Tuesday, March 04, 2014

シオン美術館散歩

ヴァレー州都のシオン美術館は2度目だった。すっかりわすれていたが、入り口に立つと思いだした。1度目は1997年頃だった。駅からメインストリートを歩いて魔女の塔に出て、次にカテドラルと市役所を見てから、細い路地を通り抜けると美術館だ。その先の坂道を登って丘の上に出る。右の丘の上にヴェレール教会があり、左の丘の上に城址がある。双こぶラクダの丘で知られる町だ。同じ道を歩いて美術館を訪れた。                                                                               美術館は2つの館から成る。1つ目の館にはヴァレー州ゆかりの画家や作品が展示されている。フュスリ、カスパー・ヴォルフ、ディデー、ラファエル・リッツ、エルンスト・ビエラー、エデュアルド・ヴァレーなどの、ヴァレーの景色、特に渓谷や、エレマンスの人々の姿を描いた作品が並ぶ。地元の現代的な画家の作品も展示されているが、これは前回とはかなり入れ替わっていた。ギュスタフ・セルッティという画家の「セロニアス・モンクのために」「ジョン・コルトレーンのために」「オーネット・コールマンのために」が3点掲げられていた。他にもビリー・ホリデー、チャールズ・ミンガスなどがあると言う。何だろう、という感じ。                                                                                                                良かったのは地元出身の女性画家マルゲリーテ・ブルナプロヴァンス(1872~1952年)に出会えたことだ。展示は1点、帽子をかぶった若い女性だが、カタログにはもう1点、自画像が掲載されている。英語カタログがなかったのでやむを得ずドイツ語版を買った。                                                                                                                          2つ目の館では、JocJonJoschのHand in Foot展だった。Jocelyn Marchington(イギリス)、Jonathan Brantschen(スイス)、Joschi Herczeg(スロヴァキア・スイス)の3人の共同制作。シオン・マノル賞を受賞した記念の展示だ。シオン・マノル賞はスイスでは知られた現代アートの賞だと言う。作品は写真と映像を使ったもので、どちらも言ってみれば一発芸モノだ。一番わかりやすいのは、ロンドンの墓地に行って、ギリシャ彫刻が飾られているところで、彫刻(全裸の青年像)と同じポーズをとるシーンの映像。もう一つ、この3人が全裸で抱き合っている映像で、顔は見えず姿のみだが、地面に足がついているのは一人だけで、バランスをうまくとって静止して立っている。3つのポーズで抱き合っている映像が壁3面に映写されている。なかなか笑えたが、後から入ってきた婦人は少し見ただけでかすれた悲鳴のような声をあげて出て行った。いったい何だろうと思ったが、すぐにわかった。全裸の若者3人がしっかり抱き合っているシーンだけに“正しい誤解”をしたのだろう。どれもおもしろかったが、やはり一発芸だ。まあ、現代アートは一発芸のアイデアと実行力で、笑わせれば勝ち、あるいは怒らせれば勝ち、だ。