Thursday, August 21, 2014

人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(5)審査2日目・前半

*下記は現場でのメモと記憶による報告であり、正確さの保証はありません。論文や報道などに引用することはできません。CERDの雰囲気をおおまかに伝えるものとしてご了解ください。残念ながら意味不明の所もあります。
*CERDを傍聴された方、下記に間違いや不適切な個所がありましたらご指摘願います。

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前日に引き続き、21日午前10時から、パレ・ウィルソン(国連人権高等弁務官事務所)大会議室において、人種差別撤廃条約ICERDに基づく人種差別撤廃員会CERDの日本政府報告書審査が行われた。NGO席は、日本関連NGO、記者など多数で満席。20日に各委員から多数の質問が出されたのを受けて、まず日本政府からの回答である。
KONO大使――多くの委員から提起されたヘイト・スピーチだが、ICERD4条が禁止する行為には、様々な場面における様々な行為が含まれるので、すべてについて刑罰法規をもって規制することは、その規制の必要性、具体的内容、合理性が厳しく要求される表現の自由との関係、刑罰法規の明確性の原則など憲法と抵触するので4条(ab)の適用を留保した。現在の我が国の状況が、この留保を撤回し、表現の自由を委縮させる危険を冒してまでヘイト・スピーチ立法をする必要がある状況に至っているとは考えない。日本政府はこの問題に手をこまねいているわけではない。法務省人権件機関が、外国人の人権擁護に取り組み、年間強調事項の一つとしているし、人権の擁護啓発雑誌にヘイト・スピーチの記載を追加して配布しいている。公務員に外国人の人権研修講義を行い、啓発活動も進めている。21(2009)年12月の京都朝鮮学校事件の刑事処罰に関しては、被告人4名について、威力業務妨害罪、侮辱罪等で起訴がなされ、京都地裁で有罪判決が出て、確定した。ヘイト・スピーチに関いて、日本刑法では、名誉毀損罪、侮辱罪、威力業務妨害罪、脅迫罪、強要罪などが成立しうるので、捜査当局は刑事事件として取り上げるべきものがあれば法に基づいて適正に処理している。(*日本のヘイト・スピーチ・デモの)ビデオを見た委員から、警察がヘイト・スピーチをする集団を守っているというご指摘があったが、警察は、いかなる立場からも違法行為を看過してはならない、公正中立な立場から規制を行っているのであって、ヘイト・デモを守っていないし、カウンター側を阻害していない。安倍首相は、一部の民族を排除するような言動は極めて残念で、あってはならない」「ヘイト・スピーチはこれまでの国際社会関係を乱し、日本の誇りを傷つけるので、厳しい対処が必要である。自民党でも検討する必要がある」と述べている。政府としては、自民党の取り組みも含めて、この問題に注視していく。
・沖縄について、沖縄県に所在している人、沖縄出身者について、社会通念上、生物学的文化的に一体の共通性を持っている人々と広く認識されていないし、ICERDの人種差別の定義に該当しない(*条約の適用対象ではない)。いずれにしてもわが国では、沖縄出身者を含めてすべての人々が、自己の文化を享有し、自己の宗教、言語を否定されておらず、日本国民としての全ての権利を等しく保障されている。日本政府は沖縄を含む各地の特色ある文化に敬意を払っている。沖縄の文化も保存、振興を図っている。1972年の本土復帰以来、振興特別措置法ができ、様々な振興策がとられ、社会資本の整備を行い、格差が縮小し、産業分野でも着実に発展している。2014年、振興計画の策定主体は国から県へ移管し、県の要望を十分踏まえ、沖縄代表、振興審議会の調査を踏まえながら決定されている。
・人身取引対策について、政府は人身取引手口の巧妙化を踏まえて、2004年行動計画をつくり、2009年12月に改定し、行動計画2009を策定し、人身取り引き議定書3条の定義に従い、行政機関の緊密な連携、国際機関、NGOとの協力の下、人身取引事案を積極的に把握し、人身取引の撲滅、被蓋派の保護につとめている。被害者の社会復帰のために、09~13年、予算を25万ドル、19万ドル、27万ドルを計上し、外国人人身被害者の帰国支援、社会復帰支援事業、帰国後の社会復帰支援費用にあてている。庇護という観点から2011年7月、事案の取り扱い方法、被害者保護の着眼点を整理し、取引対策に携わる関係行政機関に周知している。事案の取り扱い方法、保護措置を取りまとめたが、警察、入管、法務局、婦人相談所、労基署など各種窓口で相談者が、被害者である可能性あると判断すれ、ば保護することを目的とし、警察、婦人相談所、児童相談所に通報し、連携して取り組む。
・技能実習生であるが、研修技能実習は、わが国で培われた技能、知識の開発途上国への技術移転、知識移転のためにつくられた。この制度について、賃金未払い、長時間労働、不正事案の発生があり、国際社会の批判も受けたので、本年6月の閣議決定で、日本再興戦略を決め、国際貢献を目的とする、制度の抜本的見直しを行うことにした。関係省庁の連携、全体に一貫した運用体制、送出し国との政府間取り決め、外部監査の義務化、新たな法律、管理監督の在り方を、年内めどに抜本的に見直し、15年度中に新制度への移行をめざしている。業界指導の充実、地域協議会、関係者などについて、整備し円滑に進めるため、抜本的見直しが現在進行中である。
・慰安婦問題であるが、日本政府の立場は、慰安婦問題はICERD人種差別に該当するものではない。一部の委員が性奴隷という表現を用いているが、この表現を用いることは不適切である。また、日本は1995年にICERDを締結した。条約締結以前に生じた問題に条約は適用されない。一部の委員が、1923年の関東大震災の問題を取り上げたが、これらは条約の実施状況として取り上げることは適切ではない。以上は法的観点の話である。同時に、委員会が求める情報について日本政府は誠実に対応するっことにしているので、わが国の取り組み、立場を説明する。日本は先の大戦に至る一時期、多くの方、アジア地域の人に多大の損害、苦痛を与えた。歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省お詫び、内外の全ての犠牲者に哀悼の意を繰り返し表明してきた。安倍首相も、筆舌に尽くしがたい辛い思いをされた方々への思いは、歴代総理と変わるところはない。補償に関して、慰安婦を含め先の大戦に関わる賠償、財産請求権は、サンフランシスコ条約及び2国間条約に従って誠実に対応し、個人請求権は法的に解決済みである。韓国について言えば、日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決」した。それでもなお、日本は慰安婦とされた多数の女性の名誉と尊厳を傷つけたことに、お詫びと反省のため国民的議論を尽くして、1995年アジア女性基金を償い事業目的で創設した。具体的にはフィリピン、台湾で慰安婦女性に200万円の償い金、医療福祉支援事業を行った。インドネシアでは高齢者対策、オランダでは癒しがたい傷を受けた方の生活状況改善事業をした。日本政府はアジア女性基金に48億円の拠出、そのうち医療福祉11億である。国民の募金による償い金にも最大限の協力をした。償い金提供の際、総理のお詫びremorseの手紙を渡した。歴代総理、橋本、小渕、森、小泉首相が自筆の署名で謝罪と反省の手紙を直接送った。アジア女性基金は2007年に解散したが、フォローアップ事業をしている。なお、強制連行との指摘があるが、91年12月~93年8月に調査、聞き取りを来なって、全体として判断したが、資料の中には軍、官憲による強制連行を示す記述は見当たらなかった。
・移住労働者権利条約、ILO169号条約,無国籍条約、ジェノサイド条約を批准していないことについて、条約の理念は理解しているが、国内法との整合性など慎重な検討が必要である。
・日本国憲法14条の法の下の平等が、条約ICERDの差別的取り扱いの範囲、条約よりも狭いのではないかとの指摘があったが、14条1項の人種その他は「例示的説明」であると解釈されている。「限定列挙」ではない、これらの列挙に直接該当しない場合も不合理な差別はすべて禁止されると解釈されている。14条はICERDの定義の5つの不合理な差別もすべて禁止している。
警察庁――ムスリム情報収集との指摘について、警察は公共の安全、秩序維持の責務を遂行している。そのために必要な情報収集をしている。ムスリムであると言う理由だけで監視活動を来なった事実はない。法律に基づいて適正な活動をおこなっている。 
厚生労働省――二重差別であるが、法務省人権擁護機関が人権相談所を有し、女性、子どもの人権相談を行い、疑いのある事案は調査し、適切な措置をとっている。法務局は、女性の人権電話、女性の人権ホットライン、子どもの人権110番、小中学生子どもの人権SOSミニレター、女性の人権を守ろうなど啓発活動の年間強調事項にしている。女性の人権、人権尊重を高める教育を推進し、社会教育もおこなっている。子ども若者育成支援推進法により、支援政策を総合的に推進している。困難を有する母子家庭に、母子家庭就業支援、養育費、児童扶養手当、総合的自立支援策を行っている。2012年第3次男女共同参画基本計画が、女性について必要な取り組みを勧める。
外国人年金、社会保障、社会保障制度に関して、国内法の国籍要件は撤廃し、適法に滞在する外国人にも同様に制度が適用されるようつとめている。国民年金の国籍要件は1982年に撤廃し、外国人にも適用、1985年法改正で基礎年金発足し、合算対象期間についても国籍取得者、永住許可を得た方に、適用除外とされた期間が受給資格期間に算入されるようになった。
ホテル等入場拒否について、ホテルは旅館業法があり、特定の人種民族を理由とする宿泊拒否は認められていない。国際観光ホテル整備法は国際観光振興目的であり、外国人が安心して宿泊できるよう指導している。飲食店レストラン喫茶店映画館公衆浴場等について、生活衛生関係営業の運営適正化法があり、生活衛生営業指導センターによる指導体制をつくり、利用者からの苦情に積極的に取り組みをしている。公衆浴場へのアクセスについて外国人向けにHPに情報掲載している。
法務省――家庭裁判所調停員について、国籍を持たない者の就任は認めていない。調停員は裁判所非常勤職員であり、国籍が必要である。調停員の権限職務の内容をみると、裁判官とともに調停委員会を構成して活動し、その決議は過半数の意見による、調停が成立した場合それは確定判決と同じ効力を有する、呼出し命令措置には過料の制裁があり、事実調査証拠調べを行う権限も有する。これらの権限を有していることを総合的に考慮すれば、公権力の行使、国家意思の形成に携わるので、国籍が必要である。
戸籍について、高度のプライバシーであり管理を厳格に行うよう研修指導している。2005年戸籍法改正で、不正請求防止策、請求者本人確認、不正請求に罰則強化、不正閲覧発覚に厳正な処分をしていると認識している。
日本人男性と離婚した外国人女性について、配偶者在留資格だが、離婚した場合であっても、引き続き在留を希望するときには申請の理由、来日経歴、在留状況、家族状況、離婚に至った経緯を総合的に判断して、在留の可否を決定することとしている。養育看護を必要とする日本人子どもの養育のため在留を希望する親については、親子関係、親権者、確認できれば、定住者在留資格に変更を許可している。
帰化について、氏名には日本文字を使用しなければならないが、漢字を使うか否かは自由であり、日本人らしい氏名を強要している事実はない。
人権侵害被害者の支援では、国の全額出資により日本司法支援センターがつくられ、全国の事務所をおき、資力の乏しい者対象に民事法律扶助業務、無料法律相談、弁護士費用の立て替え、代理人弁護人との打ち合わせにカウンセラー同席の費用も援助している。
パリ原則国内人権機関について、新たな人権救済機関法案は2012年国会提出されたが、廃案となった。人権救済制度の在り方については、これまでの議論状況を踏まえ適切に検討している。
部落差別、同和について人権擁護機関、はさまざまな人権相談、助言、適切な機関紹介、疑いがある場合は人権侵犯事件調査、侵害の排除、再発防止の適切な措置を行い、同和差別意識解消のため、偏見差別をなくそうを年間強調事項の一つとして掲げ、年間を通して各地で講演会、研修会、冊子配布、イベント実施をつづけている。厚生労働省が、地域で開かれたコミュニティとして、隣保館を設置運営し、各種事業を総合的に実施している。雇用差別について、採用選考で就職差別を未然に防止するため、公正な選考、指導啓発をしている。文科省は実践的研究の実施、調査研究、実践事例の収集・公表をすすめ、意識を高めることにし、社会教育においても2013年度より実践的に実施している。。
難民について、特定国からの庇護希望者についての優先基準はない。法規定の難民は、条約の適用を受ける難民であり、条約に従っている。認定に当たっては個々の申請について条約の要件への該当性を個別に判断しているので、優先的な基準は存在しない。
庇護希望者の送還について、それぞれリスクがあり、送還すべきではないのではないかという質問について、申請中の者を退去強制手続きにより送還することはない。認定申請をした者のうち、認定されなかった場合でも、人道的配慮が必要なものは在留を認めている。人道的配慮の必要性が認められなかった者は強制退去命令となるが、その場合であっても、次の国に送還はない。難民条約33条1項に規定する領域に属する国。2、拷問禁止条約3条1項に規定する国。強制失踪条約16条1行為規定する国。
在留特別許可について、退去強制手続き以前に許可すべきではないかとの質問があったが、入管法では、不法入国者・不法残留者については退去強制事由、原則として退去強制としている。在留特別許可は本来退去強制されるべき者に対する法務大臣による例外的、恩恵的措置である。現行法制上、在留特別許可は退去強制手続きの過程で行われる必要がある。
難民認定申請をして認定がなされない場合でも人道上その他の理由により特別に在留を許可することがある。
文科省――朝鮮学校無償化除外は差別ではないかとの指摘があったが、無償化にかかる指定処分については差別に当たらない。高等学校等就学支援金は、学校において支援金を適正に管理が行われるう事が必要である。教育基本法、学校教育法など関係法令の遵守が求められる。朝鮮学校生徒に支援金制度の適用をするかどうか、基準を満たすかどうかを検討した結果、朝鮮学校は朝鮮総連と密接な関係があり、北朝鮮と密接な関係がある。学校の人事や財政に影響を与えているので、不当な支配に当たらないことについて十分な検証を得ることが出来ず、指定の基準に当たると認めるに至らなかったので、指定しない処分をした。今後、都道府県知事の認可をうけて「1条校」になるか、北朝鮮との国交が樹立されれば、朝鮮学校も審査の対象となる。1条校には、多くの在日朝鮮人が学んでいる。国籍を理由とした差別には当たらない。政策方針変更はいつ、どのようになされたのかという質問があったが、基準審査結果の不指定であって、政策変更をしたことはない。なお、自治体の支援との関係で、助成金は地方自治体の独自の判断で行っているものであって、国としては考えていない。自治体が独自に朝鮮学校を支援することは違法ではない。朝鮮学校を、中華学校、アメリカン・スクールなどと区別して特別扱いはしていない。各種学校としての認可をしており、区別はしていない。
学校に通っていない日系ブラジル人、保護する子どもの就学だが、公立学校への無償受け容れをしているし、外国人学校にもかよえる。義務教育学校への機会を逸することのないよう、就学案内を通知することを、地方教育委員会に通知している。その際、複数言語に対応したひな形を自治体に示している。児童生徒受入れの手引きを教育委員会に送り、周知徹底を図っている。補助事業として、就学前児童に初期教育、不登校・不就学の子どもへの支援、公立学校への移転支援、母語・母文化について、課外において当該国の文化学習も大切、地域の実情に応じて取り組まれている。
ユネスコの8つの言語について、2009年報告書にアイヌ、八丈、奄美、国頭、沖縄、宮古、八重山、与那国がのっている。文化庁は、消滅の危機にある言語方言の活性化の調査研究を実施している。沖縄の文化保護について、文化遺産、保護法に基づく指定、通常2分の1の助成だが、沖縄について一定の要件で5分の4。
内閣官房アイヌ室――1)先住民族権利宣言後、政府は2008年国会決議、官房長官談話を経て、在り方に関する有識者懇談会の2009年報告書で、宣言関連条項を参照しつつ、先住民族であるとの認識に立って、実情に応じた具体的政策、総合的かつ効果的政策をすすめ、アイヌ政策推進会議を設置し、政策を着実に実行している。ただし、国連で宣言に賛成票をした際、土地や資源に関する権利については、第三者の権利及び公共の利益からの制約があることを指摘した。しかし、土地資源の活用、アイヌ文化の復興に強い関心をもち、文化の伝承に必要な土地につき、国有地を活用する事業を認めている。
2)北海道以外に居住するアイヌ民族について、2008年国会決議後、北海道に先住し、独自の言語文化を有する先住民族であり、2010~11年、北海道以外のアイヌの生活実態調査を、全国的見地から必要な支援策を検討し、実施している。
3)アイヌ統計データについて、報告書には2006年北海道庁調査結果を乗せたがその後、2014年北海道庁による新たな調査結果が公表されている。結果概要だがたとえば、教育の状況、大学進学率は着実に向上してきており、今回も25.8%、8.4ポイント増加、しかし、43.?%に比して17.2ポイント異なる。平均年間世帯収入、住民税の状況から見ると、非課税世帯6.4ポイント増加、一方で一定の額を超えて課税される世帯が2.1ポイント増加。アイヌの人々が居住する市町村との比較において今だに差がみられる。対応として、北海道が、経済的理由による就学困難者に対して奨学金事業の支援をしており、政府はこれを支援している。

4)アイヌの文化の維持について、アイヌ語では、97文化振興法で支援、総合的かつ実践的研究、アイヌ語の振興や、伝統に関する普及、伝統的生活空間の再生、アイヌ語、アイヌ文化の振興に寄与している。文化遺産、保護法では、古式舞踊、生活用具を国の文化財指定、保存継承の補助をしている。政府主導により、民族共生の象徴的空間、2015年一般公開に向けて、共生象徴空間として博物館を準備中。伝統的家屋、工房、アイヌの世界観、自然観を学ぶことが出来る空間として、アイヌ文化復興のナショナルセンターになることが期待される。なお、日本では日常生活、経済活動で日本語が一般的に使用されている。学習指導要領に日本語だけとは明文化されていないが、日本語以外の言語は通常は想定されていない。しかし、アイヌ語学習をすることは可能である。

Wednesday, August 20, 2014

人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(4)審査1日目・後半

*下記は現場でのメモと記憶による報告であり、正確さの保証はありません。論文や報道などに引用することはできません。CERDの雰囲気をおおまかに伝えるものとしてご了解ください。残念ながら意味不明の所もあります。
*CERDを傍聴された方、下記に間違いや不適切な個所がありましたらご指摘願います。

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日本の大使によるプレゼンテーション、そしてケマル委員による冒頭の概説に続いて、CERD委員から日本政府に対する質問がなされた。以下、各委員の質問。
バスケス員――ヘイト・スピーチについて、残念なビデオを見た(*NGOブリーフィングの際に上映した5分のビデオで、在特会によるヘイト・スピーチと暴力の様子をまとめたもののこと)。朝鮮人に対するヘイト・スピーチである。条約に基づいて懸念があり、安倍総理もヘイト・スピーチに適切に対処すると述べていると言う。CERDが2013年に採択した一般的勧告35「ヘイト・スピチと闘う」において、ヘイト・スピーチに対する対応を整理してある。一般的勧告26にも書かれている。日本は憲法の枠内で条約を実施するとして、条約4条を留保していることは承知している。しかしなぜ留保が必要なのか、留保の性格、範囲も問題である。勧告を受けて見直したが、留保の決定は変えないというが、性格や内容をもっと明確にしてほしい。憲法の範囲内で条約を実施するというが、憲法がなぜそこまで制約になるのか。懸念しているのは、どういう限界が必要なのか、である。表現の自由は幅広いが、ヘイト・スピーチに対応することは特に表現の自由とは抵触しない。実際に暴力をふるい、威嚇している。「出てこい」「殺すぞ」などと、非常に過激な言動であり、スピーチ以上のものである。まさに暴力の威嚇が身に迫っている。大阪高裁判決が出て、最高裁係属中ということも承知している。期待している。33-44、ヘイト・スピーチ処罰規定を設けるべきである。措置を取る必要がある。教育、寛容の精神との回答だが、37では、公人によるヘイト・スピーチについ述べている。もっと情報を提供してほしい。高いレベルの公人(政治家等)がヘイト・スピーチをどのように非難しているのか、「ヘイト・スピーチはいけない」と言っているのか。ヘイト・スピーチに対するカウンター・デモがあるが、心配なことに、人種差別グループのヘイトデモに対するカウンター・デモの側から逮捕者が出ている。カウンター側がメッセージを広めることができない。差別に反対するカウンターを阻害することは許されない。ヘイト・スピーチ法ができても心配がある。NGOによると、現政権は法律を乱用して、マイノリティに対して押さええつける心配がある、という。CERD勧告20は、あいまいで幅広いヘイト・スピーチの定義によって、守られるべき人にとってマイナスになる可能性がある。条約の定義にあう形で定義する必要がある。法律を口実としてマイノリティをおさえつけない、マイノリティを守ることが目的であると明確に述べる法律であるべきだ。
アフトノモフ委員――微妙な表現に関わることであるが、日本政府報告書172-188の、アイヌについて積極的措置といえるが、187に関して、ユネスコは日本で9つの言葉が消滅の危機にあるとしている。しかし、文化や言語が残る事は重要である。奄美の言葉その他7つの言葉はどうなっているか。アイヌ、他の先住民について情報が欲しい。部落民について、社会的集団であり、民族、種族などと異なると言われているが、例えば京都駅の南側のように、一定の地域に居住している。戸籍の問題では、どのような家族が同和と呼ばれることになるのか。結婚差別もある。部落にエスニックな側面はないのか、かつては法律が作られたではないか。29について、朝鮮学校の高校無償化問題があるが、自治体はどうなっているか。政府から資金がない、無償化の便宜を得ていないが、自治体が補助を出すのは違法なのか。外国人の14%コリアンが外国人では3番目に大きい集団だが、ブラジル移民、日本に戻った人は定住しているのか、歓迎されていないのか、情報を知りたい。
マルティネス委員――現在のアイヌの状況、パラ13だが、データの内訳がない。2009年以降の進展を考えると、もっとデータがあるのではないか、どういう行動がとられたのか。日本政府報告書に掲載されている各統計が一般的である。集団ごとのデータがあれば差別状況が分かる。アイヌの教育のデータを見ると、日本人よりも低いことが分かる。71-72の政治参加について女性のための措置、非対称性が見られる。議員の13.5%が女性議員、女性が少ない。アイヌはさらにその状況がひどいことにならあいか。特定の集団、アイヌのデータがほしい。勧告32は、是正措置に関する。奴隷の形態である人身売買、22に言及はあるが、対処する措置は国際的レベルの措置に比べると足りない。アフリカ系の人の住民、比率、統計も知りたい。
ディアコヌ委員――「前回報告書に書かれている」と言う報告書は役に立たない。差別について、法務省の組織、人権擁護局など265のアンテナというのはわかった。差別の動機ついて、例えば人種だが、日本はどう理解しているのか。学術的には人種は存在しない。我々は皆同じ人間という人種である。日本における人種の定義はどうなっているか。日本国籍保持者か。世系はどう考えるのか。人種差別禁止法が必要である。さまざまな外国人が住んでいるので、包括的な差別禁止法をつくるべきだ。ヘイト・スピーチは、バスケス委員が言った通り、表現の自由とヘイト・スピーチの規制に矛盾はない。CERD一般的勧告35「ヘイト・スピーチと闘う」は長い検討の結果、採択された、情報の自由があるが、差別言説は、バスケス委員が指摘したように、単に表現の自由ということではなく、暴力であり、暴力の煽動は世界中で問題となっている。殺す、ガス室、叩き殺すと言った表現は暴力に訴える、暴力を唱導することは表現の自由とは区別できる。マイノリティの権利行使に不利益があり、言語消滅の危機もある。言語の保護、文化保護のため、アイヌについて何をしているか。琉球の言葉も、ユネスコでは日本語とは別の言語と認められている。歴史と伝統、ユニークありと認められている。沖縄の特異性をどうして認知しないのか。ユニークは日本を豊かにするものであり、保護するべきである。部落について、ここでも特異性を持った集団をどう保護するか。日本には移住者の保護法がない。差別を防ぎ、いいかに日本に定着させるのか。特別在留許可が難しい。退去強制手続き前の特別許可はできないのか。無期限勾留があるとの情報がある。移住者・女性の二重差別もある。人権理事会のUPRでも指摘されている。政府が解決しなければならない、個別の委員会に委ねるべきものではない。マイノリティ差別を見ると、嫌悪的なメンタリティがある。人権促進、人種差別との闘いを強化する必要がある。
ユエン委員――バスケス委員が既に発言したが、ヘイト・スピーチについて、京都朝鮮学校事件で地裁でも高裁でも1200万円の賠償命令が出ている。名誉毀損を認定し、不法行為とした。刑事の側面、起訴されたとの話も聞いたが、もう少し詳しく知りたい。刑法の罰則が幅広いようだが、しかし、ヘイト・スピーチが起訴相当の罪にあたる場合があるという。具体的にどういう罪が法律に定められているのか。実際に発動されて、判決で認定されたのか。刑法のどのような条項か。差別は日本刑法で罰せられないのではないか。ヘイト・スピーチは法律で禁止されていない。表現の自由という理由だが、ビデオを見て懸念を抱いた。ビデオでは、特定の出来事が映っているが、加害者に警察が付き添っているように見える。ほとんどの国では、こういう事が起きれば、加害者を逮捕し、連行し、収監するはずだ。刑事的な面でどのように対処しているのか。安倍首相の発言はきちんとした措置を求めている。これは評価すべき。立法措置の見通しはあるのか。タイムスケジュールを設定しているか。朝鮮学校だけが名指しされている。中華、アメリカン・スクール、他にもあるのに、朝鮮学校だけ別のカテゴリーで、別扱いされている印象を受けた。
フアン委員――ヘイト・スピーチをいかに止めるか。2010年のCERD勧告は、4条留保を撤回すべきとしたが、日本は留保撤回は考えていないと言う。その理由は、人種差別が激しいことはないとか、正当な言論を抑え込むことになるからとか、重大な人種差別はないと、言っている。しかし、日本はどうもそれほど明るい状況ではないのではないか。人種差別が実際に日本に存在する。極端な個人や団体、右翼が、日本人の優越性、植民地主義的考えを抱いて、少数派、外国人に嫌がらせをし、挑発、暴力的行為をしている。インターネット、新聞テレビでもヘイト・スピーチを流布させ、民族的対立をあおっている。閣僚、政治家が政治的発言をして、人々をあえて誤解させる発言をしている、在日、子どもたちへの差別発言がある。「中国脅威論」の発言もある。日本では法律で差別を禁止せず、パリ原則に従った国内人権機関もない。差別言論が起きているのに処罰されない。極右集団や個人の発言がさらにあからさまに過激になっている。被害者は司法へのアクセスがない。極右組織はあきらかに人種主義的、排外的デモが政府のお墨付きを得ている。排外主義デモが警察に守られている。人種主義的スローガンを叫び、かつての日本軍国主義の旗や、ナチスの旗を掲げている。被害者が訴えても警察は無関心であるという。極右は根深い人種差別思想を心の中にもっている。過激な「殺すぞ」といった発言が、日本人以外の者に向けられている。日本的名前に改名するよう圧迫もある。雇用、年金も平等処遇を受けていない。日本に差別が存在し、深刻な事態である。ICERDに基づいて、表現の自由は2013年のCERD一般的勧告35において明示したが、ヘイト・スピーチを禁止するべきである。表現の自由を保護することとヘイト・スピーチ禁止の間に矛盾はない。一人一人が表現の自由と同時に社会的責任を有している。とくに政府、政治家は自制するべきである。条約4条の責任を果たすよう勧める。差別禁止法を作るよう、積極的措置を取るべきである。それから、関東大震災時に、6000人もの人が警察や軍隊によって殺された。犠牲者はその後の処遇に満足せず、調査を求めている。日本政府は、いつ調査を行うのか。
ボスユイ委員――朝鮮人、そして永住者の数は何人か。朝鮮学校が資金援助を得ることが出来なくなった。いつ政策変更が行われたのか。どのような理由で変更したのか。処遇の違いはどこからでているのか
ラヒリ委員――日本はアジアの人たちに対して、植民地主義との闘いの必要性を意識させた。高度成長、経済成長、伸展があった。しかし、孤立した部分がある。移住者のコミュニティは差別に直面している。コリアン50万人が差別を受けている。朝鮮学校無償化問題もある。アイヌなど先住民族も差別されている。ビデオを見たが、ヘイト・スピーチが助長されていることは否定できない。国内人権機関が、これだけ長い検討の後になぜできていないのか。
クリックリー委員――日本政府は前回の勧告に応答していない。報告書は「前回参照」という書き方ではなくきちんと書いてほしい。勧告が実現していない。国内人権機関、なぜ廃案になったのか。ぜひ設置するべきだ。新しい人権機関立ち上げに早い段階から市民社会の積極的な参加のもと、すすめるべきだ。ヘイト・スピーチ、朝鮮人、外国人に対する暴力の唱道にどう対処するのか。表現の自由と憎悪煽動の関係をはっきりさせるべき。高校無償化は、多くの報告があるが、あいまいな理由で継続的に差別がなされている。性奴隷制度、慰安婦問題では国連人権高等弁務官の声明も出ている。継続的な侵害である。被害女性の90%が外国人であり、既に亡くなったと言う。「性奴隷制でなく、売春だ」という言葉が被害者、家族に多大の苦痛を与えている。慰安婦には、賠償、補償があたえられるべきである。2005年以後、搾取のための人身売買が減っていると言うが、改善と言えるのか、どういう措置を取って性的搾取に対応しているのか。先住民族について、土地の権利、補償、影響を与える政策策定に事前に参加できるようにするべき。米軍基地についても、地元住民の参加が必要だ。ILOドメスティック労働者、移住者の権利、家事労働者についての情報も欲しい。
リンドグレン委員――日本政府報告書は「前の報告書参照」ばかりで、読みにくい。別のデータを出してほしい。個別データではないため、外国人の実態がわからない。経済的状況なども、日本国民と一緒のデータではないものが必要である。私はブラジル出身である。ワールドカップでは、日本人サポーターは応援だけでなく、ごみを拾うなどとても評判が良かった。総理がブラジル訪問した。ところで、日系ブラジル人13万人、報告書104-109だが、片親が日本人でないと子どもは日本人になれない。親がブラジル人だと日本で生まれても子供は日本国籍を取れないのか。学校に行けない、親が学校に通わせない、これは親の問題だが、子どもたちが日本人になれなかったら、その先どうなるのか。教育の機会を子どもたちが享受できるようにするべきだ。
カラフ委員――さらなる努力が必要な分野として、4条留保の撤回がある。保護措置の拡大が重要である。ICERD14条だが、2010年に日本政府は個人通報制度の受諾を検討していると述べたが、その後どうなったのか知りたい。暴力だが、刑務所収容者の数に影響しているか、2000件の強姦というデータがあるが、データを別の内訳として出してほしい。
バルデル委員――日本の姿勢、「ジャパニーズネス」についてどうとらえれているのか。どの国も社会の一体性を維持するのに苦労している。排外主義、反発があり、包摂ではなく排除がどの国でも起きる。長いこと日本に住んでいる外国人が、税金を払っていても、年金、社会保障の給付を受けられない。最高裁判決が出たと言う。他方、自治体だが、人道的視点、政策で給付の義務付けをしていない。公務員就任権だが、コリアン、外国人について取り組みをしているのか。管理職、国でも地方でもつくことができないか。家裁の調停員の排除について知りたい。文化的背景があるのか。国の一体性の理念、しかし、外国人排斥思想を排除することが有用である。どういった社会的力関係があればより受け入れることが出来るのか。
ダー委員――リンドグレン委員も言うように、「前回参照」は読みにくい。今後はもう少し改善しいてほしい。報告書作成段階での市民との協議はどのようになされたのか、どういう人と協議したのか、どの程度、報告書に反映したのか。いろんな形態の差別が指摘されている。国内人権機関が死活的に重要であるので、加速してほしい。日本国民とその他の人が社会生活のあらゆる分野で別処遇となっている。移住者女性が日本人男性と結婚、その子ども地位、配偶者など3年ごとに更新される在留資格という。子どもは日本人の親がいる。両方の国籍を持つ国も多い。家族が分離、バラバラ、離婚すると女性は地位を失う、脆弱な状況に置かれている。夫の地位に左右されるため、地位を失う恐怖感から弱い立場になり、DVの対象になっても、通報できない、手続ききの簡素化が必要である。マフィア、売春宿があるので、女性を救出するための組織が必要である。人身売買に対処する具体的な措置はどうなっているか。他の委員会が、性奴隷、慰安婦について、被害者と認めリハビリを提供し、子孫にも適切な補償をすべきと勧告した。日本政府は個人通報に言及していない。無国籍条約の締約国になっていない。
アミル委員――イスラム教徒が警察による調査対象となっている。テロ活動の懸念なのか。一部なら別かもしれないが、一般的にイスラム教徒を調べていると言う。9.11以後、いろんなことが世界で起きたが、14年、長い年月がたって、テロ容疑はない。宗教だけに囚われているのでない。すべての宗教は尊重に値する。調査しているのは本当なのか。
議長――13~24のアイヌ文化振興だが、アイヌ語を学ぶ機会が不十分だという。高等教育で年間36時間、口頭伝承もしていると聞いているが、言葉だけでなくアイデンティチィが重要、維持強化のためにどのような措置をしているか。公立学校でアイヌ語を教えることは考えていないのか。ユネスコ絶滅危機8つ、八重山、与那国も危惧されている。151で国が人権侵害被害者にサポートするとあるが、162では人種差別を受けた被害者に挙証責任があるとしている。これでは政府からの支援を受けることが出来ない。人種差別が人権侵害であると認識していないのか。
フアン委員(再び発言)――慰安婦、性奴隷は強制連行され、残虐な行為をうけた。人権侵害であり、人種差別である。生存者が謝罪と賠償を求めるのは当然である。多くの犠牲者が死ぬ前に希望をかなえたいと述べている。総理、大阪市長、閣僚その他が慰安婦の必要性、正当性を主張している。軍国主義の性奴隷を隠蔽するものである。国連人権高等弁務官が声明を出した。「基本的人権が計画的に侵害されている。政府に効果的な解決策をとるように、勇気ある女性が闘っているが、権利を回復することなく次々に亡くなっている。日本は包括的で公平で恒久的な解決策を提供してない。生存者の人権の侵害であり、正義に対する権利がある」と。誠実な謝罪、歴史に直面することが重要である。日本政府は2013年、社会権規約委員会の最終見解に対し、「条約機関の最終見解には拘束力がないから実施する義務はない」と言う決定をしたという。これには驚いた。条約締約国が条約加盟の後にこうした行為をすることは責任ある行為とは言えない。このような態度が今後広がる懸念があり、CERD勧告に対する無視が今後も続くのではないか。
KONO大使――最後に一言。
山中課長――個人通報制度を受諾しないことについて簡単な説明など。

以上で、8月20日午後、1日目の審査が終わった。

人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(3)審査1日目・前半

*下記は現場でのメモと記憶による報告であり、正確さの保証はありません。論文や報道などに引用することはできません。CERDの雰囲気をごくごくおおまかに伝えるものとしてご了解ください。残念ながら意味不明の部分もあります。
*CERDを傍聴された方、下記に間違いや不適切な個所がありましたらご指摘願います。

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8月20日午後3時~6時、ジュネーヴのレマン湖のほとりにあるパレ・ウィルソン大会議室でCERDによる日本政府報告書審査が行われた。正面壇上に議長と、日本政府代表が並ぶ。会議室中央部の席に18人の委員と、事務局、その間に残りの日本政府代表たちが座る。名簿によると今回東京から30人近くがやって来て、在ジュネーヴ日本政府代表部メンバーとともに、審査に臨んでいる。担当は外務省人権人道課だが、法務省、警察庁、文科省、厚生労働省など関係省庁の代表が来ている。
(渡航費・宿泊費を含めて膨大な税金が使われている。税金の無駄使いだが、若い官僚が経験を積むのは必要なことでもある。問題は、人種差別撤廃条約に従って差別をなくすために仕事をしているのか、それとも差別を温存しながらごまかす仕事をしているのか、である。)
最初に日本政府のプレゼンテーション。無知で傲慢な上田人権人道大使がクビになったので、今回の代表はKONOジュネーヴ常駐大使。
KONO大使――第1にアイヌ政策、第2に難民条約の履行についての手続きを説明し、ミャンマー難民受け入れは国際社会の高い評価を受けていると述べた。さらに、自分の人権だけでなく他人の人権を理解し責任を自覚して相互に尊重し合うという考えのもと人権教育・啓発を重視していると述べ、人権教育啓発促進法と基本計画を説明した。法務省には外国人のための人権相談もあり、人権侵害は速やかに調査していると述べた。東京オリンピックにも言及、オリンピック憲章も引用して差別に反対する姿勢を示した。
以下、CERDから事前に出された質問(リスト・オブ・イッシュー)に即して答えた。1aの国内人権機関について。日本国憲法14条の法の下の平等の規定があり、関係法によって雇用、教育、教育、医療について差別を禁止している。差別行為がなされれば民法の不法行為に当たり、人種差別煽動は一定の場合には名誉毀損にあたる。日本は法の下の平等を最大限尊重している。新たな人権委員会設置法案は国会に提出されたが、廃案となった。人権救済制度の在り方には適切に検討している。
1bのヘイト行為を禁止する法制定について。差別行為は不法行為になり、損害賠償責任の根拠となり、一定の場合には名誉毀損となる。他方、表現の自由を慎重に検討しなければならないと考えている。差別意識を生じさせることに繋がる言動には中止させたり、啓発活動を行っている。インターネット上の権利侵害については、人権侵害情報を削除した場合、プロバイダーが責任を問われないようプロバイダー責任制限法がある。
1cの思想の流布宣伝、ヘイト・スピーチについて、京都朝鮮学校事件で本年7月8日に大阪高裁判決が出た。事案は朝鮮学校に対して侮蔑的活動、差別的行為が行われたもので、一審(京都地裁)は授業妨害行為と名誉毀損を認定して、原告(被害者)による損害賠償請求を一部認容し、差し止め請求も認めた。控訴審(大阪高裁)は一審を支持して控訴棄却したが、本件は最高裁に係属中と聞いている。本件は、刑事事件でも威力業務妨害罪、器物損壊罪、侮辱罪などで起訴するなど厳正な処分をしている。救済へのアクセスについては、司法支援センターがつくられ順調に業務を行い、無料相談は累計240万件に達している。
1dの公務職員研修については、教師、裁判官、検察官、入国管理局職員、その他公務員に人権教育研修を行っている。文科省は学校における人権教育の総合的取り組み、人権教育研究推進事業、指導主事研修を行っている。他方、放送法によると、放送事業者は番組の適正化のため審議機関を設置している。審議機関の意見を尊重し、差別煽動、助長によって風俗を害する内容についての是正を行っている。また、学識経験者、メディア関係者などを招いて、フォーラムを2009年から1年間開催した。さらに、放送倫理番組向上のためBPOがある。
部落については、人種差別の定義に照らすと、その趣旨、目的から言って、社会的出身に基づく差別が人種差別に当たらないことは国際的に一般的に認められている。委員会は日本政府と異なる見解を持っている。(*部落は条約適用外なので本来答える必要はないが)日本政府は誠実に対応する姿勢なので、お答えすると、部落関係では、雇用主に公正な採用の指導・啓発を行い、公的住宅の入居について募集、資格、手続きは公正に行うこととし、社会教育施設において差別に関する人権教育も行っている。同和について、偏見、差別をなくすよう、一年を通して啓発活動をしている。
2bの琉球沖縄について、日本政府としてはアイヌ以外に先住民族は存在せず、沖縄は対象とならないと考えている。(*琉球沖縄は先住民族ではないので本来答える必要はないが)、誠実に対応する観点から回答すると、沖縄出身者は法の下に平等であり、権利は保護され、昭和47年の日本復帰以来、沖縄振興開発特別措置法がつくられ、さまざまな施策がとられてきたので、格差は縮小し、産業が発展してきた。また計画の策定主体が国から県へ移行することによって、沖縄主導で計画を作ることが出来るようになった。
2cのアイヌ民族について、2009年年の有識者懇談会報告書をふまえつつ、教育啓発を行い、国民の理解を深めている。アイヌ民族の象徴的空間についての取り組みも進めている。研究、文化振興、産業振興、生活向上を目指し、差別解消、理解促進普及のため、国は北海道の施策を支援している。道外の実態把握にも取り組んでいる。電話相談も行っている。アイヌ民族の歴史と文化にいついて国民の理解の促進するため、イベントによる普及啓発も続けている。民族の共生の象徴となる空間も重要である。アイヌ民族の子弟の教育支援のため、奨学金事業にも政府が支援している。
3aの移住者について、日本国籍を持たないものについての人権尊重は、各省庁が責任を以て実施しいている。法務省は人権尊重を年間強調事項の一つにして、職業紹介、指導における差別扱いの禁止をしている。文科省は教育、後期中等教育段階について、各種学校に通う外国人にも就学支援金を支給している。13年、各種学校は129であり、朝鮮71、韓国1、中華5である。ホテルは旅行業法上差別を禁止しているし、国際観光ホテル整備法もある。人身取引は重大な犯罪であり、人権侵害である。2009年から対策として、被害者の地位に着眼し、2011年には被害者保護措置申し合せ、関係省庁連絡会議を定期的に開催、政府一体となって撲滅を目指し、被害者保護を図っている。
3bの難民について、難民認定申請があれば、仮滞在の許可をしている。認定手続きの間、退去強制自由にあたる場合であっても仮滞在とし、収容を解くことにした。処遇に関する意見を被収容者本人から聴取する。不服がある時は不服申し立てを認める。所長等に調査、結果通知を義務付けている。退去強制手続きにおいて物理的抵抗をした場合、身体の安全を配慮しつつ、必要最小限度の実力行使を行うこととし、そのための心構え、安全確実な護送、送還の内部手続きを周知させるとともに、実技訓練を実施し、過度な実力行使を防止する措置をとっている。
以上が、大使のプレゼンテーション。その内容は文書で提出しているという。
次に日本政府報告書担当のケマル委員が全体に関する分析。
ケマル委員――2010年にソンベリ委員が指摘したとおり、日本国憲法14条に差別禁止規定があるが、条約(ICERD)にある禁止自由をカバーしていない。反差別法をICERD2条~6条にあうように、包括的な形で定める必要がある。
日本政府報告書にはわれわれCERの2010年勧告に対応する情報が入っていない。勧告12,20,21を除いて、入いっていないのは、なぜか。具体的な要請をしたのだが。報告書の中で実質的なことに対応しているかもしれないが、他の締約国の報告書のような形で韓国に対する応答が入っていないのはなぜか。また、日本政府報告書は「前回の報告書参照」という言葉をひじょうに多様している。簡単でも良いので、どういう内容かを書いたほうがわかりやすい。政府報告書は40ページを超えないようにという要請があるが、日本政府報告書は31頁だから少し加筆しても超えない。市民社会との協議を行ったこと、アイヌ先住民族、琉球の生活向上措置にも言及。
次に懸念すべき点である。2010年CERD勧告があったが、部落民に十分な言及がない。条約第1条にいう「世系」について、2010年上田大使が言及したが、今回は言及がない。30年特別措置法があったので、生活水準改善は評価できる。しかし、意識に格差があり、社会的面で差別がある。就職雇用にも差別があるので、最新の情報を知りたい。
パラ9で日本政府は、反差別法が不要と述べている、CERDは差別禁止法の立法を勧めている。
勧告11について、一般的なデータしかないので、マイノリティのデータを別にして出してほしい。報告書には全体のデータしかないので、マイノリティの状況が分かるデータがほしい。
パリ原則にのっとった人権擁護法と苦情処理手続きについて、日本政府に法制定の意思があるのは承知しているが、ほとんど歩みが見られない。他の条約に基づく委員会も日本政府が適切な立法措置を取るよう求めている。
勧告13のICERD4条(a)(b)の留保について、留保を撤回するべきである。政府報告書84,84があるが、懸念を表明したい。特定のグループ、例えば朝鮮学校の子どもを標的とした差別発言や、部落差別が続いている。ヘイト・スピーチには絶対的な定義がないからと言って、マイノリティに対するヘイト・スピーチが良いということにはならない。13年には360件の差別デモがあったと言う情報がある。日本政府は具体的にどのような措置をとったのか。ヘイト・スピーチをおさえるのにどのように措置をとっているのか。朝鮮学校に対するデモについて判決があるというが、もっと詳しい状況を負知りたい。
勧告14について、人権教育をしているのは承知しているが、これまでと同様、公人による差別発言が繰り返されている。これに対して、どのような対応がとられたのか、具体例を知りたい。最近の措置が取られたのではないか。日本社会はコンセンサスを重視し、対決的ではないと言うが、積極的な対応が必要である。マイノリティ、弱者が日本の文化にあわないと言う指摘があるが。また、ヘイトは日本の歴史においては事例がかつてはあったので、朝鮮学校へのデモに厳格な措置が取られる必要があるのではないか。
勧告15について、家庭裁判所調停員になれないことは、見直して参加できるようにできるのではないか。懸念している。いいニュースを期待したい。
勧告16について、帰化を求めるもののアイデンティティを尊重し、氏名に漢字使用の強制を控えることが望ましいが、コメントはあるか。報告書に書かれていない。
勧告17の二重の差別に関する措置を知りたい。マイノリティ女性、子どもには二重の困難、二重の差別があり、女性差別撤廃委員会や自由権規約委員会からも勧告が出ている。
勧告18の戸籍制度であるが、法改正後も、個人情報の誤用がある。部落をはじめとするマイノリティにつき、今でも情報を取ることが可能で、不当な情報収集がなされている。乱用を防ぐためどういう措置を取ったのか。
勧告19の部落差別について、2000年の同和特別法終了後、どうなっているか。明確な部落民概念を、どのようにしているか。
勧告20のアイヌ、先住民族権利宣言について、その後、進捗が見られない。アイヌ代表と協議が必要だ。調査、ILO条約169号批准も。報告書7,8,9があるが、依然として格差が残っている。ILO条約169について受け容れることが出来ない、としている。日本政府は琉球は先住民でないと言う立場だが、琉球の人はみずからをどう考えているのか。自らをどう定義しているのか、さらに検討が必要である。琉球代表との意見交換をするべきだ。軍事基地、米軍基地問題については、(CERDとしては)関与したくない問題であるが、しかし、土地の利用に関わる問題がある。事前協議が重要であり、勧告21にもかかわる。
勧告22の、マイノリティ教育について、アイヌ、その他の人々の言語を使用する権利がある日本政府報告書124-130に、外国人の子どもが出ているが、日本学校での教育である。朝鮮語、朝鮮文化を学ぶ環境はあるか。朝鮮人コミュニティは、政府から資金援助を受けられない。
勧告23の難民について、ある分野で進展があったが、庇護希望者のリスクの度合いがそれぞれ違う。無国籍者を送還しない措置も必要ではないか。
勧告24だが、センシティヴな問題である。日本と日本人以外の差別のないことに関して、レストラン、浴場などの入場が、自由権規約委員会によると日本では平等に処遇されていない。公共施設を日本人しか利用できない。こうした差別的慣習を禁止する必要がある。
勧告25の教科書だが、マイノリティの歴史と言語、アイヌ、琉球の言葉を教えることは、政府報告172にかかわる。
勧告26の人権相談所だが、啓発活動、メディアの役割が重要である。日本は、ICERD7条を履行することに近づいているが、差別はなくなっていないので、努力継続が必要である。
勧告27だが、移住労働者権利保護条約、雇用に関するILO条約、無国籍条約、ジェノサイド条約の批准の検討を要請した。これに対する回答がない。どういう対策が取られているのか。また、搾取を目的とする実務訓練生、技能研修の悪用、安価な未熟練工を強いられている。長時間勤務と差別があるので、技能研修は廃止したほうがいいのではないか。日本は人口が減っているので、技能研修よりも、移住者を入れる必要があるのではないか。

以上は8月20日午後の審議の前半。

人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(2)NGOブリーフィング

8月20日昼休み、パレ・ウィルソン(国連人権高等弁務官事務所)会議室において、日本関連のNGOのネットワークである人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)主催で、人種差別撤廃委員会CERD委員に対するブリーフィングを開催した。10日の事前ミーティングはCERDが主催したもので、非公式会合とはいえ正規の会場で行われた。20日のブリーフィングはNGO側の主催で、隣の小会議室で行われた。
開始時は8人だったが、遅れて参加した委員も含めて結局18人の委員のうち12人が参加。NGO側は20数名。日本の記者も含めて30人ほど。
NGO側から、移住労働者、外国人女性、在日朝鮮人、沖縄、アイヌ民族などの人権状況について補足説明を行った。
有田芳生(参議院議員)は、朝にジュネーヴに着いたばかりだが、日本におけるヘイト・スピーチについて、日本政府の無策と、議員による努力の経過を説明した。
糸数慶子(参議院議員)は、沖縄差別を報告した。もともと琉球王国だったのに近代に日本に侵略され、日本の一部とされた上、小さな島に米軍基地を押し付けられ、米軍兵士に要る性暴力が絶えないと訴えた。
北海道アイヌ協会は、日本政府がアイヌ民族を先住民族と認めたものの、十分な施策を講じていないので、先住民族権利宣言、CERD一般的勧告23、ILO条約を履行するよう訴えた。
なお、前回2010年のCERDの様子については下記を参照。その前の2001年の記録も下記に掲載。

上記に出て来る上田大使は、昨年5月の拷問禁止委員会で「シャラップ!」と怒鳴って顰蹙を買い、クビになった上田人権人道大使である。

Monday, August 18, 2014

人種差別撤廃委員会・日本政府報告書審査(1)事前ミーティング

8月20・21日、ジュネーヴのパレ・ウィルソン(国連人権高等弁務官事務所)で開催されている人種差別撤廃委員会CERDが、日本政府報告書の審査を行う。2001年、2010年に続く3回目の審査である。日本政府報告書の名称は第7・8・9回報告書となっているが、実際の審査はまとめて行われるため、今回が3回目である。2001年にも2010年にも参加したので、私も今回が3回目。                 
8月18日午前、CERD主催のNGOとの非公式ミーティングが行われた。今週審査を受けるイラク、カメルーン、日本関連のNGOからの情報提供の場である。非公式と言っても、公式会場と同じ会議室にCERD委員が列席し、公開で開催され、NGOが各国の差別実態や政府による条約履行状況について報告する。イラクについては2つのNGO、カメルーンについては1つのNGO。日本関連は「人種差別撤廃NGOネットワーク」に集う諸団体や、日弁連の弁護士たちが多数参加した。正確には数えなかったが18人ほどいた。他に日本政府の外交官が傍聴していた。                      
各NGOは共同して、あるいはそれぞれの報告書を事前にCERDに提出しているが、今回は特に強調したい部分を述べた。多数のNGOが順次、それぞれ2~4分程度で報告した。人種差別撤廃NGOネットワークERDnet、反差別国際運動IMADR、在日本朝鮮人人権協会HURAK、部落解放同盟BLL、日弁連、在日コリアン弁護士協会LAZAK、外交人人権法連絡会、市民外交センター、移住連/ヒューライツ大阪、在日本大韓民国民団、ムスリム弁護団など、13人が発言した。                            
委員からも多数の質問が出た。マルティネス、カラフ、バスケス、ケマル、クリックリー、ユエンなど。NGOは日本政府がCERD勧告を何も実行していないと言うが、前回アイヌに関して日本政府が報告したのではなかったか。ヘイト・スピーチがひどいようだが、標的とされている被害集団は誰か。日本政府は条約4条を留保しているが、留保している国でも一定の措置を講じているが、日本ではどうか。司法において、ヘイト・スピーチ規制と表現の自由の区別が明確にされているのか。ムスリムに対する警察監視の結果、データは具体的にどう使われたか。部落とは何か、同和との関連、等々。各NGOが手分けして回答。回答できなかったものは、20日の昼のブリーフィングの際に回答することになった。                                       

17日、18日とジュネーヴは快晴続き。先週後半は雨天・曇天が続いたが、今日は見事な青空で爽やか。パレ・ウィルソンの窓からレマン湖がキラキラ輝いて見えた。好天が続くと良いが。

Sunday, August 17, 2014

国連人権理事会諮問委員会13会期終了

8月15日、諮問委員会が終了した。このところのテーマは、スポーツとオリンピック憲章による人権促進、腐敗が人権に与える影響、災害後・紛争後の人権、強制措置が人権に与える影響、アルビニズムの人の人権など。14日の午後に、今後の議題をどうするかの論議があった。国際人権活動日本委員会(前田弓恵)は、難民、国内避難民などを含め、フクシマの状況も踏まえて「故郷に帰る権利」の提案をした。NGOからの提案はこれ一つのみ。委員からは、世界人権裁判所や、植民地主義を取り上げたいという発言があった。しかし、次の議題という前に、諮問委員会の危機的状況をどうするかの議論が先だ。                    
14日午後、議長から、これまでに審議した事項のその後に関する報告があり、平和への権利国連宣言草案とその報告書について、6月の人権理事会作業部会で議論され、そこに諮問委員会の議論が反映されたと報告された。ある委員から、作業部会の結果は、前の諮問委員会の草案とは全く違うものになっているので、反映されたとは言えない、との指摘があった。その通りだ。骨抜きにされたのだから。しかし、議長としてはせめて「反映」と言いたかったのだろう。                            
国連人権委員会とその人権小委員会の時代と違って、現在の国連人権理事会と諮問委員会の関係は、まさに「諮問」であり、諮問されたテーマに答えればよいだけの委員会となった。日程は4週間から2週間になり、予算も権限も縮小された。自分ではテーマを決めることが出来ない。おまけに報告書を提出してもたなざらしにされる。職業と身分による差別に関する報告書はたなざらし、平和への権利報告書はいちおう是認されたが、宣言草案は骨抜きにされた。諮問委員会の任務はいったい何なのか、誰もが疑問に思う。                        
このためNGOの参加が激減した。13会期の最終日を除く4日間でNGOの発言は10回。そのうち3回は国際人権活動日本委員会である。傍聴しているNGOメンバーは10~20名だ。人権小委員会時代は100を超えるNGOが押し寄せ、発言のチャンスを競い合い、委員会に提言を繰り返した。今はどんどんNGOが減ってきている。諮問委員会の権限が縮小され、テーマが限られているのだからやむを得ない。                   
欧米の有力NGOは諮問委員会には全く来なくなった。ジュネーヴに常駐メンバーがいても、諮問委員会に顔を出さない。それよりも、上の人権理事会の特別報告者に、自分たちのメンバーや推薦する研究者を押し込むことに力を入れている。その方がはるかに効果的だからだ。人権理事会主催のワークショップで発言したほうが意味がある。だから諮問委員会には来ない。                                 
この状況が続くと、諮問委員会の存在自体が無意味になりかねない。そのため14日に若干の議論がなされた。しかし、解決案は出ない。諮問委員会がNGOをもっと活用できるようにするべきだと言う提案があり、これに対して、日本政府推薦の委員は、諮問委員会が活用するのではなく、委員が個別に自己責任でNGOと協力すればよい。そうでないと、諮問委員会に参加できるジュネーヴ在住など一部のNGOに偏ることになりかねない。委員は世界各地にいるのだから、それぞれの領域でNGOとアクセスすれば、ジュネーヴに来れるNGOだけに偏ることはない、という頓珍漢な発言をしていた。                            
人権小委員会時代のことを知らないから、現状を前に小手先の議論しかしない。世界のNGOが来ないのは、遠くて航空券が高いからではない。諮問委員会に期待できないから、来ないのだ。現にジュネーヴ在住の多くのNGOが諮問委員会13会期に一度も顔を出していない。                                       
人権理事会と諮問委員会の関係を仕切り直ししないと、諮問委員会の存在意義がなくなる。また、人権理事会の特別報告者と諮問委員会の協力関係を構築するとか、人権条約に基づいて設置されている人権条約委員会と諮問委員会の連携を図るなど、できることはあるはずだ。ともあれ13会期は終了した。                                     

18日から、人種差別撤廃委員会CERDの2週目が始まる。審査を受ける政府報告書はカメルーン、イラク、日本、エルサルバドルなど。18日午前に、CERD主催で、委員会とNGOのミーティングが開かれる。このためすでに多数の日本関連NGOがジュネーヴに来ているはずだ。日本政府報告書審査は20日の午後と21日の午前の予定である。


大事なことを書き忘れたので追加。諮問委員会では「論争」がない。人権小委員会の時代には、委員同士の論争が盛んだった。委員と政府代表の間でも、政府同士の間でも、NGOと政府の間でも「論争」があった。論争すればいいと言うものではないが、論争なき仲良しクラブになってはいけない。

Saturday, August 16, 2014

大江健三郎を読み直す(26)記念碑、転換点、そして

大江健三郎『個人的な体験』(新潮社、1964年[新潮文庫、1981年])                 
文壇デヴュー後、60年安保に際して若者代表の役割を負わされ、文学的には試行錯誤を続けた大江は、「セヴンティーン」事件もあって困難な時期を過ごした上、1963年に長男が重い障害を持って生まれるという、個人としても人生の最初の岐路に立たされた。苦境が作家を変えたと言ってしまえば簡単だが、文字通り逆境を乗り越えることによって大江は現代文学の最前線に躍り出て、疾走することになった。その記念碑的作品として本書は今も大江初期の最重要作品である。                                   
1970年代中葉、学生時代に本書を手にしたとき、大江の長男のことを漠然としか知らなかった。どうやら著者自身と子どもがモチーフになっているらしいとは気づいていたものの、それ以上の知識を持たないまま読んだので、どこまでが現実に基づき、どこからが想像、創作なのかといったことに気を取られて読んでいたように思う。そうした読み方が良くないとは思わないが、作品の主題よりも、一つひとつのエピソードに囚われてしまっただろう。また、性愛に目覚めた年代で本書を読むと、不安や恐怖に襲われるが、鳥(バード)や火見子の行動様式には釈然としない思いに駆られもした。大江は、不安や恐怖や絶望を鳥と火見子の行動を通じて描き出しているのに、わかっていながら釈然としないのも事実であった。                                  
文庫に寄せた文章で大江は次のように述べている。「頭部に異常のある新生児として生まれてきた息子に触発されて、僕はこの『個人的な体験』にはじまり。いくつもの作品を書いてきた。それらはすべて、出発点をなした長編とおなじく、現実生活での経験にぴったりかさなっているというのではなく、しかしやはりその自分としての経験に、深いところで根を達しているものであった。それらの作品のいちいちについて、表現されている知恵遅れの子供と父親との関係の差違を見れば、ひとつの作品ごとの、小説の方法についての僕の戦略があきらかであろう。それは文体の選び方ということへも、直接力を及ぼしたのであった。」                                            

本作に始まり、『空の怪物アグイー』『万延元年のフットボール』『洪水はわが魂に及び』『ピンチランナー調書』へと展開していく大江世界の変遷、変容を確認していく必要があるだろう。