<青梅九条の会講演会>
敗戦80年に考える
植民地主義と排外主義の現在
講師:前田 朗(東京造形大学名誉教授)
開催日時:12月7日(日)14時~16時 13:30分開場
開催場所:青梅市福祉センター集会室1から3(定員90名)
資料代:300円
(高校生以下無料)
問合せ:青梅九条の会
電話 0428-31-1302・中村
深沢潮を読む(7)貧困女子はどこから来たか
深沢潮『あいまい生活』(徳間書店、2017年)
朝日新聞(11月6日)に「根下ろす排外主義、言葉であらがう 新潮コラム抗議 小説家の深沢潮さん語る」が掲載された。
祖父が関東大震災時に自警団に殺されかけた過去に言及しつつ、現在の外国人排斥について語っている。
「『朝鮮人虐殺』という単語が独り歩きしているけれど、一人ひとりの生活や日常がどういうもので、それがどう破壊されて踏みにじられたのかを伝えなければ、抽象的な頭の中だけの理解になってしまいます。」
「排外主義的な言説がSNSでどんどん広がり、外国人排斥を訴える政党が支持され、選挙でもカジュアルにヘイトスピーチが言われるようになりました。言われる側、外国人当事者としては本当に恐怖でしかないと思います。でも結局、日本人にとっては自分事ではないんです。/関東大震災のときでも、虐殺はおかしいと思った人はいました。今、責任のある立場の人や声の大きい人が、差別をあおって止めないことの罪はすごく重いと思います。」
「尊厳を傷つけられると人間は本当にこたえます。相手が正面から答えてくれないと、海に向かって石を投げているような感覚になりました。」
「世の中は自分と同じ人には共感しても、立場の違う人に対しては想像力を失ってきていると思います。同質性のない人はないがしろにしていいという空気が広がっています。だからこそ『これはおかしいですよ』とちゃんと言っていかなければいけない。向き合う先は『海』だけど、自分に引き寄せて想像してもらえるように言葉を届けるしかないと考えています。」
*
『あいまい生活』は深沢潮の第7作だ。これまでと同様に、連作短編でありつつ、長編となっている。
貧困女子という言葉が流行語になった時期があった。2010年代から用いられていると言う。一般に、最低限の生活を営むことすら困難な女性が貧困女子とされ、例えば、年収が114万円未満や月の手取りが10万円未満ならば貧困女子とされているようだ。本書巻末には参考文献が列挙され、『失職女子。』『女性たちの貧困』『最貧困女子』『最貧困シングルマザー』などの著書が掲げられている。
アメリカ留学に適合できずニューヨークから帰国した樹(いつき)は、ティラミスハウスというシェアハウスの住人となる。劇団員の風香、50社の面接が不首尾だったさくら、中国人実習生として働き雇用主のセクハラに耐えているウェイ、家事手伝いをしているが仕事を切られそうになっている好美、そしてシェアハウス担当職員の雛。
いずれも文字通りの貧困女子である。貧困の原因も生活歴も志向も嗜好も異なるが、同じシェアハウスで明日を探す。だが、現実はさらに厳しい。シェアハウス経営主が違法行為をしていたため、立件され、住家も失われる。
深沢はそれぞれの貧困女子の生活と意識を巧みに描き出し、貧困女子は単純にレッテルを張って済む問題ではないことを示す。それぞれの人生があり、それぞれの貧困がある。だが、同時に、貧困を強制するこの社会という共通の背景がある。
貧困女子という言葉は見事に時代を体現しているようでいて、実はそうではない。2010年代に貧困女子が登場した訳ではない。非正規労働が増えてはじめて貧困女子が登場したのでもない。高度経済成長時代にも貧困女子は強制的に生み出されていた。戦前も同じだ。近現代日本史を見れば、つねに貧困女子がつくりだされていた。それが社会問題にすらならなかったのが現実だ。ようやく社会問題になったが、その時、非正規労働問題は女子だけでなく男子の問題でもあった。つまり、女性差別問題は隠蔽され、男女共通の非正規雇用問題が論じられる。
深沢の想像力は、一人ひとりの女性が直面している問題の個別性と共通性を描き出すことで、具体的な問題解決を求める作品となっている。
清末愛砂さん講演「憲法24条と平和の道しるべ」
★ 11月28日(金) 18:30~20:30(開場18:00)
★ 北とぴあ 701会議室
(JR王子駅北口徒歩2分、地下鉄南北線王子駅5番出口直結)
参加費:500円
*
憲法24条と憲法9条。
私たちの憲法には2つの「個人の尊厳と平和な社会の実現を目指す」条文があります。前文の平和的生存権と併せて、日本国憲法の平和主義は多元的で多彩な意味内容を持っています。政治の現実は憲法理念を矮小化していますが、憲法理念を発展的に解釈し、実現することが求められます。
今回、憲法学者の清末愛砂さんをお招きし、改めて私たちの社会を見つめ直したいと思います。
アフガニスタンでの女性差別問題についても語って頂きます。
貴重な機会ですので、ぜひご参加ください。
●清末愛砂さん
室蘭工業大学大学院教授(憲法学)、青年法律家協会前議長、RAWAと連帯する会共同代表。
著書に『ペンとミシンとヴァイオリン:アフガン難民の抵抗と民主化への道』、『パレスチナ:非暴力で占領に立ち向かう』『北海道で考える〈平和〉―歴史的視点から現代と未来を探る』(共編)『平和に生きる権利は国境を超える』(共著)など多数。
<最近の関連論文>
清末愛砂「憲法のない国から見た日本――立憲主義を考える」前田編『憲法を取り戻す 私たちの立憲主義再入門』(三一書房、2025年)
清末愛砂「平和的生存権と国際協調主義に基づく国際連帯活動」憲法ネット103編『混迷する憲法政治を超えて』(有信堂、2025年)
<共催> 平和力フォーラム/RAWAと連帯する会/室蘭工業大学大学院清末愛砂研究室
(連絡先):akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp 070-2307-1071(前田)
日本友和会創立100周年に向けて
連続講座 分断より和解へ第1回
今なぜ日本人ファースト?
差別とヘイトの底流をさぐる
講師:前田朗氏
日時:11月22日(土)13:30~16:00
場所:信濃町教会
*JR信濃町駅から徒歩3分
*東京都新宿区信濃町30
参加費:無料
主催:日本友和会
問合せ:090-8463-7684(池田)
深沢潮『ママたちの下克上』(小学館、2016年)
『週刊文春』10月16日号に「深沢潮 差別コラム問題を激白『不誠実な週刊新潮に絶望した』」が掲載された。
「デビューした版元は実家みたいなもの、悲しさはありますが、自分の尊厳を守るための決断でした。公開はありません」と始まり、「差別や人権侵害の認識があったか」を問うたにもかかわらず、これを認めない姿勢に疑問を呈する。
「名前」は在日朝鮮人にとって常に付きまとう問題だ。植民地時代の創氏改名はもとより、解放後も社会的差別が続き、通称名(日本名)の使用を余儀なくされた。就職やアパートマンション入居もそうだが、今ではSNS上で攻撃される。
小説で出自や本名を書くと、家族や親戚から反対される。父親からは「余計なことをするな」と言われたと言う。
「父が元気だったら、私がこうやって目立つことを心配したと思いますが、自分の意見を表明したことに関しては誇りに思ってもらえたのかなと感じています。」
*
『ママたちの下克上』は深沢の第6作だ。
お受験ママが盛んにニュースになったことがあった。娘・息子を一流の受験校に合格させるために、幼稚園や小学校のころから熱心に励む母親たちが戯画的に取り上げられ、ついにはお受験殺人とやらも起きたと記憶している。
一流小学校に入るためにはお受験予備校に通うので、幼少期から教育費がかかる。母親たちは経済的に余裕があると見栄を張らなくてはならないし、子どもたちにまじめに勉強させなければならない。一つでも上のランクをめざす。お受験失敗は許されないので、子どもたちよりも、母親が過熱状態となる。子どもを追い詰め、自分を追い詰める。
主人公の香織は、一流ではない聖アンジェラ学園の卒業生だがアメリカ留学を経て慶応を卒業し、下着メーカーのクレールに勤務する。ジュニア向けの下着講座を広め、母校の聖アンジェラ学園でもブラジャーの選び方講座を実施する。校長、副校長や、子どもたち、そして母親たちとの出会いの中、クレールを退職した折に母校の広報担当者に招かれる。
香織の夫、姉、子どもたちとのエピソードと、聖アンジェラ学園のエピソードが重なり合い、物語が進行する。受験競争、教育者のセクハラ(疑惑に過ぎず、実際には教育熱心な副校長)、弾き飛ばされる子どもたち、追い詰められてスーパーで万引きに走る母親。現代社会の一局面が鮮やかに描き出される。
反差別連続講座第4回
ヘイト・スピーチ法の国際常識
― 刑事規制と被害者救済
前田朗
11月15日(土)18:15~20:30 開場18:00
浦和コミュニティセンター第13集会室
浦和駅東口 浦和パルコ上10階
資料代
800円 (学生・障がい者500円)
2月に、「包括的差別禁止法&条例をつくろう!」の講演で、前田朗さんは日本政府の人権意識の遅れを指摘しました。さらに理解を深めるため連続講座を企画し、1回目は関東大震災コリアジェノサイド、2回目は未解決のヘイト・クライム事件、3回目は民族教育の権利についてのお話でした。クルド人へのヘイトや参議院選挙では排外主義の政党が議席を伸ばし、規制がないためヘイト・スピーチが野放し状態です。今回、国際法ではどうなのかを解説していただきます。
主催:
外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク埼玉
協賛:
ヘイトスピーチ禁止条例を求める埼玉の会、子どもの人権埼玉ネット、朝鮮・韓国の女性と連帯する埼玉の会
問合せ・申込:080-1245-3553(斎藤)
<金竜介弁護士への書簡
「憲法フェスティバル実行委員会への書簡」に関連して(第4信)>
金竜介様
私たちは憲法フェスティバル実行委員会宛てに2通のお手紙をお届けしました(第1・2信)。琉球民族遺骨返還問題に関連して、琉球民族に対する差別を問う書簡です。
それに対して、並木陽介弁護士から書簡を頂きましたが、その内容は「回答しないという回答」にすぎませんでした。社会的責任は考えない、差別問題への回答も対話も拒否するという姿勢におおいに落胆させられました。
そこで私たちは並木弁護士及び憲法フェスティバル実行委員会宛てに第3信をお届けしました。
その後、憲法フェスティバル実行委員長が金竜介弁護士であることを知りました。そこで、今回は金竜介弁護士に書簡を差し上げることにしました。憲法フェスティバル実行委員会は社会的責任など毛頭考えないようですが、金竜介弁護士個人として、この問題について考えていただくことができるのではないかと期待しています。
金さん
私たちは、本年6月21日に開催された第37回憲法フェスティバルには琉球民族に対する差別とレイシズムが潜んでいるのではないかと警鐘を鳴らしました。「祖先の墓を暴かれ、骨を盗まれ、返還を求めても対話を拒否され、侮辱された人々の痛みの声を、憲法フェスティバル実行委員会は、どのようにお聞きでしょうか」と問いかけ、対話を求めました(第1信・本年6月14日付)。
これに対して憲法フェスティバル実行委員会は一切応答することなく、差別とレイシズムについて自己点検することもなく、第37回憲法フェスティバルを実施しました。講演において1946年3月に実施された衆議院選挙において平等が実現したという見解が示されました。しかし、同選挙においては沖縄県民と旧植民地出身者(その多くは朝鮮人)の選挙権が剥奪されたのが事実です。私たちは琉球民族と朝鮮人を排除して平等の実現を語るのでしょうかと問いかけました(第2信・本年7月6日付)。
並木陽介弁護士から私たちに寄せられた書簡(本年7月31日付)は「憲法フェスティバル実行委員会は、様々な立場や思想にこだわることなく、かつ弁護士や法律家だけでなく多くの一般市民の皆さんをメンバーとして構成している実行委員会です。そうした性格から、頂きました個別具体的な問題についての統一した見解をまとめて公表ないし回答するなどといったことは行っておりません」というものでした。回答しないという回答です。
そこで、私たちは「差別の恐れを指摘され、事後に質問がなされたにもかかわらず、どこにも通用しない『一般論』をタテに回答を拒否するのは『誠実』と言えるでしょうか」、「民族差別の被害者を無視し、排除することは民族差別の上塗りではないでしょうか」と重ね、「せめて、あなたが差し出している、その差別の手を引っ込めていただくことはできないでしょうか」と問いかけました(第3信・本年8月7日付)。
その後、憲法フェスティバル実行委員会からの応答はありません。無視と排除と「回答しないという回答」――これが、すべてです。
金さん
琉球民族遺骨返還問題について第1信において略述し、主要な参考文献をお知らせしましたが、今回はこの問題が国際的に注目を集めていること、そして山極壽一氏の差別行為が国際常識に反することをお知らせします。第1に国連人権理事会における議論、第2にアメリカ人類学会の報告書をご紹介します。
第1に国連人権理事会です。
先住民族の遺骨返還は、アメリカのスミソニアン博物館、イギリスの大英博物館・自然史博物館、オーストラリア国立博物館などで始まりました。被害を受けてきた先住民族の長期に及ぶ権利獲得要求の結果、2007年の国連先住民族権利宣言第12条は次のように規定しました。
「1 先住民族は、自らの精神的および宗教的伝統、慣習、そして儀式を表現し、実践し、発展させ、教育する権利を有し、その宗教的および文化的な遺跡を維持し、保護し、そして私的にそこに立ち入る権利を有し、儀式用具を使用し管理する権利を有し、遺骨の返還に対する権利を有する。
2 国家は、関係する先住民族と連携して公平で透明性のある効果的措置を通じて、儀式用具と遺骨のアクセス(到達もしくは入手し、利用する)および/または返還を可能にするよう努める。」
国連先住民族作業部会及び国連人権理事会では、先住民族の遺骨返還要求権について議論してきました。国連人権理事会第44会期決議は、先住民族の宗教用具や遺骨の返還に関する調査研究を、国連教育科学文化機関、世界知的所有権機関、先住民族権利専門家委員会、先住民族の権利特別報告者、先住民族問題常設フォーラムに要請しました。
例えば2020年7月21日、先住民族権利専門家部会は、国連人権理事会第45会期に報告書『国連先住民族権利宣言の下で葬儀用具、遺骨、無形文化財の返還』(A/HRC/45/35)を提出しました。
報告書によると、ノルウェーの文化史博物館とオスロ大学文化史博物館、スウェーデン歴史博物館、フィンランドのヘルシンキ大学がサーミ人の遺骨を返還しました。さらにニュージーランドのパパ・トンガレワ博物館、スイス・チューリヒ大学、スウェーデン民族誌博物館など、各地で返還が進みました。
先住民族に遺骨に関する権利は国際人権法の一環として認められてきた権利です。慰霊や追悼や宗教儀式の権利は社会的文化的権利の中核を成します。
金さん
第2にアメリカ人類学会の報告書です。
アメリカ人類学会・人骨の倫理的取り扱い委員会は2022年5月から2024年5月まで幅広い調査・検討を加えて、2024年6月に130頁に及ぶ詳細な最終報告書をまとめました(American Anthropological Association, The Commission for the Ethical
Treatment of Human Remains, FINAL REPORT, June 2024)。
最終報告書は、先住民族遺骨問題を入植者植民地主義、海外帝国主義、奴隷制、及び白人至上主義の問題として検討しています。人類学という学問が「科学的人種主義」に陥り、奴隷制、植民地主義、白人特権、家父長制を自然現象であるかのごとく錯覚したことを反省しています。
最終報告書にはアイヌ民族及び琉球民族の研究者も情報提供しました。松島泰勝もその一人です。最終報告書の表紙には、琉球・今帰仁村の百按司墓(むむじゃなばか)の写真が採用されています。ここから盗まれた遺骨を隠匿してきたのが京都大学であり、山極氏です。山極氏による民族差別とレイシズムは今や世界周知の事柄です。
最終報告書に付された「アメリカ自然人類学学会倫理綱領」は、人類学研究者のための倫理枠組みを発展させる原則とガイドラインを定めています。研究者の倫理的義務として人間の福利の尊重、人間の安全・尊厳・プライヴァシーを侵害しないこと、人間を研究対象とする場合には当事者に情報提供し説明をした上で同意を得ることが明記されています。
以上の通り、先住民族遺骨問題とは、レイシズムによる人権侵害問題であり、研究者には人権侵害を惹起しない倫理的責任が求められています。
それでは山極壽一氏はどのように行動したでしょうか。京都大学による琉球民族遺骨問題についての山極氏の言動はすでに繰り返し述べてきた通りです。
金さん
琉球民族(松島)からの問いかけに対して、無視と無回答を続けてきたことは、山極氏ではなく、憲法フェスティバル実行委員会のレイシズムを如実に表現しているのではないでしょうか。金さんはどのようにお考えでしょうか。
実行委員会は社会的責任を考えないようですが、金さんはいかがでしょうか。
実行委員会は琉球民族と朝鮮人を排除して平等を語ることに疑問を感じないようですが、金さんはいかがでしょうか。
なお、私たちは来る11月1日、日本平和学会2025年度秋季研究集会において、「琉球・沖縄・島嶼国及び地域の平和分科会」として「テーマ:現在も続く学知の植民地主義を問う」という分科会を開催します。下記の報告を予定しております。
報告 :松島泰勝(龍谷大学)「東京大学に対する琉球人遺骨返還運動―琉球人差別の歴史的清算を求めて」
報告:さいとう・まお(東大遺骨返還プロジェクト)「学術界と責任―東大遺骨返還プロジェクトの運動から」
報告:與儀幸太郎(ハワイ大学大学院博士課程)「遺骨返還運動と先住民族思想」
報告:前田朗(朝鮮大学校)「護憲平和なら差別容認でもやむをえないのか―憲法フェスティバルによる琉球民族差別を考える」
金さん
アイヌ民族および琉球民族は先住民族として、盗まれた遺骨の返還を求めてきました。
他方、植民地時代に強制連行その他の理由で日本列島や南洋の島々に送られた朝鮮人の遺骨返還も現代史の重要テーマでした。
朝鮮人強制連行真相調査団をはじめとする団体が、各地で保管されていた遺骨をご遺族のもとに返還するための努力を長年にわたって続けてきました。前田はその一員として長年活動してきました。
北海道の雨竜ダム工事のために使役され、亡くなった朝鮮人の遺骨を発掘し、ご遺族のもとに返還する民間の努力も続いてきました。
山口県の長生炭鉱では、水没事故により海底炭鉱に閉じ込められていた犠牲者の遺骨発掘作業が行われ、本年8月、ついに海底からご遺骨が発見されました。
ご遺骨は単なる物でも、単なる研究資料でもありません。遺族やコミュニティにとっては慰霊・追悼の対象です。
憲法フェスティバル実行委員会としてではなく、金竜介弁護士として、この問題に関心を寄せていただき、ともに考えていただくことはできないでしょうか。
2025年10月16日
前田朗(ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク(のりこえねっと)共同代表、青年法律家協会弁護士学者合同部会・元東京支部長、朝鮮大学校講師、東京造形大学名誉教授)
松島泰勝(琉球民族遺骨返還請求訴訟元原告団長、琉球民族遺骨情報公開請求訴訟元原告、ニライ・カナイぬ会共同代表、龍谷大学教授)
*本書簡へのご意見やお問い合わせは下記へお願いします。
⇨前田 E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp
⇨松島 E-mail: matusima345@yahoo.co.jp
<憲法フェスティバル実行委員会への書簡――琉球民族遺骨返還問題と植民地主義を問う>
https://maeda-akira.blogspot.com/2025/06/blog-post_13.html
<憲法フェスティバル実行委員会への書簡(第2信)――琉球民族遺骨返還問題と植民地主義を問う>
https://maeda-akira.blogspot.com/2025/07/2.html
<憲法フェスティバル実行委員会からの書簡>
https://maeda-akira.blogspot.com/2025/08/blog-post_6.html
<並木陽介弁護士への書簡
憲法フェスティバル実行委員会への書簡(第3信) ――あなた方はいつまで琉球差別を続けるつもりなのですか>
https://maeda-akira.blogspot.com/2025/08/3.html
<最近の関連報道>
松島氏ら、東大に情報開示請求、琉球人遺骨を保管か
https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-4484277.html
東京大学、琉球遺骨文書は「不存在」
https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-4526149.html
東大、港川人遺骨も奪う 同大博物館に無断で保管
https://ryukyushimpo.jp/news/culture/entry-4550758.html
ウポポイのアイヌ民族遺骨 小樽の団体に返還 収集の東大謝罪
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1186281/
豪先住民の遺骨、初返還 東大、京大、科博から10体
https://news.yahoo.co.jp/articles/35a00df859d3ebdbb5b423a8705dceb3474b67f9
「心」を無視した遺骨収集 先人の行為に「謝罪」と「経緯の検証」を
https://mainichi.jp/articles/20250905/k00/00m/040/067000c
深沢潮を読む(5)アイデンティティとレッテル
深沢潮『緑と赤』(実業之日本社、2015年)
ずっと通名で生きてきたのに、海外旅行のためパスポート(再入国許可証)を入手して自分が在日韓国人キム・ジヨンであることに驚き、たじろぎ、悩む金田知英。
K-POPファンとして韓国が大好き、韓国語を学ぶ梓は、新大久保でヘイト・デモを目撃し驚く。
李家のあととりなのに、父親の意向に反して日本に留学し、日本女性に好意を抱くジュンミン。
北関東の町に生まれ平凡な人生を送ってきたが、新大久保でヘイト・デモに遭遇し、社会問題に目覚め、反ヘイトのカウンターにのめり込み、実家を離れて東京で暮らす良美。
在日韓国人から帰化して金田となったが、ソウルに留学している中、好意を抱いた日本人女性知英(実は在日韓国人)とすれ違い、大学時代の親友がヘイト発言を繰り返すことに衝撃を受ける龍平。
ヘイト・デモに脅かされ、在日、韓国、日本の間の亀裂に直面し、自分と家族、特に自殺した父親の人生を想い、乱れる金田知英/キム・ジヨン。
2014年から15年にかけて、新大久保のヘイト・デモが吹き荒れた時期に書かれた小説である。参考文献に、安田浩一『ヘイトスピーチ』や師岡康子『ヘイト・スピーチとは何か』が挙げられている。今日朝鮮学校襲撃事件が2009年~10年、新大久保ヘイト・デモが2013~14年、川崎桜本ヘイト・デモがこれに続く。2016年にヘイト・スピーチ解消法が制定された。
2014年に新大久保や川崎に暮らしたり、働いたり、買い物に行った人々は異様な光景に遭遇していた。ジヨン、梓、ジュンミン、良美、龍平は、新大久保やソウルで出会い、すれ違う。アイデンティティの危機に直面し、惑い、不安に襲われながら葛藤する。在日韓国人も日本人も、それぞれ異なる形だがアイデンティティという爆弾を抱えて生きる。
人は誰でも自分なりのアイデンティティを形成し、維持し、他者と交流して成長していく。支配的なマジョリティの一員であれば、アイデンティティなんてどうでもいい、と言い捨てることができる。しかし、マイノリティにとってアイデンティティは深刻な爆弾となる。アイデンティティに縋って生きることもあるが、アイデンティティに引き裂かれることもある。アイデンティティを攻撃されることもあれば、アイデンティティを隠さねばならないこともある。他者から勝手にアイデンティティを押し付けられることさえある。
民族や国籍は近代国民国家においてはもっとも重要なアイデンティティとされるため、ハードルが高い。個人では乗り越え不能に見える。内面を支配していることが多い。反発しても、恐怖や不安が自分に帰って来る。手に負えないアイデンティティを、攻撃されたり、利用されたり、押し付けられたりするのだから、ますますやっかいだ。アイデンティティは両刃の刃となるので、大切にすればするほど、苦悩が深まる場合もある。
この国でマジョリティの一員として生まれ育ち、そのままマジョリティで居続ける者には、自分で体験することのできない苦悩である。
2014年の東アジア(日本と韓国)を生きる庶民の精神世界を独自のタッチで描いた作品である。
「緑と赤」は、日本政府発行の旅券・再入国許可証の表紙の色の違いを意味する。
『琉球弧を戦場にするな』上映会
11月8日(土)午後6時半~8時半、6時開場
東京ボランティア市民活動センター(飯田橋) 飯田橋駅隣RAMLA10階
◉『琉球弧を戦場にするな』(2024年、55分)上映
藤本幸久&影山あさ子製作・監督/森の映画社
◉問題提起:浜恵介(立教大学兼任講師)「地方自治体の平和政策」
◉参加者による討論
*参加費(資料代含む):500円
*『琉球弧を戦場にするな』:藤本幸久&影山あさ子製作・監督/森の映画社。九州の南から台湾へ連なる琉球弧の島々。基地は沖縄本島だけにあるのではない。馬毛島、奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島で、猛烈な勢いで進む自衛隊の新基地建設。基地も演習場もない徳之島でも行われる日米共同訓練。準備されている次の戦争の戦場は・・・
*浜恵介:1976年、広島市生まれ。「父を返せ、母を返せ」の原爆詩人・峠三吉の遠縁。福島大学大学院地域政策科学研究科修士課程修了。戦後政治史・平和学専攻。地方自治体職員を経て、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程入学。自治体職員の経験を活かし、平和学と公共政策を融合させるべく自治体レベルでの「プラグマテック」な非核化の構築などの研究を進める。
共同開催:平和力フォーラム/ウエッブアフガン
連絡先:070-2307-1071(前田)
E-mail:akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp
「新しい戦前にさせない」連続シンポジウム第17回
共同テーブル10.30シンポ
「ファーストとは何か?」
多文化共生、ジェンダー平等の社会をめざして
私たちはヘイトを許さない
<リード文>
先の参議院選挙では、定数1の群馬県で参政党候補者が当選した自民党候補者に肉薄する票を得ました。移住労働者が多く暮らしている東毛地域の太田市は住民登録者の6%近くがブラジル、ベトナム、フィリピン人など。邑楽郡大泉町はブラジル、ネパール、ベトナム人などが約20%を占め、両自治体とも早くから多文化共生政策を推進、互いの文化を尊重する地域を創ってきました。
反戦平和の運動が取り組まれ、革新勢力が強い沖縄。参議院選挙でもオール沖縄の高良さちかさんが勝利しています。しかし、3位の参政党候補が得票率20%、同時実施の那覇市議会議員選挙では、史上最多の9千票超えでトップ当選でした。その女性市議は「性別は男と女で十分」「教育勅語賛成」などと発言していましたが、初の議会質問で、トランスジェンダー性自認が「伝染する」、「トランスジェンダーの生徒に必要な対応は、心の性別に基づく配慮よりも心の傷を治療できる心理士を紹介すること」と発言しています。
多文化共生やジェンダー平等、反戦平和などの取り組みが進んでいる地域で、それを批判、否定する政治勢力が一定の支持を集めるのは、欧米でも起こっています。今回のシンポでは、その実情を把握し、どういった取り組みをしていくのか、登壇者とともに考え、明日からの行動に繋げていきましょう。
日時 10月30日(木)18時開場、18時15分~20時30分
場所 文京区民センター3A会議室
資料代 1000円
主催 共同テーブル
申込先 多くの参加者が見込まれます。定員(250名)になり次第、申し込みを締め切りますので、大変恐縮ですが、至急、下記のメールアドレスまで、出席申込(氏名・電話番号記入)をお願いいたします。
E-mail: e43k12y@yahoo.co.jp
<プログラム>
1 開会(進行:白石
孝~共同テーブル発起人)
2 第1部
・移住労働者問題から「ファースト」を考える
鳥井
一平(NPO法人・移住者と連帯する全国ネットワーク共同代表理事)
・在日への差別
辛 淑玉(のりこえねっと共同代表)
3 休憩
4 第2部 なぜ極右政党が支持を伸ばしたか
・沖縄から 又吉
俊充(沖縄タイムス記者)
・群馬から 諏訪
哲也(交通ユニオン書記長)
5 第3部 「人間にファーストもセカンドもない」
ラサール石井参議院議員
登壇者と会場からの意見交換
6 まとめと閉会挨拶
共同テーブル連絡先:藤田高景 090-8808-5000/石河康国 090-6044-5729
●オンライン配信あり→https://youtube.com/live/E3rw27FZTOI?feature=share
インタヴュー講座:脱植民地主義のために(第1回)
敗戦80年の今日、日本の政治社会は過去の侵略戦争と植民地支配を忘却し、日本人の戦争被害だけを語ります。歴史の風化と浸蝕が進んでいます。しかし、植民地主義は過去の歴史ではなく現在の「日本問題」です。過去を問い直しながら現在と将来の課題に挑む必要があります。ジェンダー史研究者の金富子さんに脱植民地主義の課題について語ってもらいます。
日時:11月1日(土) 午後6時半~8時半(6時開場)
会場:東京ボランティア市民活動センター(飯田橋RAMLA10階)
参加費:500円
ジェンダー視点から見た関東大虐殺
――1923年のジェノサイドと「レイピスト神話」
金富子さん
*講師プロフィール:東京外国語大学名誉教授、専攻は植民地朝鮮ジェンダー史、植民地公娼制や日本軍「慰安婦」問題、現代韓国の性買売研究。Fight for Justice共同代表。主著に『植民地期朝鮮の教育とジェンダー』『継続する植民地主義とジェンダー』(以上世織書房)、共編著に『もっと知りたい「慰安婦」問題:性と民族の視点から』(明石書店)、『植民地遊廓――日本の軍隊と朝鮮半島』(吉川弘文館)、『歴史と責任――「慰安婦」問題と一九九〇年代』(青弓社)、『女性国際戦犯法廷20年』(世織書房)、『性暴力被害を聴く:「慰安婦」から現代の性搾取へ』『記憶で書き直す歴史――「慰安婦」サバイバーの語りを聴く』(以上岩波書店)など多数。
*第2回予定「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷25年」
*第3回予定「現代韓国の反性売買女性運動――ポストコロニアル・フェミニズム運動の一断面」
主催:平和力フォーラム
連絡先:07023071071(前田)
E-mail:akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp
深沢潮を読む(4)「在日」を生きた歴史と父の物語
深沢潮『ひとかどの父へ』(朝日新聞出版、2015年)
『ハンサラン 愛する人びと』で愛のかたちと家族のかたちを描き、『伴侶の偏差値』で平凡で普通でつまらない人生と溢れる物語を、『ランチに行きましょう』で非日常へのささやかな挑戦を始めた深沢潮は、第4作となる本書で、さらに挑戦を続ける。
現代を生きる家族、とりわけ母と娘の普遍的なテーマを追いかけてきたが、本書では父が主題となる。最終盤にようやく登場する父だが、父が背負った歴史の大きさと厳しさが全編を貫く。だが、母と娘も、父の物語に翻弄されるだけではない。父の物語を受け止め、それぞれの人生を紡いでいく。
もう1つの挑戦は、長編小説への歩みである。これまでの3作品は連作短編であったが、本作品は長編小説である。とはいえ、得意の連作短編の手法を元に長編化を試みている。
*
日本が戦後復興期を経て高度成長を始めた、東京オリンピックの1964年に、川崎の朝鮮人集住地区で出会った謎の朝鮮人と日本人女性。
1977年、母に育てられた成績優秀ながら孤独を抱え込んだ女子生徒の表層の悩みと深層の秘密。
夫が行方不明となる中、娘を育てて、必死に働き、成功した母親の絶頂期、1990年に襲った突然のスキャンダル。
ようやく明らかになる父親の秘密。そこには過去の日本の朝鮮半島植民地支配、戦後の朝鮮半島の分断、そして韓国軍事独裁政権への抵抗としての民主化運動がからまりあう。
2014年、祖母と母(娘)と孫のソウル観光が、冒頭と巻末で描かれ、父と娘の出会いと、和解ならぬ和解が遠くに見える。
1964年から2014年へと至る半世紀のスパンだが、女性たちの人生の転機を切り取って、愛、信頼、不信、憎悪、ぶつかり合い、思い出が時空間を満たす。
密入国、軍事独裁、抵抗の民主化運動、大統領狙撃といった東アジア現代史は、ほとんどいつも男たちの闘いとして描かれてきたが、深沢は同じ時代を生き抜く女性たちを主役に据える。
母(娘)を中心にした作品なので、孫娘の思いはほとんど描かれないのが、やや気になる。
*
在日文学は、歴史塗れの日本と朝鮮、半島の政治的分断、朝鮮への帰国事業、韓国の軍事独裁と民主化運動という激動に突き動かされ、歴史を全身で受け止めながら闘ってきた。
現代を生きる女性の意識を主題に据えてきた深沢潮は、日本女性/在日女性の愛と家族の物語を見事に表現してきたが、本作品では在日の歴史そのものをベースにおいて、そのうえで物語を紡ぐ。鮮やかな手法に感銘を受ける。
護憲ネットワーク北海道 2025年第2回講演会
非武装中立のリアリズム
~軍隊のない国から見た日本~
本年2025年は先の戦争が終結して80年。日本国憲法のもと、まがりなりにも日本は海外で戦争に参加することなく「平和国家」の道を歩んできました。しかし、安倍政権以降、集団的自衛権の容認・「安保三文書」の策定・敵(基)地攻撃能力の保持・軍事費のGDP比2%への激増そして沖縄南西諸島の軍事基地化など軍拡に狂奔しています。軍拡で国民の安全と生活そして平和を本当に守れるのでしょうか。今一度、みんなで考えあってみませんか!
日時:2025年10月17日(金曜日)
開場午後5時30分 開演午後6時から午後8時
場所:かでる2・7
10階1060会議室
札幌市中央区北2条西7丁目 ℡ 011-204-5100
参加費:資料代として800円を申し受けます
講師:前田 朗
(特別参加)
清末愛砂さん
前田朗さんと「RAWAと連帯する会」の共同代表としてご活躍の室蘭工業大学大学院教授清末愛砂さんに特別参加いただき、現状報告などをする予定です。
主催:護憲ネットワーク北海道
連絡先
:
札幌市中央区北12条西18丁目1-19 ブリック札幌桑園204号室
℡.011-676-5862 Fax.011-590-0316 Email ; gokennet@bf.wakwak.co
賛同:市民自治を創る会、戦争させない市民の風・北海道
後援:北海道平和フォーラム
KEMPOフェスタ
戦後80年!あらゆる戦争を許さない!憲法9条を守りひろめる小樽地区平和集会
2025年10月19日(日)14:00~16:30(会場13:30)
小樽市生涯学習プラザ・レビオ第1・2学習室
「非武装中立のリアリズム~~軍隊のない国家から見た日本」
前田 朗
主催:小樽ピースアクション
後援:北海道9条連
賛同団体:後志平和運動フォーラム、軍拡NO!女たちの会・北海道、みみずく舎、小樽・子どもたちの環境を考える親の会、生活クラブ小樽支部、ゼロ番地で沖縄について考える会、新日本婦人の会小樽支部、『週刊金曜日』小樽読者会、平和憲法を未来へつなぐ会・小樽、九条の会小樽ネット、猫の事務所九条の会
お問い合わせ:090-8288-9623
いつも「日本人ファースト」だった
―植民地主義と排外主義の現在―
10月18日(土)開場13時、開会13時15分~15時45分
札幌市教育文化会館302研修室
札幌市中央区北1条西13丁目
※地下鉄東西線「西11丁目」駅より徒歩5分
参加費800円(25歳以下は無料)
2025年夏、「日本人ファースト」が声高に叫ばれました。いつも見てきた光景です。大日本帝国憲法の下、周辺各国を侵略した日本は「大東亜の盟主」と称しました。日本国憲法は象徴天皇制を冒頭に掲げ、「国民の権利」を唱えて、外国人の権利を著しく制限しました。21世紀に入っても差別とヘイトと排外主義がはびこっています。実際は「アメリカ・ファースト、日本人セカンド、その他の外国人ラスト」が実態で、アメリカに追随して言いなりになる「日本主義」です。差別と排外主義を克服するための市民の課題を共に考えましょう。
◆市民会議メンバーからの報告(30分)
「アイヌ史実を学ぶパネル展から」
鈴木 澄江
「日常のなかから出会わさせられること⌋ 曺金 時江
「朝鮮学校差別」 黒田 敏彦
◆ゲスト講演(60分) 前田朗
◆質疑・意見交流(30分)
札幌市に人種差別撤廃条例をつくる市民会議
問合せ先 TEL.090-6446-3974(チョキムシガン)
syu@sapporoyu.org(さっぽろ自由学校「遊」:小泉)
深沢潮を読む(3)非日常へのささやかな挑戦
深沢潮『ランチに行きましょう』(徳間書店、2014年)
8月末から9月中旬にかけて、東京、さいたま、横浜、川崎、茅ケ崎で関東大虐殺の追悼式に参加した。千葉や本庄や寄居でも開かれたがバッティングしていて参加できなかった。102年目の現在、「日本人ファースト」というねじまがった排外主義がこの国を覆っている。もともと日本主義、日本人優先思考が定着している国だ。日本国憲法自体がレイシズムの根拠と言っても良い。天皇制と国民主義が外国人差別を正当化してきた。それでも飽き足りなくて、「日本人ファースト」と叫ぶ。それほど自由と平等が弱体化し、マジョリティの自己中心主義が蔓延している。
*
深沢の作品は、日常の中の小さな物語の集積を通じて、この社会の縮図を描き出す。
「幼稚園ママ」「シングルママ」「スピリチュアルママ」「ママブロガー」「ビューティフルママ」――成城学園に家庭を持ち、幼稚園の子どもの送迎の場で出会った女性たちが、育児、子どもの進学、幼稚園でのいじめ、家庭、夫の浮気の疑い、素敵なレストランでの食事、インチキ・スピリチュアルでの性被害など、多様な場面で遭遇し、すれ違い、ぶつかりあい、それでも仲良くランチをともにする。
信頼、安心、不信、疑惑、嫉妬、悩み事相談、助言、ひそひそ話、裏切りを、お互いに共有しながら、それぞれの「自分」を生きようとする。
都会の家庭の日常が次々と積み上げられ、堀り崩され、交錯する。若きママたちの平凡で、悩み多き人生の一断面である。
ところが、深沢はここで一瞬飛躍を試みる。最終章「チームママ友」で、5人のママたちが一丸となってTV番組に挑戦する。5人組が競い合うクイズ番組『チームで挑戦』に出場した5人は、家庭環境の違いも子どもたちのいじめも超えて、自分のために、だが一致団結してクイズに挑戦する。日常ではなく、TV番組への挑戦という非日常に乗り出すことで、深沢作品が小さな変化を見せる。クイズ挑戦は、TV局の裏工作によって、挫折するが、それでも5人は結束して歩みながら、日常に帰っていく。
ここから深沢作品の次の展開が始まるのかどうかわからないが、いい意味で読者を裏切る試みだろう。
コリアン・マイノリティ研究会
第251回月例研究会
1998年のヘイト・クライム
―千葉朝鮮会館強盗殺人事件について
前田 朗(朝鮮大学校法律学科講師・東京造形大学名誉教授)
日 時:2025年10月25日(土)15:00~17:00 終了後、懇親会
場 所:猪飼野セッパラム文庫
(大阪市生野区新今里2-9-16 もと辻本写真館1階 新今里公園北側)
近鉄「今里駅」から5分・地下鉄「今里駅」から10分 大阪コリアタウン東端から東へ徒歩15分
参加費:1000円・会員800円・学生・院生・U25無料
ウトロ放火事件(2021年8月30日)が起きて、ヘイト・クライムという言葉が普及しました。ヘイト・クライムは長年ずっと起きてきました。1998年の千葉朝鮮会館強盗殺人事件、2018年の朝鮮総連本部銃撃事件が典型です。これらの事件を日本社会は忘れようとしますが、消すことのできないヘイト・クライムです。
*
「〈羅勲(ラフン)副委員長殺害事件〉千葉殺人放火事件から1年/理解しがたい捜査」『朝鮮新報』1999年10月13日
総聯千葉支部の羅勲副委員長(当時42歳)が殺害され、犯行現場の千葉朝鮮会館が放火された事件は、15日で丸1年となる。真相は今もって闇の中だが、犯人を追うべき警察の理解しがたい動きも含め、在日同胞と総聯にとっての不安材料は、解消されるどころかむしろ増大している観さえある。
「なぜ総聯と取り引きするのか」「総聯の人間は北朝鮮で教育を受けて活動する日本の敵だ」
9月22日、会館に出入りする日本人業者は突然、事件の捜査を担当している県警捜査一課員から脅しとも取れる暴言を浴びせられた。
また、捜査員が年初の2月9日に朝銀職員を、9月14日には総聯職員を尾行していた事実も発覚してい
る。
近年、チマ・チョゴリを着た朝鮮学校の生徒をはじめ、在日同胞をねらった暴力事件、いやがらせの例には枚挙にいとまがない。とくに昨年8月末以降、狂乱的とも言える「テポドン」騒動の中で事態は深刻さを増した。羅副委員長殺害事件は、その代表的なものだと言える。
しかし、再発防止のための捜査、対策が徹底された形跡はまるで見当たらない。逆に、取材していて聞こえて来るのは、公安当局の「総聯シフト」の情報ばかりだ。
*
主 催:コリアン・マイノリティ研究会 NPO 法人 猪飼野セッパラム文庫内
090-9882-1663
masipon2023@gmail.com 懇親会への参加の有無も
軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える
無防備地域宣言で憲法9条のまちを!
武力は平和を作れない!
武力は平和を守れない!
武力は国民を守れない!
殺すことも殺されることもない
チェンジを!
日時:9月27日(土)午後1:30~3:30、受付1:00,
会場:日本キリスト教団高崎教会
(群馬県高崎市東町134-7、JR高崎線高崎駅東口徒歩7分)
参加費:500円
主催:公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会
連絡先09074288055
深沢潮『伴侶の偏差値』(新潮社、2014年)
週刊新潮差別コラム事件は、その後、深沢潮がその著書の版権を引き上げると発表がなされた。新潮社の方は、型通りのお詫びですませようとしている。お詫びと言っても、差別したことを詫びていない。謝罪していない。差別と批判されるようになった事態、世間を探せたことをお詫びしているにすぎない。日本的と言うか、なんというか。編集長を変えることもないのだろうか。
*
8月31日、紀伊国屋書店が、「差別的な表現を助長しかねない」と謝罪表明をした。紀伊國屋書店大阪・本町店の公式X(旧ツイッター)で、同アカウントで紹介した書籍が「差別的な表現を助長しかねない可能性があった」として、謝罪文が掲載された。当該投稿を削除したことも報告された。同アカウントでは直前に、トルコ国籍のクルド人をめぐる社会問題をテーマにしたノンフィクション書籍の販売を伝える投稿が拡散されたが、その後、見られなくなっている。埼玉県鶴ヶ島市議会議員の福島めぐみ氏が「書店としてさまざまな本を置くのは100歩譲って認めるとして、せめてヘイト本を宣伝しないでほしい」とXにポストしていたという。
*
『伴侶の偏差値』は深沢の第2作で、最初の長編小説だ。
有名女子大学卒業の仲良し3人組、真紀、佳乃、未央が久しぶりに表参道のカフェで会う。真紀は会社員として勤務しているが、未婚の30代女性。佳乃は早めに結婚して子育て中。未央は作家志望だったり歌手志望だったり、チャレンジ精神に富むが芽が出ない。
仲良し3人組だったが、いつも少しぶつかりあい、疑りあい、嫉妬しあい、同情しあい、だが相談し合う仲。2000年代から2010年代にかけて、有名女子大学卒業で、それなりにめぐまれながらも、自己実現に悩み、恋愛やパートナーとの生活に悩み、家族との関係に悩む。言ってみれば、平凡で普通でつまらない庶民の日常が描かれるが、そこに物語が溢れている。
結婚願望を強く持ち、将来住むべくモデルルームをめぐる趣味の持ち主でもある真紀は、母親と弟に翻弄されながら、会社では同僚男性と間延びした恋愛中。なんとか結婚をと思っていたのに、東日本大震災のさなか、彼氏はお別の同僚女性と浮気し、妊娠させて、結婚する。捨てられた真紀は、表参道のカフェの好青年と付き合うが、この青年は自分を育ててくれた男性への思慕から逃れられない。真紀は昔の不倫相手と性愛にふけるが、それも重荷にしかならない。
最初から最後まで、真紀、佳乃、未央の日常、ささいな不満、呟き、家族の物語である。唯一、東日本大震災という巨大な場面転換が訪れ、話題が飛躍的に展開するかと期待しても、そうはならない。むしろ、大震災の衝撃は、平凡で普通でつまらない人生の意味を問い直す方向に機能する。大文字の政治や社会ではなく、等身大の庶民の日常を描き続けることで、深沢はいま、ここで、生きる人々の精神世界を浮き彫りにする。
小山留佳「ヘイトスピーチ規制をめぐる日本法の問題点と国際人権法の必要性」『神奈川大学大学院法学研究論集』34号(2025年)
第一章
ヘイトスピーチ規制と国際人権法の視点の重要性
第二章
レイシズムとヘイトスピーチ
第三章
日本におけるヘイトスピーチの規制
第四章
国際人権法におけるヘイトスピーチ法の規制
第五章
結論と課題
*
小山は神奈川大学大学院生だが、本論文は東京女子大学大学院に提出した修士論文に加筆修正を施したものだと言う。文献・資料も含めて63頁に及ぶ論文である。
目次から直ちにわかる通り、ヘイトスピーチの議論に際して、日本国憲法だけを論じるのではなく、国際人権法の視点を重視しているのと同時に、議論の前提としてレイシズムの問題をきちんと取り上げている。全面的に賛同できる論文だ。
小山の問題意識は、ヘイトスピーチの議論をする際に対抗言説の有無や伝統的表現の自由の枠組みで対応することは適切と言えるのか。現行法は、ヘイトスピーチの根底にあるレイシズムの内容を想定してきたか。現行法は、国際人権法を受容してきたかという点にある。
小山は、第二章のレイシズム論では、まず「レイシズムと人種差別主義の相違点」を取り上げている。「日本の差別の問題を考える際に、『人種差別』という言葉を使うと、不可視化されてしまう差別が存在すると考える」からである。レイシズムを人種民族に限定せず、「変えられない属性を基にして、ある集団(またはその集団に属する人)を差別すること」と定義し、交差性や複合差別にも視線を送る。
小山は、欧州と日本とで、レイシズムには共通点(植民地主義の下での構造的差別)があるが、日本では「民族」概念による差別とその不可視化があることと、「反レイシズム規範の欠如によるレイシズムが存在すること自体が不可視化されている」ことに相違があると見る。レイシズムとヘイトスピーチの関係についてはアメリカで用いられてきた「ヘイトのピラミッド」を参照して理解する。
第三章では、刑事裁判と民事裁判(京都朝鮮学校襲撃事件)を検討し、ヘイトスピーチ解消法、及び川崎市条例を検討する。
小山は第四章で、国際自由権規約及び人種差別撤廃条約を検討する。「人権条約を確認すると、ヘイトスピーチが虐殺に繋がる危機感を背景にして、レイシズムのピラミッドの第四段階であり『差別助長要素』でもあるヘイトスピーチを抑止するために、差別扇動行為(ヘイトスピーチ)を禁止する法律の制定を国家に義務付けていることが分かる。人権条約が過去の人権蹂躙の反省を出発点としていることを想起すると、人権条約の実施は、マジョリティに自身の『人種的忘却性』を意識させ、『忘却』されている特権や、それを発端とする制度的レイシズムなどを可視化させる『差別抑止要素』の役割を持つと期待できる。」という。
小山の結論。
「以上を踏まえて、日本のヘイトスピーチ規制を考える際に必要なことをまとめると次のようになる。まず、現行法での対応を考える際には、ヘイトスピーチにより侵害されている権利・利益と現行法が想定している保護法益や権利・利益との相違点を確認する必要がある。次に、ヘイトスピーチが侵害する権利や利益を明らかにするためには、ヘイトスピーチの根底にある日本特有のレイシズムを認識することが必要である。そして、現在の日本にはヘイトスピーチそれ自体を処罰の対象とする法律が存在せず、不特定集団に対するヘイトスピーチの規制は現行法上不可能であり、特定集団に対する暴力行為を重罰化した法律が存在しないため、『差別抑止要素』として、国際人権法を具体化したヘイトスピーチ禁止法や、包括的差別禁止法が必要である。その立法や実施の際には、マジョリティが『人種的忘却性』を認識することが重要である。」
小山の議論はレイシズム、差別、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを射程に入れて、国際人権法による対応を追求して、日本の議論状況に反省を迫るものであり、国際社会の常識に合致している。現代人権論が重視する基本的価値に従って反差別の立法と法解釈を展開する課題が浮き彫りになる。
国際人権法におけるヘイトスピーチの議論は2010年代以後、ラバト行動計画、CERD一般的勧告35、国連ヘイトスピーチ戦略など、さらに大きな発展を見ている。他方で、2020年代、EU諸国をはじめ排外主義が再び台頭し、国際人権法の危機も現実化しようとしている。今後その研究も重要となるだろう。
東京造形大名誉教授 前田 朗さんと
「負の歴史、加害の歴史」と排外主義を考えよう
・ 日本ではヘイトスピーチだけをとり上げて「表現の自由」の問題として議論されるが、もともとヘイトクライムである。それが差別であり差別の煽動、脅迫、迫害であることは明らか。だからヘイトクライム。問題の本質は、まず憲法13条。個人の尊重、人格権。他人のアイデンティティを否定することが許されるのか。もう一つは14条。法の下の平等である。
・ 平和主義はあの戦争や植民地支配を反省したがゆえにとの前提にたつ。憲法がつくられ13条と14条がある。国際社会の常識ではヘイトスピーチは暴力であり迫害であり人道に対する罪につながるできごと、だから規制しなさいということ。その次に「表現の自由」となる。12条に憲法上の権利や自由には責任が伴う。責任ある「表現の自由」について議論しなければならない。
(集会「もの言えぬ社会をつくるな
ー戦争をする国にしないためにー」 から)
群馬の森の追悼碑に対する攻撃は、戦時中、大日本帝国が行った「強制連行」を否定する言説が発端でした。ヘイト団体だけでなく政府や群馬県も加担し、裁判所も続きました。歴史学の検証によるものではなく、政治が歴史を否定・改ざんしたものといえます。また国内では、戦時中の被害については広く報道されますが、近隣諸国への加害の事実はあまり報道されません。この課題を追及する前田朗さんに、問題の本質に切り込んでいただきます。
□日 時 9月26日(金)18:00~19:30
□場 所 群馬県教育会館 3階中会議室
・前橋市大手町3-1-10 TEL 027-322-5071
・教育会館の駐車場は利用できません。近隣のⓅをご利用下さい。
□内 容 前田 朗さんの講演と意見交換
□参加費 500円
主 催 戦後80年を問う群馬市民行動委員会(略称:アクション80)
事務局 前橋市大手町3-1-10群馬県教育会館内 mail:gunma.action80@gmail.com