友人が病気入院しているのでプランパレの南のジュネーヴ大学病院に見舞いに行ってきた。帰りは小雨。ちょっと寒くて風邪をひきそうだった。                          
本書はとてもタイムリーな本だ。浦和レッズ・サポーターによるJapanese Only事件を契機に、サッカーにおける人種差別と反差別の動向をフランス中心に紹介・検討している。「人種差別、その事件簿」では、2000年以後に起きたエマニュエル・オリザデベ、ティエリ・アンリ、サミュエル・エトーなどに対する主な差別を取り上げ、最新事例ではバナナ投げ込み事件と、即座に拾って食べたダニエウ・アウベスの機智と、それにもかかわらず差別の解決にはつながらないことも含めて、考える素材を提供している。「個人史のなかの差別」では、ジョン・バーンズ、ニコラ・アネルカ、クリスティアン・カランブーの3人に絞って、それぞれの歴史的背景から差別の実態に迫る。「差別と闘う人びと」では、FAREをはじめとする反差別キャンペーンの試みと成果を紹介し、レイシストにならないためにいかにしてコスモポリタンとなるかという課題を提起する。                                    
著者は文芸評論家で、フランス文学や日本文学を論じるとともに、サッカーについても造詣が深く、2冊のサッカー評論集を出しているという。本書もサッカー・ファンならではの好著といえよう。                                                   

もっとも、Japanese Only事件を手掛かりに論述を始めているが、残念なことに結局Japanese Only事件については論じることがない。Japanese Onlyがダメであることはわかるが、なぜダメなのかを説明していない。本書だけでなく、日本のメディアはJapanese OnlyFIFAの国際基準に照らして許されないことを伝えたが、なぜなのかを掘り下げた記事はあまり見られない。多くのサッカー・ファンは、なぜ、という問いへの答えを手にしていない。区別、排除、隔離が差別の基本であること。ゲットーやアパルトヘイトは何であったのか。公民権法以前アメリカの白人教会と黒人教会とは何を意味したのか。人種差別の基本的歴史を知らないとこの答えを示すことが出来ない。サッカー評論だけでは説明がつかないということである。

Sunday, August 03, 2014

弘仲淳一郎『無罪請負人』

弘仲淳一郎『無罪請負人』(角川ONEテーマ21、2014年)                                           
8月3日、祭りで燃え上がっている八王子から、のどかなグランサコネの山小屋に移動した。朝方未明、寒くて目が覚め、毛布を追加した。成田空港で買ってシベリア上空で読んだのが本書。                                     

刑事弁護中心ではないが、著名な刑事事件を担当してよくニュースにも出て来る著者の本だ。「私はこれまで担当した事件で、無罪判決を得たのは一〇件程度でしかない。件数でいえば、私以上に無罪を勝ち取っている弁護士はたくさんいる。」確かにそうだが、ロス疑惑事件、薬害エイズ事件、郵便不正事件・村木厚子冤罪、小沢一郎陸山会事件など、検察側が鳴り物入りで総力を挙げて被告人を徹底追及した事件で無罪を取ってしまうところが著者の凄いところだ。マスコミで無罪請負人と呼ばれ、それが本書のタイトルになっているのも、頷ける。本書は、こうした著名事件のポイントやエピソードを紹介しながら、日本の刑事裁判の問題点(長期の身柄拘束により自白を強要し、自白に基づいて有罪判決を量産する人権侵害の人質司法)を明らかにしながら、弁護士の仕事についても解説している。勾留されて追い込まれた村木厚子さんを家族が支えた話や、架空のストーリーに熱中した検察が自分のストーリーに目を奪われて動機の説明がつかなくなった話はおもしろかった。ロス疑惑の三浦和義さんをサイパンに行かせてしまった話の説明は疑問だし、一事不再理などと言っているのも法律論として全く不十分だが。他方で、住管・整理回収機構・中坊公平への批判はもっともである。権力から独立して人権擁護を追求するべき弁護士が金目当てで権力まみれになるさまは情けない。時代の変化とともに、弁護士の立ち位置が変わってきたと言う。司法改革やロースクールなどの改革の影響もあっただろう。刑事司法はさらに悪化の兆しがあるだけに、刑事弁護も厳しくなりそうだ。本書を読んだ若者が刑事弁護を目指すようになるといいのだが。