Friday, August 04, 2017

ヘイト・クライム禁止法(129)ジブチ

ジブチ政府が人種差別撤廃委員会93会期に提出した報告書(CERD/C/DJI/1-2. 12 April 2016)によると、憲法第1条は、言語、出身、人種、ジェンダー又は宗教についてすべての者に区別なく法の下の平等を保障する。憲法第3条第1項は、言語、人種、ジェンダー又は宗教の区別なく市民を認知する、としている。
1995年の刑法第390条は、差別を次のように定義する。「差別とは、自然人に関して、出身、ジェンダー、家族状況、健康状態、障害、モラル、政治的意見、労働組合活動、若しくは、特定の民族集団、国籍、人種、又は宗教の構成員であること乃至そう考えられたことに基づいて行われる区別と定義される。」この定義は人種差別撤廃条約第1条の定義とほぼ同じである。刑法ぢ390条の定義する差別行為を行った場合、2年以下の刑事施設収容又は50万Fdjの罰金を科す。公務員が行った場合は3年以下の刑事施設収容又は100万Fdjの罰金である。
2014年のサイバー犯罪法は、「人種主義及び排外主義」とは「その人種、皮膚の色、祖先又は国民的民族的又は宗教的背景に基づいて、人又は人の集団に対して、憎悪、差別又は暴力を容認又は助長し、差別の諸形態を導き又は煽動する、文書、映像又は思想や理論の表明」である。
非差別と平等の原則はジブチの全ての法律に一貫している。
政治的レベルでは、宗派主義や人種憎悪を煽動する有害な態度が見られるが、ジブチは憲法でも法律でもこれに対処している。憲法第6条及び1992年の政党法は、特定の人種、民族集団、ジェンダー、宗教、宗派、言語又は地域に特化した政党を、行政罰又は刑罰で禁止している。これに違反した政党は認められない。
1992年のコミュニケーション行為法は「コミュニケーションの自由は人種主義、部族主義又はファナティズムをもたらすメッセージを保護しない」とする。
2014年のサイバー犯罪法は人種主義と排外主義目的で新しい技術を用いる行為について、5年以上10年以下の刑事施設収容としている。
・人種主義的又は排外主義的性質の観念や理論を文書、メッセージ、写真又は図画で制作、ダウンロード又は配布した者
・人種主義的威嚇又は侮辱を行った者
2014年のサイバー犯罪法は、「ジェノサイド又は人道に対する罪に相当する行為を、故意に否定、容認又は正当化した者」を処罰するとしている。
これは「アウシュヴィツの嘘」犯罪の規定である。ドイツ、フランス、スペイン、ポルトガルなど欧州諸国に多い立法例である。イスラエルは「アウシュヴィツの嘘」の独自規定はないが、刑法のヘイト・スピーチ規定で処罰している。アフリカでこうした立法例があることは初めて知った。ジブチには自衛隊が基地を建設するなど、この間、日本のメディアがジブチを取り上げてきたが、ヘイト・スピーチ処罰や「アウシュヴィツの嘘」処罰がなされることを報道しないのはなぜか。