Monday, September 26, 2022

講演レジュメ・ヘイト・クライム被害救済のために

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「生きる力、つながる力、考える力」第2

2022年9月27日(火)午後1時~

ステッチ(玉川上水駅)

 

ヘイト・クライム被害救済のために

――安倍晋三国葬の日に民主主義と人権を考える

前田 朗(朝鮮大学校法律学科講師)

1.        安倍国葬の日に

2.        ウトロ等放火事件を手がかりに

3.        ヘイト・クライムとは何か

4.        ヘイト・クライムの予防

5.        ヘイト・クライムの被害救済

6.        民主主義とレイシズム

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1.安倍国葬の日に

 

1)        国葬反対の取り組み

・国葬反対仮処分申請(横浜地裁、さいたま地裁など)

・国葬反対差止訴訟(東京地裁、横浜地裁など)

・地方自治体・住民監査請求(大阪、横浜、長野など)

・地方議会・意見書(鎌倉市、国立市、小金井市など)

・教育委員会へ弔意強制反対(全国的)

・反対声明、反対署名(憲法学者、著名人など)

・各地の抗議集会(全国各地)

2)        何を考えるべきか

・民主主義のあり方

・人権保障のあり方

 

2.ウトロ等放火事件を手がかりに

⇨文献⑨

2021830日 ウトロ放火事件

2022830日 京都地裁判決(有罪・懲役4年)

 

  ・ウトロの歴史          ⇨中村一成『ウトロ』、文献⑥

  ・ウトロに対するヘイト・スピーチ

  ・ウトロに対するヘイト・クライム

  ・ヘイト・スピーチとヘイト・クライム

  ・判決における動機の認定と「差別」           文献②

第1にヘイト動機を列挙する場合

第2に身分犯として公務員犯罪類型が設定される例

第3に場所(空間・対象)の特定

第4に被害者の特定

  ・量刑について                     ⇨文献⑨⑩

 

3.ヘイト・クライムとは何か

⇨文献②

1)        アメリカにおけるヘイト・クライム論(1980年代以後)

・刑罰加重法

・独立犯罪

・公民権法

・情報収集法

2)        保護される集団(属性)

・偏見に基づく暴力を犯罪化する場合:45州とコロンビア特別区

・人種、民族、宗教の集団を保護する場合:大多数の州

・性的指向を保護する場合:32州

・ホームレスを保護するか否か

3)        マシュー・シェパード・ヘイト・クライム法(2009年)

 

 

4)        国際人権法におけるヘイト・クライム法

・人種差別撤廃条約第2条、第4

・人種差別撤廃委員会の一般的勧告

・各国への勧告

・ラバト行動計画

・国際人道法

5)        ヘイト・クライム立法例

・ヘイト・クライムの犯罪成立要件を定める場合

・ヘイト・スピーチに暴力が伴う要件を定める場合

・暴力犯罪にヘイト動機を刑罰加重事由とする場合

・刑法総論で刑罰加重事由にヘイト動機等を含める場合(以上は刑法典)

・ヘイト・クライム法

・反差別法

・過激主義取締法等

6)        アジア系住民へのヘイト・クライム法(2021)      文献④

・新型コロナ禍におけるアジア系住民へのヘイト・クライム

 

4.ヘイト・クライムの予防

 

  ・差別の禁止

  ・ヘイト・スピーチの刑事規制

  ・ヘイト・クライムの重罰化

外国人人権法連絡会の提唱「差別犯罪」(前回報告)

  ・対抗言論

  ・教育・啓発

  ・行政指導

 

5.ヘイト・クライムの被害救済

文献①⑤⑦

  ・被害者中心アプローチ

EU『政策文書:ヘイト・クライム被害者のための専門家支援』

・適切な専門家支援の提供

       偏見動機の犯罪の影響を受けたすべての者に支援を確保する。

         共通の質的基準を確保するため専門家ネットワークを組織する。

         効率的な監視と評価。

         担当者の教育を継続する。

         多様なコミュニティに適切なサービスを提供する保障。

         すべての被害者に専門家支援の平等性。

         専門家協力のためのメカニズム設置。

         コミュニティ代表の参加を得て、政策遂行と同時に評価を行うこと。

  ・ヘイト・クライム被害者のニーズ

         個人の安全(反復被害や二次被害からの安全も含む)

         医療支援、財政支援、転居など実際の援助

         感情的精神的支援

         情報及び助言

         刑事司法制度における援助

         尊重ある取り扱い

  ・専門家による被害者支援の特徴

  ・専門家支援の実例

         国内の犯罪被害補償制度、被害者の刑事手続きにおける役割、法廷への出席等の被害者の権利についての情報、助言、支援。

         専門家支援実施の情報・直接紹介。

         感情的精神的支援。

         犯罪から生じた経済問題に関する助言。

         二次被害や反復被害のリスクと予防に関する助言。

 

6.民主主義とレイシズム

 

  ・民主主義とレイシズムは両立するか

  ・民主主義の前提としての法の下の平等

  ・民主主義の前提としてのマイノリティの権利

  ・ヘイトは民主主義を破壊する

 

 

<参考文献>

①前田朗「『慰安婦』問題の現状と課題――<被害者中心アプローチ>とは何か」『法の科学』51号(日本評論社、2020年)

②前田朗「ヘイト・クライムとは何か――国際社会における差別犯罪対策」『明日を拓く』131号(2021年)

③前田朗「忘れられたヘイト・クライム――千葉朝鮮総連強盗殺人放火事件」『部落解放』812号(2021年)

④前田朗「COVIDヘイト・クライム法――アジア系住民への差別と暴力」『部落解放』821号(2022年)

⑤前田朗「ヘイト・クライム被害者救済(一)(二)――EUのモデル・ガイダンス」『部落解放』823・825号(2022年)

⑥前田朗「底が抜けた差別社会で生きること」『部落解放』827号(2022年)

⑦前田朗「ヘイト・クライム被害者救済のために――EU政策報告書の紹介」『人権と生活』54号(2022年)

⑨前田朗「ウトロ放火事件一審有罪判決」『救援』642号(2022年予定)

⑩前田朗「刑事司法におけるヘイト・クライム被害者――欧州安全保障協力機構(OSCE)報告書の紹介(1)」『Interjurist』209号(2022年予定)