Wednesday, January 04, 2023

紛争下の女性ブリュッセル宣言

202269日、欧州理事会European Councilは「紛争下の女性エンパワーメントに向けた行動に関するブリュッセル宣言」を採択した。

Brussels Declaration on Actions towards Empowering Women in Conflicts

同日開催の「紛争下の女性」イベントに続いて、共催者である欧州理事会議長のシャルル・ミシェル、国連女性機関UN Women、ナディア・イニシアティブNadia's Initiative、及びデニ・ムクウェゲ博士財団Dr. Denis Mukwege Foundationの共同宣言として発表された。

当時、見落としていたため紹介が遅れた。欧州理事会の声明だが、日本で報道されたかどうか記憶していない。

以下紹介。

<紛争下の女性エンパワーメントに向けた行動に関するブリュッセル宣言>

1.世界中で暴力紛争件数が増加し、国連憲章や国際人道法を含む国際法違反の人権侵害や蹂躙が広範囲にわたって繰り返し発生しているので、我々は、紛争関連状況における女性と少女を保護し、エンパワーメントするためのコミットメントを再確認する。

2.女性が紛争予防と解決、並びに長期的な平和構築に大いに貢献するだけでなく、直接影響を受けた地域の民間人として、難民や国内避難民として、又は紛争の文脈で直接標的とされた者として、紛争状況の影響を特に受け続けていることを想起する。

3.紛争関連状況において女性と少女に対して行われたすべての国際法違反を強く非難し、すべての紛争当事者がこれらの行為を直ちに停止することを確保するよう要求する。

4.この点に関し、ウクライナ、及びアフガニスタン、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国、エチオピア、イラク、マリ、スーダン、シリアその他の紛争地域及び紛争後の状況において、女性と少女に対して行われた紛争関連の性暴力、及び強姦を含むジェンダーに基づく暴力の証言や報告があることに慄いている。

5.すべての諸国には、サバイバーのための包括的なケアの利用可能性を確保し、不処罰を終わらせ、強姦その他の形態の性暴力及びジェンダーに基づく暴力を含む紛争関連状況における女性と少女に対する暴力に責任ある者を訴追する責任があることを強調する。すべての諸国は、紛争関連の性暴力を防止し、対処し、生存者を保護し、支援し、実行犯を裁判にかけなければならない。

6.特にローマ規程及び国際刑事裁判所を通じて、紛争関連の性暴力に対処するための法手続を強化するための国際的法枠組み及びイニシアティブの完全な履行を支持する。

7.我々は、国連安保理決議第1325号及びそのフォローアップ決議のすべてからなる「女性、平和、安全保障」アジェンダの完全、効果的かつ迅速な履行にコミットしている。「女性、平和、安全保障及び人道的行動に関するコンパクト」への署名者を含む他の地域機関及び国際機関との協力の文脈において、「女性、平和、安全保障」アジェンダが持続可能な平和、安全、人権、正義及び発展を支援するすべての努力に完全に統合されることを確保する。

8.紛争予防、危機管理、紛争解決、救援と回復、及び長期的平和構築のための重要な主体としての女性と少女のエンパワーメントを支援する。

9.外交安全保障政策を含むすべての政策にジェンダー視点を統合し続ける。同様に、紛争解決及び長期的平和構築への女性の完全、平等かつ有意義な参加と貢献に対する構造的障壁に対処するためのイニシアティブを促進する。

10.平和維持と危機管理、予防外交と関連活動を含む平和と安全保障に関連する問題に取り組むすべての関連する国内機関、地域機関、国際機関におけるすべての意思決定レベルでの女性の役割の強化を支持する。

11.市民社会、特に地域、草の根、女性主導、フェミニスト組織、少女と青年主導の組織、女性の平和構築者及び調停者、並びに女性の人権擁護者の参加及びリーダーシップを、これらの行為主体への持続的かつ信頼できる資金提供を通じたものなど、予防と応答のすべての努力において活性化させる。

12.我々はサバイバー中心アプローチによる安全保障と保護への投資にコミットしている。それは、紛争関連の性暴力及び紛争後の状況を防止し、対応し、性暴力のサバイバー並びにその子ども、家族その他の証人にアクセス可能で質の高い支援を確保するためであり、心理社会的及び法的サービス、社会経済的サービス、並びに性的・リプロダクティブ・ヘルスと権利へのアクセスを含み、救援と再統合の十分かつ迅速な提供を伴う。

13.性的搾取又は紛争に関連する他の形態の性暴力及びジェンダーに基づく暴力を伴うものなど、人身売買、特に女性と少女の人身売買犯罪と闘うためのリスク緩和措置の履行にコミットする。

14.紛争及び紛争後の状況にある諸国が、サバイバー及び被害者の司法へのアクセス、並びに賠償を含む適当で、効果的、迅速かつ適切な救済へのアクセスを確保するための移行期の司法戦略を策定し履行することを支援する。

15.紛争関連の性暴力についての情報の倫理的な収集及び利用のためのキンシャサ宣言Kinshasa Declaration又はムラド・コードMurad Codeのような、サバイバー主導のイニシアティブを歓迎する。

16.サバイバーと被害者、地域社会、国際社会及び国際機関との協働を維持し、紛争関連状況における女性と少女の権利を保護、促進し、彼らのエンパワーメントを確保するための共同の努力を強化することにコミットする。

 

Kinshasa Declaration

 https://csiw-ectg.org/survivors-hearing-for-reparations-for-conflict-related-sexual-and-gender-based-violence-kinshasa-principles/

Murad Code

 https://www.muradcode.com/

*なお外務省のサイト「紛争下の性的暴力防止イニシアティブ」には関連する文献がアップされている。

 https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/pc/page1w_000129.html