Tuesday, September 28, 2021

真実・正義・補償・再発防止保障に関する特別報告書の紹介(4)

Ⅷ 勧告

 

 サルヴィオリ特別報告者は最後に多くの勧告をまとめている。

 

 各国は、重大人権侵害と国際人道法の重大違反で告発された実行犯を裁判にかけ、適切な場合、問題の行為の重大性に見合った効果的な刑罰を科すべきである。その際、正義や責任へのアクセスの妨げとなくすようにすべきである。

 各国は、刑事法における免責、全体的恩赦や部分的恩赦、猶予、時効の適用、不遡及等々のような、責任追及の法的障害、司法上の障害、又は事実上の障害に頼ることを止めるべきである。

 各国は、刑事処罰から実行犯を守る免除に頼ることを止めるべきである。例えば、適切に服従した、上官の責任、真実を告白して悔恨を示したなどの事由を直ちに免責事由とすること。

 各国は重大人権侵害や国際人道法の重大違反を行った国家元首や公務員のための免責や法的保護につながる障壁を除去するべきである。

 人道に対する罪で有罪とされた者の判決の無効化や減刑(刑期の短縮、釈放条件、早期釈放)は、いかなる場合にも、通常版材で有罪とされた者の場合よりも大きなものとなってはならない。

 人道的理由による赦免は切迫した重病の場合にのみ認められるべきである。

 人道的理由又は健康上の理由による自宅謹慎の利用は、緊急の場合に用いられる一時的措置としてのみ認められるべきである。

 告発された実行犯は、通常の国内法廷、混合法定又はハイブリッド法定、特別の移行期司法で裁判にかけられる。

 軍人、警察官、諜報部員等が人権・人道法の重大侵害で告発されている事案では軍事法廷が認められるべきではない。

 司法手続きはすべての当事者にとって適正手続きの国際法基準を守るべきである。

 裁判の公平性と独立性は、捜査、公判、判決のすべての段階で保障されるべきである。

 各国は、被疑者や有罪判決を言い渡された者を引き渡し、証拠を提供し、証人にビザを出すなど、国際レベルの責任追及に完全に協力するべきである。

 各国は、人権法と人道法に違反した者、その告発を受けている者を、刑事訴追から免れさせるために、難民受け入れをしたり保護してはならない。ノン・ルフールマン原則に従って被疑者の引き渡しをしない場合は、国際基準に従って裁判にかけるべきである。

 被害者は、告発人及び補償請求人として法手続きへの完全な参加を許されるべきである。

 被害者及び家族には事件ごとの事情に応じて精神的及び法的援助が国家によって提供されるべきである。

 侵害が、その者が特定の集団に属しているがゆえに被害者とされた場合、権利に基づいたアプローチを採用し、司法へのアクセスに関する国際基準に応じて補償がなされるべきである。

 効果的に責任を問う司法にアクセスするために、各国は透明な手続きを用意するべきである。

 国際共同体は、移行期の司法手続き中の各国に、重大侵害の責任者の責任を問うため二必要な援助を提供するべきである。

 各国は自国の法的枠組みに普遍的管轄権を採用することを検討するべきである。

 

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 以上、サルヴィオリのごく簡潔な紹介である。

 人道に対する罪やジェノサイドが犯罪として定義されていない国があると指摘されている。名前は出ていないが、日本はその一つである。日本ではジェノサイドも人道に対する罪も犯罪とされていない。

 国際刑事裁判所規程を批准した国は、例えばドイツのように国内法を制定して、国内法化した。国内法を制定しなくても、条約をそのまま国内適用する国もある。

 日本はどちらでもない。国際刑事裁判所規程に加入した時、日本政府はこれを国内法化しないことを決定した。それゆえ、ジェノサイドも人道に対する罪も日本では犯罪ではない。

 もちろん、殺人や傷害はもともと犯罪である。しかし、人道に対する罪としての殺人、殲滅、奴隷化、アパルトヘイト、迫害などが独立の犯罪とされていない。それゆえ、裁判官や検察官への研修・教育もない。自衛官への教育は、戦争犯罪についてはいちおうやっているようである。