Sunday, March 23, 2014

町のつくり直しコミュニティデザイン

山崎亮『コミュニティデザインの時代』(中公新書)                                                                                                          いま「自分たちで『まち』をつくる」というサブタイトルの本がなぜ出ているのか、一体何だろうと思ったが、孤立死、無縁社会の現在、コミュニティをいかにして取り戻すのかを問いかける本だ。設計、建築、都市プランナーの世界に生きてきた著者(京都造形芸術大学教授))が、いまはデザインしないデザイン」を唱え、建物や広場をつくることではなく、人々のつながりをいかに恢復するかに力を注ぐ。有馬富士公園、鹿児島のマルヤガーデンズ、宮崎の延岡駅周辺整備、大阪の近鉄百貨店新本店、姫路のいえしまプロジェクト、島根の海士町プロジェクトなどの実例を紹介しながら、まちづくりワークショップ、市民参加型パークマネジメントの手法を解説する。面白い本だ。                                                                                                                     冒頭の「人口減少先進地」には驚きとともに納得させられた。著者は「人口増減についての空想」として、地方都市で人口減少を嘆く声に対して、急速に人口が減少していると言うが、江戸時代から長い目で見れば、近代日本において急速に増加して、いま元に戻っていると見ることができると言う。日本の総人口は長い間3000~4000万人だったのだから。日本の適正人口は3500万ではないかという「暴論」をさりげなく提示する。視点を変えるということはこういうことだ。                                                                                                      そして著者は「人口減少先進地」という。日本はこれからどんどん人口が減っていくのだから、いますでに減っているところでどのように町づくりができるのか。それが30年後、50年後に他の町の参考になる。人口減少先進地とは例えば秋田県、山形県、和歌山県、島根県、山口県、長崎県である。東京や横浜は後進地だ。「過疎」などと悩まずに「適疎」を目指すという。そのためのプロジェクトを中山間離島地域で試みる。その実践が豊富に紹介されている。