Friday, May 02, 2014

朝日新聞は護憲とヘイト・スピーチを同列に並べるのか

『朝日新聞』5月2日朝刊の「排除の理由5 言論 すくむ自治体」は、前半で、長野県千曲市が9条の会の講演会の後援を拒否したことから始めている。行政の「中立性」を理由とする拒否である。さらに、千葉県白井市も「政治的色彩」を理由に拒否したという。                                同記事の後半は、山形県生涯学習センターが「在日特権を許さない市民の会」の講演会の利用申し込みを断ったこと、豊島区の豊島公会堂が在特会の集会利用を許可したことを紹介している。                                        護憲運動とヘイト・スピーチ常習の在特会を同列に並べて、「排除の理由」とし、「言論 すくむ自治体」としている。                                   第1に、記事は憲法99条に言及しない。憲法99条は公務員には憲法尊重擁護義務があると明示している。もっとも重要な判断基準を示さずに、読者に判断をゆだねるのは適切とはいいがたい。記事は「中立性」や「色彩」にカッコを付すことで、行政の判断とは距離を置いているが、明確な批判はしない。                                                         第2に、記事は人種差別撤廃条約に言及しない。日本政府が批准した人種差別撤廃条約は、2条で政府が人種差別を撤廃するために立法、行政、司法のレベルで努力することを明示している。日本政府(自治体も含まれる)には人種差別を撤廃するために施策を講じること、人種差別に協力しないことが求められる。公共施設をヘイト団体に利用させることは、自治体が人種差別を後援するに等しいことである。そのことを示さずに、読者に判断をゆだねている。この点について詳しくは、                                                    ヘイト・スピーチ集団に公共施設を利用させてはならない3つの理由                                                              http://maeda-akira.blogspot.jp/2013/06/blog-post_6044.html                                                              第3に、記事は「排除の理由 言論 すくむ自治体」とすることによって、ヘイト・スピーチに「言論」というお墨付きを与える。EU加盟国はすべてヘイト・スピーチを犯罪とし、ヘイト団体への参加も犯罪としている。世界193カ国のうち少なくとも100か国でヘイト・スピーチは犯罪とされている。記事はそのことに触れずに、あたかも「言論」であるかのごとく示す。                                                                                      記事の筆者にそのつもりがあるわけではないかもしれないが、かくして、記事は護憲運動とヘイト団体を同列に置き、ヘイト団体とその活動を支援する結果となっている。残念な記事だ。                                                                    4月28日に始まった連載「排除の理由」は、あちこちに不満がないわけではないものの、日本の現状を伝える記事として、それなりに良くできた連載であるが、5月2日の記事には首を捻るしかない。