Tuesday, December 20, 2022

差別とヘイトに抗する居住権の闘い

斎藤正樹『ウトロ・強制立ち退きとの闘い』(東信堂)

https://www.toshindo-pub.com/book/91752/

ウトロで生き抜いた住民たち/はじめに/用語解説/ウトロ年表(19102021) 

第1章

 第1節ウトロの歴史/第2節在日一世オモニの証言/第3節ウトロの土地は誰れのものか

第2章

 第1節立ち退き裁判/第2節国際人権法では/第3節「われら住んで闘う」ウトロ住民

第3章

 第1節日本居住福祉学会第10回ウトロ研究集会

第4章

 第1節ウトロ救済に向けて/第2節社会権規約(条約)の解釈の発展/第3節新しい住宅の完成を祝う/第4節日本居住福祉学会ウトロ研究集会(2019

おわりに

<第二次大戦中、軍需飛行場に動員された朝鮮人労働者の居住地区だった京都府宇治市の在日朝鮮人集落ウトロ地区。終戦後も、土地は在日朝鮮人コミュニティにとっての「共有財産」であった。チャンゴ(民族楽器)の聞こえるまち。強制立ち退き判決など様々な困難を乗り越え、複雑な事情の中マイノリティの「居住の権利」を実現させた市民運動の奮闘を克明に描いた「居住福祉新ブックレット」第3弾!>

斎藤はウトロを守る会副代表、元宇治市職員。甲山冤罪事件裁判、朴秋子問題を考える会、外国人登録指紋押捺反対、シベリア抑留国籍差別裁判を支える会などにかかわる。

ウトロについては、中村一成『ウトロ ここで生き、ここで死ぬ』(三一書房)がある。

https://31shobo.com/2022/03/22003/

私は書評「底が抜けた差別社会で生きること」『部落解放』(20229月号)を書いた。

強制立ち退き問題が「解決」し、住民の引っ越しが進み、ウトロ祈念館が開館した。

https://www.utoro.jp/

しかし、ウトロ等放火事件が起き、差別と排外主義が襲い続けている。

差別犯罪としてのウトロ放火事件――ヘイト・クライムを許さないために

https://isfweb.org/post-1060/

私は「ウトロ等放火事件刑事一審判決評釈」『部落解放』(202212月号)を書いた。

斎藤は宇治市役所職員時代から長年にわたってウトロ住民の生活権・居住権を求める闘いを支援し、これに学び続けた。本書の特徴は、居住権を求める闘いに加わった斎藤が、国際人権法の視点を導入し、さらに日本居住福祉学会の研究者たちの協力を得て、解決を目指したことである。現場の闘いを支える国際人権法と居住学会という構図が実現したことは特筆すべきであろう。

ウトロという磁場の生活文化が、国際人権機関を動かし、国際人権法研究者を動かし、韓国政府を動かし、宇治市役所を動かす。粘り強い闘いの歴史を斎藤は記録する。斎藤は「ウトロの教訓」を「立場の弱い住民大衆にとって、居住の権利を守る最も有効な闘争戦術は、人の歴史が染みついたその場所に、コミュニティを維持しながら日常的に集団で住み続けることである」という。

生きることが闘うことであるという視点は、中村一成の「ウトロ ここで生き、ここで死ぬ」と同じであり、これはウトロ住民が長い闘いの中で鍛えて、確認してきた原則である。

立ち退き問題は「解決」したが、差別とヘイト・クライムは続く。差別とヘイト・クライムに抗する闘いがウトロ祈念館を実現した。今後はウトロ祈念館を中心に住民と守る会の闘いが続く。