Monday, August 14, 2017

リヒテンシュタイン美術館散歩

週末はリヒテンシュタインに行ってきた。
スイスの東側、オーストリアとの間にある小さな国だ。5度目か6度目になる。スイス鉄道でザルガンスに出て、そこからバスだ。
首都のファドーツにつくと、メインストリートを歩く。車が通らない道で、観光客が多数お散歩している。政府、美術館、ホテル、レストラン、土産物屋が並ぶ。ぐるりと周って、書店に入った。第1のお目当てが、ここだ。ずっと以前に来た時に、リヒテンシュタインにおける小国研究の本を買ったが、その後の転居の際に不要な本を大量処分したため、一緒に処分してしまった。しかし、小国研究はやはり必要なので、今回2冊入手してきた。過去の本の入手方法も調べてきた。
リヒテンシュタイン侯爵(つまり王様)のハンス・アーダム2世が執筆した『三千年紀の国家』(郁文堂)はもとはドイツ語だが、英語版からの和訳が出ている。なかなか理論水準の高い本だ。
エミリア・ブロイス『欧州統合における小国の将来』(リヒテンシュタイン科学協会)は本格的な研究書だ。
美術館は、ファドゥーツの真ん中にある。
リヒテンシュタイン家は、リヒテンシュタインと言う国家とは別の一族の財産で美術品を収集してきた。主な美術品はウィーンのリヒテンシュタイン美術館にある。2012年に東京の国立新美術館で開催されたリヒテンシュタイン美術展はウィーンの美術館の所蔵品(中世から近代)だ。
ウィーンとは別に、ファドゥーツにもリヒテンシュタイン美術館があり、近現代美術を所蔵している。2000年にできたので、何度か訪れた。
2015年、隣にヒルティ美術財団の美術館ができて、地下でつながっている。今回はじめて見た。リヒテンシュタイン美術館側では、2つの展示だった。ヒルティ美術館側ではキルヒナーやスカリーの展示だった。
1つは、GORGORAいう美術集団だ。1959年にザグレブで、4人の画家、1人の彫刻家、他に美術史家など数人で立ち上げたグループだそうだ。60年代ザグレブで中心的役割を果たした現代アートのようだ。「スターリニズムに反対し、表現の自由を求めた」と書いてあった。もっとも、作品を見てもぱっとしなかった。絵画はよくある抽象画と言っては申し訳ないが。彫刻もいろいろ工夫していたのはわかるが、美術史に残るようなものではないだろう。解説によると、「GORGORAとして独自の思想をつくったわけではないので、グループ解散後、話題にならなくなった」と言う。
もう1つは、地元リヒテンシュタイン出身の「アンネ・マリー・イェーレ1937-2000――生誕80周年」展。フェルトキルヒ生まれの女性で、1965年から美術製作に打ち込み、1989年までフェルトキルヒに住んだという。60年代後半にフルクサスと連絡を取り、パリ、バーゼル、ベルン、ザンクトガレン、ローザンヌ、ウィーン、モンテビデオ、サンティアゴ、ベルリン、デュッセルドルフで個展。89~93年はアメリカに滞在したが、その後リヒテンシュタインに戻った。作品は実に多様と言うか、何でもやったようだ。油彩、水彩、写真、漫画があり、モナ・リザのパロディをたくさん。また、生活用品を利用した展示が多く、買い物袋、今のソファ、壁掛け、鉄製のエプロン、洗面所など、手を変え品を変え。洗面所は、文字通り、よくある洗面所の白い陶器が壁に設置されている。デュシャンへのメッセージか。いま見ても、意味がよくわからない。
3つ目はヒルティ美術館側でキルヒナー、スカリー展。ヒルティ美術財団が所有している作品だ。キルヒナー、ベックマン、スカリーが数点。他にジャコメティ、ピカソ、クレーなどが2~3点。ハンス・アープ、ボテロ、ホドラー、レジェも。めぼしいものの絵葉書を買ってきた。授業で使えるほどではなさそう。
美術館入口のカフェ&レストランは日本人シェフ。前に食べたが、お寿司はちゃんとしたお寿司だ。山の中でこれだけの寿司を出すのは大変だ。今回はコーヒーを飲んだだけ。