Monday, October 06, 2025

深沢潮を読む(5)アイデンティティとレッテル

深沢潮を読む(5)アイデンティティとレッテル

深沢潮『緑と赤』(実業之日本社、2015年)

 

ずっと通名で生きてきたのに、海外旅行のためパスポート(再入国許可証)を入手して自分が在日韓国人キム・ジヨンであることに驚き、たじろぎ、悩む金田知英。

K-POPファンとして韓国が大好き、韓国語を学ぶ梓は、新大久保でヘイト・デモを目撃し驚く。

李家のあととりなのに、父親の意向に反して日本に留学し、日本女性に好意を抱くジュンミン。

北関東の町に生まれ平凡な人生を送ってきたが、新大久保でヘイト・デモに遭遇し、社会問題に目覚め、反ヘイトのカウンターにのめり込み、実家を離れて東京で暮らす良美。

在日韓国人から帰化して金田となったが、ソウルに留学している中、好意を抱いた日本人女性知英(実は在日韓国人)とすれ違い、大学時代の親友がヘイト発言を繰り返すことに衝撃を受ける龍平。

ヘイト・デモに脅かされ、在日、韓国、日本の間の亀裂に直面し、自分と家族、特に自殺した父親の人生を想い、乱れる金田知英/キム・ジヨン。

2014年から15年にかけて、新大久保のヘイト・デモが吹き荒れた時期に書かれた小説である。参考文献に、安田浩一『ヘイトスピーチ』や師岡康子『ヘイト・スピーチとは何か』が挙げられている。今日朝鮮学校襲撃事件が2009年~10年、新大久保ヘイト・デモが201314年、川崎桜本ヘイト・デモがこれに続く。2016年にヘイト・スピーチ解消法が制定された。

2014年に新大久保や川崎に暮らしたり、働いたり、買い物に行った人々は異様な光景に遭遇していた。ジヨン、梓、ジュンミン、良美、龍平は、新大久保やソウルで出会い、すれ違う。アイデンティティの危機に直面し、惑い、不安に襲われながら葛藤する。在日韓国人も日本人も、それぞれ異なる形だがアイデンティティという爆弾を抱えて生きる。

人は誰でも自分なりのアイデンティティを形成し、維持し、他者と交流して成長していく。支配的なマジョリティの一員であれば、アイデンティティなんてどうでもいい、と言い捨てることができる。しかし、マイノリティにとってアイデンティティは深刻な爆弾となる。アイデンティティに縋って生きることもあるが、アイデンティティに引き裂かれることもある。アイデンティティを攻撃されることもあれば、アイデンティティを隠さねばならないこともある。他者から勝手にアイデンティティを押し付けられることさえある。

民族や国籍は近代国民国家においてはもっとも重要なアイデンティティとされるため、ハードルが高い。個人では乗り越え不能に見える。内面を支配していることが多い。反発しても、恐怖や不安が自分に帰って来る。手に負えないアイデンティティを、攻撃されたり、利用されたり、押し付けられたりするのだから、ますますやっかいだ。アイデンティティは両刃の刃となるので、大切にすればするほど、苦悩が深まる場合もある。

この国でマジョリティの一員として生まれ育ち、そのままマジョリティで居続ける者には、自分で体験することのできない苦悩である。

2014年の東アジア(日本と韓国)を生きる庶民の精神世界を独自のタッチで描いた作品である。

「緑と赤」は、日本政府発行の旅券・再入国許可証の表紙の色の違いを意味する。

Sunday, October 05, 2025

『琉球弧を戦場にするな』上映会

『琉球弧を戦場にするな』上映会

 

118日(土)午後6時半~8時半、6時開場

東京ボランティア市民活動センター(飯田橋) 飯田橋駅隣RAMLA10

 

『琉球弧を戦場にするな』(2024年、55分)上映

    藤本幸久&影山あさ子製作・監督/森の映画社

 

問題提起:浜恵介(立教大学兼任講師)「地方自治体の平和政策」

 

参加者による討論              

*参加費(資料代含む):500

 

*『琉球弧を戦場にするな』:藤本幸久&影山あさ子製作・監督/森の映画社。九州の南から台湾へ連なる琉球弧の島々。基地は沖縄本島だけにあるのではない。馬毛島、奄美大島、宮古島、石垣島、与那国島で、猛烈な勢いで進む自衛隊の新基地建設。基地も演習場もない徳之島でも行われる日米共同訓練。準備されている次の戦争の戦場は・・・

 

*浜恵介:1976年、広島市生まれ。「父を返せ、母を返せ」の原爆詩人・峠三吉の遠縁。福島大学大学院地域政策科学研究科修士課程修了。戦後政治史・平和学専攻。地方自治体職員を経て、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程入学。自治体職員の経験を活かし、平和学と公共政策を融合させるべく自治体レベルでの「プラグマテック」な非核化の構築などの研究を進める。

 

共同開催:平和力フォーラム/ウエッブアフガン

連絡先:070-2307-1071(前田) 

E-mail:akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Wednesday, October 01, 2025

共同テーブル10.30シンポ 「ファーストとは何か?」

「新しい戦前にさせない」連続シンポジウム第17

共同テーブル10.30シンポ

「ファーストとは何か?」

多文化共生、ジェンダー平等の社会をめざして

私たちはヘイトを許さない

 

<リード文>

 先の参議院選挙では、定数1の群馬県で参政党候補者が当選した自民党候補者に肉薄する票を得ました。移住労働者が多く暮らしている東毛地域の太田市は住民登録者の6%近くがブラジル、ベトナム、フィリピン人など。邑楽郡大泉町はブラジル、ネパール、ベトナム人などが約20%を占め、両自治体とも早くから多文化共生政策を推進、互いの文化を尊重する地域を創ってきました。

 反戦平和の運動が取り組まれ、革新勢力が強い沖縄。参議院選挙でもオール沖縄の高良さちかさんが勝利しています。しかし、3位の参政党候補が得票率20%、同時実施の那覇市議会議員選挙では、史上最多の9千票超えでトップ当選でした。その女性市議は「性別は男と女で十分」「教育勅語賛成」などと発言していましたが、初の議会質問で、トランスジェンダー性自認が「伝染する」、「トランスジェンダーの生徒に必要な対応は、心の性別に基づく配慮よりも心の傷を治療できる心理士を紹介すること」と発言しています。

 多文化共生やジェンダー平等、反戦平和などの取り組みが進んでいる地域で、それを批判、否定する政治勢力が一定の支持を集めるのは、欧米でも起こっています。今回のシンポでは、その実情を把握し、どういった取り組みをしていくのか、登壇者とともに考え、明日からの行動に繋げていきましょう。

 

日時  1030日(木)18時開場、1815分~2030

場所  文京区民センター3A会議室

資料代 1000

主催  共同テーブル

 

申込先 多くの参加者が見込まれます。定員(250名)になり次第、申し込みを締め切りますので、大変恐縮ですが、至急、下記のメールアドレスまで、出席申込(氏名・電話番号記入)をお願いいたします。 E-mail: e43k12y@yahoo.co.jp

 

<プログラム>

1 開会(進行:白石 孝~共同テーブル発起人)

2 第1部 

・移住労働者問題から「ファースト」を考える 

    鳥井 一平(NPO法人・移住者と連帯する全国ネットワーク共同代表理事)

  ・在日への差別

 辛 淑玉(のりこえねっと共同代表)

3 休憩 

4 第2部 なぜ極右政党が支持を伸ばしたか 

  ・沖縄から 又吉 俊充(沖縄タイムス記者)

  ・群馬から 諏訪 哲也(交通ユニオン書記長)

5 第3部 「人間にファーストもセカンドもない」

ラサール石井参議院議員

登壇者と会場からの意見交換

6 まとめと閉会挨拶

   

共同テーブル連絡先:藤田高景 090-8808-5000/石河康国 090-6044-5729

  ●オンライン配信あり→https://youtube.com/live/E3rw27FZTOI?feature=share

Tuesday, September 30, 2025

インタヴュー講座:脱植民地主義のために(第1回)

インタヴュー講座:脱植民地主義のために(第1回)

敗戦80年の今日、日本の政治社会は過去の侵略戦争と植民地支配を忘却し、日本人の戦争被害だけを語ります。歴史の風化と浸蝕が進んでいます。しかし、植民地主義は過去の歴史ではなく現在の「日本問題」です。過去を問い直しながら現在と将来の課題に挑む必要があります。ジェンダー史研究者の金富子さんに脱植民地主義の課題について語ってもらいます。

日時:111日(土) 午後6時半~8時半(6時開場)

会場:東京ボランティア市民活動センター(飯田橋RAMLA10階)

参加費:500

 

ジェンダー視点から見た関東大虐殺

  ――1923年のジェノサイドと「レイピスト神話」

金富子さん

*講師プロフィール:東京外国語大学名誉教授、専攻は植民地朝鮮ジェンダー史、植民地公娼制や日本軍「慰安婦」問題、現代韓国の性買売研究。Fight for Justice共同代表。主著に『植民地期朝鮮の教育とジェンダー』『継続する植民地主義とジェンダー』(以上世織書房)、共編著に『もっと知りたい「慰安婦」問題:性と民族の視点から』(明石書店)、『植民地遊廓――日本の軍隊と朝鮮半島』(吉川弘文館)、『歴史と責任――「慰安婦」問題と一九九〇年代』(青弓社)、『女性国際戦犯法廷20年』(世織書房)、『性暴力被害を聴く:「慰安婦」から現代の性搾取へ』『記憶で書き直す歴史――「慰安婦」サバイバーの語りを聴く』(以上岩波書店)など多数。

*第2回予定「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷25年」

*第3回予定「現代韓国の反性売買女性運動――ポストコロニアル・フェミニズム運動の一断面」

主催:平和力フォーラム

連絡先:07023071071(前田)

E-mail:akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Monday, September 29, 2025

深沢潮を読む(4)「在日」を生きた歴史と父の物語

深沢潮を読む(4)「在日」を生きた歴史と父の物語

深沢潮『ひとかどの父へ』(朝日新聞出版、2015年)

 

『ハンサラン 愛する人びと』で愛のかたちと家族のかたちを描き、『伴侶の偏差値』で平凡で普通でつまらない人生と溢れる物語を、『ランチに行きましょう』で非日常へのささやかな挑戦を始めた深沢潮は、第4作となる本書で、さらに挑戦を続ける。

現代を生きる家族、とりわけ母と娘の普遍的なテーマを追いかけてきたが、本書では父が主題となる。最終盤にようやく登場する父だが、父が背負った歴史の大きさと厳しさが全編を貫く。だが、母と娘も、父の物語に翻弄されるだけではない。父の物語を受け止め、それぞれの人生を紡いでいく。

もう1つの挑戦は、長編小説への歩みである。これまでの3作品は連作短編であったが、本作品は長編小説である。とはいえ、得意の連作短編の手法を元に長編化を試みている。

日本が戦後復興期を経て高度成長を始めた、東京オリンピックの1964年に、川崎の朝鮮人集住地区で出会った謎の朝鮮人と日本人女性。

1977年、母に育てられた成績優秀ながら孤独を抱え込んだ女子生徒の表層の悩みと深層の秘密。

夫が行方不明となる中、娘を育てて、必死に働き、成功した母親の絶頂期、1990年に襲った突然のスキャンダル。

ようやく明らかになる父親の秘密。そこには過去の日本の朝鮮半島植民地支配、戦後の朝鮮半島の分断、そして韓国軍事独裁政権への抵抗としての民主化運動がからまりあう。

2014年、祖母と母(娘)と孫のソウル観光が、冒頭と巻末で描かれ、父と娘の出会いと、和解ならぬ和解が遠くに見える。

1964年から2014年へと至る半世紀のスパンだが、女性たちの人生の転機を切り取って、愛、信頼、不信、憎悪、ぶつかり合い、思い出が時空間を満たす。

密入国、軍事独裁、抵抗の民主化運動、大統領狙撃といった東アジア現代史は、ほとんどいつも男たちの闘いとして描かれてきたが、深沢は同じ時代を生き抜く女性たちを主役に据える。

母(娘)を中心にした作品なので、孫娘の思いはほとんど描かれないのが、やや気になる。

在日文学は、歴史塗れの日本と朝鮮、半島の政治的分断、朝鮮への帰国事業、韓国の軍事独裁と民主化運動という激動に突き動かされ、歴史を全身で受け止めながら闘ってきた。

現代を生きる女性の意識を主題に据えてきた深沢潮は、日本女性/在日女性の愛と家族の物語を見事に表現してきたが、本作品では在日の歴史そのものをベースにおいて、そのうえで物語を紡ぐ。鮮やかな手法に感銘を受ける。

Sunday, September 28, 2025

護憲ネットワーク北海道 2025年第2回講演会  非武装中立のリアリズム

護憲ネットワーク北海道 2025年第2回講演会

非武装中立のリアリズム

     ~軍隊のない国から見た日本~

 

本年2025年は先の戦争が終結して80年。日本国憲法のもと、まがりなりにも日本は海外で戦争に参加することなく「平和国家」の道を歩んできました。しかし、安倍政権以降、集団的自衛権の容認・「安保三文書」の策定・敵()地攻撃能力の保持・軍事費のGDP比2%への激増そして沖縄南西諸島の軍事基地化など軍拡に狂奔しています。軍拡で国民の安全と生活そして平和を本当に守れるのでしょうか。今一度、みんなで考えあってみませんか!

 

日時:2025年10月17日(金曜日)

開場午後5時30分 開演午後6時から午後8時

場所:かでる2・7 10階1060会議室

札幌市中央区北2条西7丁目 ℡ 011-204-5100

参加費:資料代として800円を申し受けます

 

講師:前田 朗

 

(特別参加)

清末愛砂さん

前田朗さんと「RAWAと連帯する会」の共同代表としてご活躍の室蘭工業大学大学院教授清末愛砂さんに特別参加いただき、現状報告などをする予定です。

 

主催:護憲ネットワーク北海道

連絡先 :

札幌市中央区北12条西18丁目1-19 ブリック札幌桑園204号室

 ℡.011-676-5862 Fax.011-590-0316 Email ; gokennet@bf.wakwak.co

賛同:市民自治を創る会、戦争させない市民の風・北海道

後援:北海道平和フォーラム

Saturday, September 27, 2025

KEMPOフェスタ 戦後80年!あらゆる戦争を許さない!憲法9条を守りひろめる小樽地区平和集会

KEMPOフェスタ

戦後80年!あらゆる戦争を許さない!憲法9条を守りひろめる小樽地区平和集会

 

20251019日(日)14001630(会場1330

小樽市生涯学習プラザ・レビオ第12学習室

「非武装中立のリアリズム~~軍隊のない国家から見た日本」

前田 朗

 

主催:小樽ピースアクション

後援:北海道9条連

賛同団体:後志平和運動フォーラム、軍拡NO!女たちの会・北海道、みみずく舎、小樽・子どもたちの環境を考える親の会、生活クラブ小樽支部、ゼロ番地で沖縄について考える会、新日本婦人の会小樽支部、『週刊金曜日』小樽読者会、平和憲法を未来へつなぐ会・小樽、九条の会小樽ネット、猫の事務所九条の会

お問い合わせ:09082889623

Thursday, September 25, 2025

いつも「日本人ファースト」だった ―植民地主義と排外主義の現在―

いつも「日本人ファースト」だった

―植民地主義と排外主義の現在―

 

1018日(土)開場13時、開会1315分~1545

札幌市教育文化会館302研修室

札幌市中央区北1条西13丁目

※地下鉄東西線「西11丁目」駅より徒歩5

参加費800円(25歳以下は無料)

 

2025年夏、「日本人ファースト」が声高に叫ばれました。いつも見てきた光景です。大日本帝国憲法の下、周辺各国を侵略した日本は「大東亜の盟主」と称しました。日本国憲法は象徴天皇制を冒頭に掲げ、「国民の権利」を唱えて、外国人の権利を著しく制限しました。21世紀に入っても差別とヘイトと排外主義がはびこっています。実際は「アメリカ・ファースト、日本人セカンド、その他の外国人ラスト」が実態で、アメリカに追随して言いなりになる「日本主義」です。差別と排外主義を克服するための市民の課題を共に考えましょう。

 

◆市民会議メンバーからの報告(30分)

 「アイヌ史実を学ぶパネル展から」 鈴木 澄江

 「日常のなかから出会わさせられること 曺金 時江

 「朝鮮学校差別」 黒田 敏彦

◆ゲスト講演(60分) 前田朗

◆質疑・意見交流(30分)

 

札幌市に人種差別撤廃条例をつくる市民会議

問合せ先 TEL.090-6446-3974(チョキムシガン) 

syu@sapporoyu.org(さっぽろ自由学校「遊」:小泉)

Thursday, September 18, 2025

深沢潮を読む(3)非日常へのささやかな挑戦

深沢潮を読む(3)非日常へのささやかな挑戦

深沢潮『ランチに行きましょう』(徳間書店、2014年)

 

8月末から9月中旬にかけて、東京、さいたま、横浜、川崎、茅ケ崎で関東大虐殺の追悼式に参加した。千葉や本庄や寄居でも開かれたがバッティングしていて参加できなかった。102年目の現在、「日本人ファースト」というねじまがった排外主義がこの国を覆っている。もともと日本主義、日本人優先思考が定着している国だ。日本国憲法自体がレイシズムの根拠と言っても良い。天皇制と国民主義が外国人差別を正当化してきた。それでも飽き足りなくて、「日本人ファースト」と叫ぶ。それほど自由と平等が弱体化し、マジョリティの自己中心主義が蔓延している。

深沢の作品は、日常の中の小さな物語の集積を通じて、この社会の縮図を描き出す。

「幼稚園ママ」「シングルママ」「スピリチュアルママ」「ママブロガー」「ビューティフルママ」――成城学園に家庭を持ち、幼稚園の子どもの送迎の場で出会った女性たちが、育児、子どもの進学、幼稚園でのいじめ、家庭、夫の浮気の疑い、素敵なレストランでの食事、インチキ・スピリチュアルでの性被害など、多様な場面で遭遇し、すれ違い、ぶつかりあい、それでも仲良くランチをともにする。

信頼、安心、不信、疑惑、嫉妬、悩み事相談、助言、ひそひそ話、裏切りを、お互いに共有しながら、それぞれの「自分」を生きようとする。

都会の家庭の日常が次々と積み上げられ、堀り崩され、交錯する。若きママたちの平凡で、悩み多き人生の一断面である。

ところが、深沢はここで一瞬飛躍を試みる。最終章「チームママ友」で、5人のママたちが一丸となってTV番組に挑戦する。5人組が競い合うクイズ番組『チームで挑戦』に出場した5人は、家庭環境の違いも子どもたちのいじめも超えて、自分のために、だが一致団結してクイズに挑戦する。日常ではなく、TV番組への挑戦という非日常に乗り出すことで、深沢作品が小さな変化を見せる。クイズ挑戦は、TV局の裏工作によって、挫折するが、それでも5人は結束して歩みながら、日常に帰っていく。

ここから深沢作品の次の展開が始まるのかどうかわからないが、いい意味で読者を裏切る試みだろう。

Wednesday, September 10, 2025

コリアン・マイノリティ研究会 1998年のヘイト・クライム ―千葉朝鮮会館強盗殺人事件

コリアン・マイノリティ研究会

第251回月例研究会

 

1998年のヘイト・クライム

千葉朝鮮会館強盗殺人事件について

 

前田 朗(朝鮮大学校法律学科講師・東京造形大学名誉教授)

 

日 時:2025年10月25日(土)15:00~17:00 終了後、懇親会

場 所:猪飼野セッパラム文庫

 (大阪市生野区新今里2--16 もと辻本写真館1階 新今里公園北側) 

近鉄「今里駅」から5分・地下鉄「今里駅」から10分 大阪コリアタウン東端から東へ徒歩15分

参加費:1000円・会員800円・学生・院生・U25無料

 

ウトロ放火事件(2021年8月30日)が起きて、ヘイト・クライムという言葉が普及しました。ヘイト・クライムは長年ずっと起きてきました。1998年の千葉朝鮮会館強盗殺人事件、2018年の朝鮮総連本部銃撃事件が典型です。これらの事件を日本社会は忘れようとしますが、消すことのできないヘイト・クライムです。

 

「〈羅勲(ラフン)副委員長殺害事件〉千葉殺人放火事件から1年/理解しがたい捜査」『朝鮮新報』19991013

 総聯千葉支部の羅勲副委員長(当時42歳)が殺害され、犯行現場の千葉朝鮮会館が放火された事件は、15日で丸1年となる。真相は今もって闇の中だが、犯人を追うべき警察の理解しがたい動きも含め、在日同胞と総聯にとっての不安材料は、解消されるどころかむしろ増大している観さえある。

 「なぜ総聯と取り引きするのか」「総聯の人間は北朝鮮で教育を受けて活動する日本の敵だ」   

 9月22日、会館に出入りする日本人業者は突然、事件の捜査を担当している県警捜査一課員から脅しとも取れる暴言を浴びせられた。

 また、捜査員が年初の2月9日に朝銀職員を、9月14日には総聯職員を尾行していた事実も発覚してい

る。

 近年、チマ・チョゴリを着た朝鮮学校の生徒をはじめ、在日同胞をねらった暴力事件、いやがらせの例には枚挙にいとまがない。とくに昨年8月末以降、狂乱的とも言える「テポドン」騒動の中で事態は深刻さを増した。羅副委員長殺害事件は、その代表的なものだと言える。

 しかし、再発防止のための捜査、対策が徹底された形跡はまるで見当たらない。逆に、取材していて聞こえて来るのは、公安当局の「総聯シフト」の情報ばかりだ。

主 催:コリアン・マイノリティ研究会 NPO 法人 猪飼野セッパラム文庫内

090-9882-1663 masipon2023@gmail.com 懇親会への参加の有無も

 

Monday, September 08, 2025

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

軍隊のない国家で非暴力・非武装の平和主義を考える

無防備地域宣言で憲法9条のまちを!

 

武力は平和を作れない!

武力は平和を守れない!

武力は国民を守れない!

殺すことも殺されることもない

チェンジを!

 講演:前田朗


日時:927日(土)午後1:30~3:30、受付1:00,

会場:日本キリスト教団高崎教会

(群馬県高崎市東町1347JR高崎線高崎駅東口徒歩7分)

参加費:500

 

主催:公益財団法人日本キリスト教婦人矯風会

連絡先09074288055

Monday, September 01, 2025

深沢潮を読む(2)平凡で普通でつまらない人生と溢れる物語

深沢潮『伴侶の偏差値』(新潮社、2014年)

 

週刊新潮差別コラム事件は、その後、深沢潮がその著書の版権を引き上げると発表がなされた。新潮社の方は、型通りのお詫びですませようとしている。お詫びと言っても、差別したことを詫びていない。謝罪していない。差別と批判されるようになった事態、世間を探せたことをお詫びしているにすぎない。日本的と言うか、なんというか。編集長を変えることもないのだろうか。

831日、紀伊国屋書店が、「差別的な表現を助長しかねない」と謝罪表明をした。紀伊國屋書店大阪・本町店の公式X(旧ツイッター)で、同アカウントで紹介した書籍が「差別的な表現を助長しかねない可能性があった」として、謝罪文が掲載された。当該投稿を削除したことも報告された。同アカウントでは直前に、トルコ国籍のクルド人をめぐる社会問題をテーマにしたノンフィクション書籍の販売を伝える投稿が拡散されたが、その後、見られなくなっている。埼玉県鶴ヶ島市議会議員の福島めぐみ氏が「書店としてさまざまな本を置くのは100歩譲って認めるとして、せめてヘイト本を宣伝しないでほしい」とXにポストしていたという。

『伴侶の偏差値』は深沢の第2作で、最初の長編小説だ。

有名女子大学卒業の仲良し3人組、真紀、佳乃、未央が久しぶりに表参道のカフェで会う。真紀は会社員として勤務しているが、未婚の30代女性。佳乃は早めに結婚して子育て中。未央は作家志望だったり歌手志望だったり、チャレンジ精神に富むが芽が出ない。

仲良し3人組だったが、いつも少しぶつかりあい、疑りあい、嫉妬しあい、同情しあい、だが相談し合う仲。2000年代から2010年代にかけて、有名女子大学卒業で、それなりにめぐまれながらも、自己実現に悩み、恋愛やパートナーとの生活に悩み、家族との関係に悩む。言ってみれば、平凡で普通でつまらない庶民の日常が描かれるが、そこに物語が溢れている。

結婚願望を強く持ち、将来住むべくモデルルームをめぐる趣味の持ち主でもある真紀は、母親と弟に翻弄されながら、会社では同僚男性と間延びした恋愛中。なんとか結婚をと思っていたのに、東日本大震災のさなか、彼氏はお別の同僚女性と浮気し、妊娠させて、結婚する。捨てられた真紀は、表参道のカフェの好青年と付き合うが、この青年は自分を育ててくれた男性への思慕から逃れられない。真紀は昔の不倫相手と性愛にふけるが、それも重荷にしかならない。

最初から最後まで、真紀、佳乃、未央の日常、ささいな不満、呟き、家族の物語である。唯一、東日本大震災という巨大な場面転換が訪れ、話題が飛躍的に展開するかと期待しても、そうはならない。むしろ、大震災の衝撃は、平凡で普通でつまらない人生の意味を問い直す方向に機能する。大文字の政治や社会ではなく、等身大の庶民の日常を描き続けることで、深沢はいま、ここで、生きる人々の精神世界を浮き彫りにする。

Friday, August 29, 2025

ヘイト・スピーチ研究文献(228)

小山留佳「ヘイトスピーチ規制をめぐる日本法の問題点と国際人権法の必要性」『神奈川大学大学院法学研究論集』34号(2025年)

第一章    ヘイトスピーチ規制と国際人権法の視点の重要性

第二章    レイシズムとヘイトスピーチ

第三章    日本におけるヘイトスピーチの規制

第四章    国際人権法におけるヘイトスピーチ法の規制

第五章    結論と課題

小山は神奈川大学大学院生だが、本論文は東京女子大学大学院に提出した修士論文に加筆修正を施したものだと言う。文献・資料も含めて63頁に及ぶ論文である。

目次から直ちにわかる通り、ヘイトスピーチの議論に際して、日本国憲法だけを論じるのではなく、国際人権法の視点を重視しているのと同時に、議論の前提としてレイシズムの問題をきちんと取り上げている。全面的に賛同できる論文だ。

小山の問題意識は、ヘイトスピーチの議論をする際に対抗言説の有無や伝統的表現の自由の枠組みで対応することは適切と言えるのか。現行法は、ヘイトスピーチの根底にあるレイシズムの内容を想定してきたか。現行法は、国際人権法を受容してきたかという点にある。

小山は、第二章のレイシズム論では、まず「レイシズムと人種差別主義の相違点」を取り上げている。「日本の差別の問題を考える際に、『人種差別』という言葉を使うと、不可視化されてしまう差別が存在すると考える」からである。レイシズムを人種民族に限定せず、「変えられない属性を基にして、ある集団(またはその集団に属する人)を差別すること」と定義し、交差性や複合差別にも視線を送る。

小山は、欧州と日本とで、レイシズムには共通点(植民地主義の下での構造的差別)があるが、日本では「民族」概念による差別とその不可視化があることと、「反レイシズム規範の欠如によるレイシズムが存在すること自体が不可視化されている」ことに相違があると見る。レイシズムとヘイトスピーチの関係についてはアメリカで用いられてきた「ヘイトのピラミッド」を参照して理解する。

第三章では、刑事裁判と民事裁判(京都朝鮮学校襲撃事件)を検討し、ヘイトスピーチ解消法、及び川崎市条例を検討する。

小山は第四章で、国際自由権規約及び人種差別撤廃条約を検討する。「人権条約を確認すると、ヘイトスピーチが虐殺に繋がる危機感を背景にして、レイシズムのピラミッドの第四段階であり『差別助長要素』でもあるヘイトスピーチを抑止するために、差別扇動行為(ヘイトスピーチ)を禁止する法律の制定を国家に義務付けていることが分かる。人権条約が過去の人権蹂躙の反省を出発点としていることを想起すると、人権条約の実施は、マジョリティに自身の『人種的忘却性』を意識させ、『忘却』されている特権や、それを発端とする制度的レイシズムなどを可視化させる『差別抑止要素』の役割を持つと期待できる。」という。

小山の結論。

「以上を踏まえて、日本のヘイトスピーチ規制を考える際に必要なことをまとめると次のようになる。まず、現行法での対応を考える際には、ヘイトスピーチにより侵害されている権利・利益と現行法が想定している保護法益や権利・利益との相違点を確認する必要がある。次に、ヘイトスピーチが侵害する権利や利益を明らかにするためには、ヘイトスピーチの根底にある日本特有のレイシズムを認識することが必要である。そして、現在の日本にはヘイトスピーチそれ自体を処罰の対象とする法律が存在せず、不特定集団に対するヘイトスピーチの規制は現行法上不可能であり、特定集団に対する暴力行為を重罰化した法律が存在しないため、『差別抑止要素』として、国際人権法を具体化したヘイトスピーチ禁止法や、包括的差別禁止法が必要である。その立法や実施の際には、マジョリティが『人種的忘却性』を認識することが重要である。」

小山の議論はレイシズム、差別、ヘイトスピーチ、ヘイトクライムを射程に入れて、国際人権法による対応を追求して、日本の議論状況に反省を迫るものであり、国際社会の常識に合致している。現代人権論が重視する基本的価値に従って反差別の立法と法解釈を展開する課題が浮き彫りになる。

国際人権法におけるヘイトスピーチの議論は2010年代以後、ラバト行動計画、CERD一般的勧告35、国連ヘイトスピーチ戦略など、さらに大きな発展を見ている。他方で、2020年代、EU諸国をはじめ排外主義が再び台頭し、国際人権法の危機も現実化しようとしている。今後その研究も重要となるだろう。

Wednesday, August 27, 2025

戦後80年を問う群馬市民行動委員会(略称:アクション80)

東京造形大名誉教授 前田 朗さんと

「負の歴史、加害の歴史」と排外主義を考えよう

 

・ 日本ではヘイトスピーチだけをとり上げて「表現の自由」の問題として議論されるが、もともとヘイトクライムである。それが差別であり差別の煽動、脅迫、迫害であることは明らか。だからヘイトクライム。問題の本質は、まず憲法13条。個人の尊重、人格権。他人のアイデンティティを否定することが許されるのか。もう一つは14条。法の下の平等である。

・ 平和主義はあの戦争や植民地支配を反省したがゆえにとの前提にたつ。憲法がつくられ13条と14条がある。国際社会の常識ではヘイトスピーチは暴力であり迫害であり人道に対する罪につながるできごと、だから規制しなさいということ。その次に「表現の自由」となる。12条に憲法上の権利や自由には責任が伴う。責任ある「表現の自由」について議論しなければならない。

(集会「もの言えぬ社会をつくるな ー戦争をする国にしないためにー」 から)

 

群馬の森の追悼碑に対する攻撃は、戦時中、大日本帝国が行った「強制連行」を否定する言説が発端でした。ヘイト団体だけでなく政府や群馬県も加担し、裁判所も続きました。歴史学の検証によるものではなく、政治が歴史を否定・改ざんしたものといえます。また国内では、戦時中の被害については広く報道されますが、近隣諸国への加害の事実はあまり報道されません。この課題を追及する前田朗さんに、問題の本質に切り込んでいただきます。

 

□日 時 9月26日(金)18001930

□場 所 群馬県教育会館 3階中会議室

          ・前橋市大手町3-1-10   TEL 027-322-5071  

・教育会館の駐車場は利用できません。近隣のをご利用下さい。

 

□内 容 前田 朗さんの講演と意見交換

□参加費  500円

 

  催  戦後80年を問う群馬市民行動委員会(略称:アクション80)

事務局   前橋市大手町3--10群馬県教育会館内  mail:gunma.action80@gmail.com

Tuesday, August 26, 2025

深沢潮を読む(1)愛のかたちと家族のかたち

深沢潮『ハンサラン 愛する人びと』(新潮社、2013年)

『週刊新潮』の「名物コラム」とされる高山正之「変見自在」が終了した。もともと差別的で傲慢なコラムで、何度か読んだことはあるが、ほとんど読んでいない。今回は「創氏改名2.0」というコラムで、朝鮮植民地時代の差別政策を想起させ、外国人排斥を強化させる悪質なコラムだった。被害を受けた深沢潮が記者会見し、多くの著者が深沢を支援し、週刊新潮に苦情を寄せたため、新潮社が「お詫び」し、コラム終了となった。

深沢潮の作品は少ししか読んだことがないので、今回の「事件」を契機に、まとめて読むことにした。

2012年の新潮社の第11R-18文学賞大賞を受賞した「金江のおばさん」が深沢のデビュー作だ。本書冒頭に収められている。金江のおばさんは、在日朝鮮人女性で東京・池上在住、首都圏の在日朝鮮人の結婚を斡旋することで有名なおばさんで、多くの在日男女の出会いを斡旋してきた。日本社会に1%に満たない人口の在日朝鮮人なので、男女の出会いから結婚に至るきっかけをつくるには、金江のおばさんのような人物が必要だ。

本書には6つの短編が収められている。「四柱八字」「トル・チャンチ」「日本人(イルボンサラム)」「代表選手」「ブルー・ライト・ヨコハマ」。それぞれの主人公は異なるが、いずれも金江のおばさんが(名前だけの場合もあるが)登場する。金江のおばさんつながりの連作短編集だ。

日本人読者にとっては、在日朝鮮人の出会い、恋愛、結婚、離婚や、家族の物語に関心を持って読むことになる。一方では、在日に固有の物語だが、他方では、どこの世界にも共通の普遍的な愛と家族の物語でもある。その固有性と普遍性の連関が独特の語り口で提示される。

固有性を浮き立たせるのは言うまでもなく植民地支配とその帰結、戦後も続く朝鮮人差別という背景がある。深沢は本作では植民地支配そのものを取り上げていないし、戦後日本の差別政策を主題としていないが、常に背景にあることは言うまでもない。読者がどのように読むかは、読者自身の歴史認識に委ねられている。「帰化」をめぐる在日朝鮮人の悩み、煩悶をどう受け止めるかも、読者の側の知識や認識に委ねられている。

朝日新聞826日に、戦争と性暴力をめぐる特集が組まれ、沖縄に連行された朝鮮人女性を題材として『翡翠色の海へうたう』を書いた深沢潮も一文を寄せている。満蒙開拓団の黒川村事件を描いた映画『黒川の女たち』が話題になったので、戦時性暴力問題を取り上げた特集だ。日本人男性が日本人女性をソ連軍に差し出した黒川村事件と、日本軍がアジアの女性を蹂躙した「慰安婦」問題をはじめ、現代における戦時性暴力問題は世界的に問われ続けている。

深沢潮「アリランをうたう」

https://note.com/soundofwaves/n/n65cf1e5c14c1

「慰安婦」の日常描く 深沢さん八重瀬でトーク

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1415065

<差別なき社会へ>沖縄の朝鮮人慰安婦の小説執筆

https://www.tokyo-np.co.jp/article/184883

戦時下の性暴力、深沢潮さん「私たちの問題」 女性に向かう支配欲

https://www.asahi.com/articles/AST8N7TG5T8NUPQJ00GM.html?msockid=39656b98262d63d91b7179fe27c76213

大江健三郎を読み直す(1)

https://maeda-akira.blogspot.com/2014/01/blog-post.html

大江健三郎を読み直す(83)「最後の小説」への道、「最後の小説」からの道

https://maeda-akira.blogspot.com/2017/12/blog-post_53.html

目取真俊の世界(1)むきだしの国家暴力に抗して

https://maeda-akira.blogspot.com/2018/01/

目取真俊の世界(12)歴史・記憶・物語

https://maeda-akira.blogspot.com/2018/12/blog-post.html

 

 

Friday, August 22, 2025

9/16 三多摩反弾圧集会 講演「冤罪・弾圧と闘う取調拒否権」

講師:前田朗さん(東京造形大学名誉教授・朝鮮大学校講師・救援連絡センター運営委員)

 

9月16日(火)午後6時半開場

講演7時から他基調や連帯あいさつなど

会場:柴中会公会堂

★JR中央線/南武線/青梅線/五日市線立川駅南口から徒歩5分

★資料代500円

 

トランプ政権の強硬な関税政策や移民排斥、戦争に関しての「ディール」などで世界は混乱の中にあります。一国主義が台頭する中で日本でも移民排斥を公然と主張する差別的な政党が現れています。こんな中で国家の抑圧体制や刑事・民事弾圧の強化の動きには細心の注意を払い、警戒していく必要があります。

日本では今冤罪の多発が1つの社会問題になっていますが、これと闘う術として黙秘権の意義をしっかりとらえ直す必要があります。今回前田朗さんを講師にこの問題で講演会を行うことになりました。どなたでも参加できます。ぜひ一緒にこの問題を考えて見ましょう。

 

主催:三多摩労組争議団連絡会議・三多摩労働者法律センター

連絡先:三多摩労法センター東京都国分寺市南町2-6-7丸山会館2F

TEL 042-325-1371

Saturday, August 16, 2025

朝鮮学校とともに・練馬の会 結成15周年記念講演会

朝鮮学校とともに・練馬の会

結成15周年記念講演会

9月24日()18時30分~

【会場】

ココネリ 3階 研修室1  (区民・産業プラザ)

参加費 1000円 障害者・学生 500円

講演「民族教育権と将来の世代の人権」

講師 前田朗(朝鮮大学校法律学科講師

 

私たちは20103月から15年間、毎月1回の街頭アピールを中心に、

朝鮮学校への無償化適用を求める活動を続けてきました。

15 年という長い年月は決して誇れることではなく、

15 年かけても、朝鮮学校への「無償化」を実現できなったということです。

前田朗先生をお迎えして、民族教育への新しい視座をお聞きしたいと思います。

 

朝鮮学校とともに・練馬の会

共催:練馬教育問題交流会

連絡先 090-5445-7123 ()

subetemushoka-nerima@yahoo.co.jp

冤罪防止のための取調拒否権入門セミナー第4回学習会

冤罪防止のための取調拒否権入門セミナー第4回学習会

弁護人の援助を受ける権利

 

1015日(水)午後6時開場、開会午後6時半~8時半 

東京ボランティアセンター会議室  JR飯田橋駅隣のビルRAMLA10F

参加費(資料代含む):500

 

講演:弁護人の援助を受ける権利

葛野尋之さん

 

2024年、袴田事件再審無罪、大川原化工機事件、福井女子中学生殺人事件、大阪地検検事違法取調事件など多くの刑事事件で、不当な取調問題に注目が集まった。

不当な取調べと自白強要は、被疑者の防御権を侵害し、冤罪につながり、人格権を侵害する。

身柄拘束された被疑者は拘置所又は留置場に在房するべきであって、警察署の取調室に行く理由がない。

取調室に強引に連行することは黙秘権の軽視である。

被疑者が黙秘権行使を告げたら、取調べを中断するべきである。

黙秘権と取調拒否権の行使に当たっては弁護人の援助を受ける権利の保障が不可欠である。

講演者プロフィル: 青山学院大学法学部教授。主著『弁護人の援助を受ける権利の現代的展開』『少年司法における参加と修復』『少年司法の再構築』(以上日本評論社)『刑事手続と刑事拘禁』『未決拘禁法と人権』『刑事司法改革と刑事弁護』(以上現代人文社)等。

 

主催:平和力フォーラム

電話070-2307-1071

E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Wednesday, August 13, 2025

琉球民族遺骨返還を求める連続講座・第2回

琉球民族遺骨返還を求める連続講座・第2回

10月2日(木)18時開場、1830分開会~2030

東京ボランティア市民活動センター会議室(JR飯田橋駅隣)

参加費:500

京都大学への返還要求に続いて、東京大学への返還要求の取組が始まりました。「学問」の名による植民地主義と人種差別を問い直す運動です。

また、無自覚のうちに琉球差別を続け、差別と指摘されても無責任を貫く「憲法フェスティバル実行委員会」の問題性を報告します。

「憲法9条擁護、平和主義」と言いながら、レイシズムに鈍感で民族差別を続ける日本社会を検証します。

「東京大学への遺骨返還請求問題」

・さいとう・まの(東京大学遺骨返還プロジェクト)

松島泰勝(龍谷大学教授)

・與儀睦美(琉球人遺骨返還を求める会/関東)

「憲法フェスティバル琉球差別問題の経過」

前田朗(朝鮮大学校講師)

共催:

平和力フォーラム

琉球人遺骨返還を求める会/関東

連絡先:070-2307-1071

E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

Wednesday, August 06, 2025

<並木陽介弁護士への書簡 憲法フェスティバル実行委員会への書簡(第3信)  ――あなた方はいつまで琉球差別を続けるつもりなのですか>

<並木陽介弁護士への書簡

憲法フェスティバル実行委員会への書簡(第3信)

 ――あなた方はいつまで琉球差別を続けるつもりなのですか>

 

並木陽介様

憲法フェスティバル実行委員会様

 

 84日、並木さんからのお手紙(731日付)を拝受いたしました。ありがとうございます。

 

 お手紙を拝見して大変残念な思いをしました。私たちが提起した問題については一切言及がありません。書かれていることは、憲法フェスティバル実行委員会の内輪の理屈と奇妙な一般論に終始しています。

 

 並木さん

 下記の文章はいったい何を意味しているのでしょうか。

 「憲法フェスティバル実行委員会は、様々な立場や思想にこだわることなく、かつ弁護士や法律家だけでなく多くの一般市民の皆さんをメンバーとして構成している実行委員会です。そうした性格から、頂きました個別具体的な問題についての統一した見解をまとめて公表ないし回答するなどといったことは行っておりません。」

 

 第1に、上記の文章は事実に合致しているでしょうか。これまで長年の間、憲法フェスティバル実行委員会は憲法問題、平和問題、憲法改悪問題、安保法制問題をはじめとして多岐にわたる見解を公表してきました。政治問題、外交・軍事問題、人権問題について夥しい見解を公表してきました。憲法フェスティバル実行委員会のウェブサイトを拝見しても、フェスティバルの過去の宣伝チラシを拝見しても、そのことは明らかです。差別問題になったとたんに見解公表を渋るのはなぜでしょうか。

 

2に、ここに書かれている「性格」なるものは、憲法フェスティバル実行委員会の内輪の理屈にすぎません。一方で、憲法問題、平和問題、憲法改悪問題、安保法制問題について意欲的かつ積極的に見解を公表しながら、差別問題を指摘されたとたん、「そうした性格から、頂きました個別具体的な問題についての統一した見解をまとめて公表ないし回答するなどといったことは行っておりません」というのは理解しかねます。政治・社会・憲法・外交・軍事に関して社会的発言を繰り返してきたにもかかわらず、言いたいことは言うが、都合が悪くなると口をつぐむのでしょうか。

 

3に、ここに書かれている「性格」なるものを理由に応答を拒否することは、逆の意味で、憲法フェスティバル実行委員会の「性格」を体現しているのではないでしょうか。社会的問題について発言するが、責任は負わないと言う一方的な姿勢は、憲法フェスティバル実行委員会が社会的に発言する資格そのものに疑念を抱かせるものです。倫理観の欠如した団体が社会的活動を続けることが許されるでしょうか。

 

4に、問題は民族差別問題です。単に過去の京都大学による差別ではありません。現在の京都大学による差別であり、山極壽一氏による現在進行中の差別です。私たちは憲法フェスティバル実行委員会がこの民族差別を許容し、擁護する結果になることに警鐘を鳴らしました。

これに対して並木さんは「性格」を持ち出して回答を拒否しています。「憲法フェスティバル実行委員会は、様々な立場や思想にこだわることなく」とありますが、そこには「差別する立場」や「差別思想」も積極的に含むのでしょうか。一緒に差別すれば怖くないという姿勢に見えます。

 

下記の文章はいったい何を意味しているのでしょうか。

「一般に、出演を依頼して登壇いただいた方に対して、お願いしたテーマとは別の問題について何らかの働きかけをするようなことはすべきではありませんし、当実行委員会としても致しかねます。」

 

5に、このような「一般論」は到底認められません。社会常識に反します。およそ、ありえないことです。

例えば、84日、週刊新潮コラム差別事件に抗議する記者会見が行われました。

①週刊新潮コラムに作家の深沢潮さんが抗議 新潮社はHP上に文書掲載

https://www.asahi.com/articles/AST8432ZRT84UCVL01MM.html?msockid=39656b98262d63d91b7179fe27c76213

②週刊新潮コラムに作家の深沢潮さんが抗議…新潮社がおわび「出版社としての力量不足と責任を痛感」

https://www.yomiuri.co.jp/national/20250804-OYT1T50158/

③週刊誌コラムに作家の深沢潮さん抗議 「出版社として力量不足。責任痛感」と新潮社謝罪

https://www.sankei.com/article/20250804-X4EZJO4QW5N7HAYP5FF4ZKEJEY/

差別コラムを執筆したのは高山某というライターですが、これをチェックすることなく掲載したのは編集長であり、最終的には新潮社の責任が問われます。

TV番組で差別発言がなされれば、司会等がそれを指摘・是正するべきです。是正措置が取られなければディレクターの責任であり、最終的にはTV局の責任が問われます。

公開集会で差別発言がなされれば、主催者の責任で停止、又は事後的に是正するべきです。そもそも民族差別を繰り返してきた人物にわざわざ講演依頼したことが不見識ですが、いったん講演依頼をしたから代えられないと言うのであれば、当日の公開集会で差別的な事象が生じないように配慮するのが主催者の責任ではありませんか。

 

並木さん

あなたは第三者ではなく、当事者です。

 

6に、憲法フェスティバルにおいて現に差別的発言がなされました。浅倉むつ子氏(早稲田大学名誉教授)は、19464月の衆議院議員選挙において「女性初の参政権」が認められたと確認し、「『平等』は戦後、日本国憲法で保障された。」と断定しました。

194512月の衆議院選挙法改正の際、「沖縄県民」及び「旧植民地出身者」の選挙権が停止(剥奪)されました。1946年の衆議院選挙において、琉球の女性にも男性にも選挙権は与えられませんでした。1946年の日本国憲法は、琉球の女性も男性も排除して、制定されました。「『平等』は戦後、日本国憲法で保障された」と述べることは、琉球民族や朝鮮人を排除して「平等」を語ることです。特定の集団を排除したことを高く評価して正当化することは、差別を擁護することです。

人種差別撤廃条約では、「『人種差別』とは、人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう」(人種差別撤廃条約第11項)と定義されています。

差別する意図や目的がなくても、差別を是認し、正当化する発言はやはり差別です。琉球民族を「区別、排除、制限」し、「平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ」ることを正当化するあからさまな差別思想の表明です。

 

並木さん

あなたは弁護士です。弁護士法第1条には「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」と書かれています。差別の恐れを指摘されても何ら対処することなく、公開集会でさらに別の差別事象を招いたことをどうお考えでしょうか。憲法フェスティバル実行委員会の内輪の理屈を繰り返すのは責任倫理に反するのではないでしょうか。

弁護士法第12項には「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」とあります。差別の恐れを指摘され、事後に質問がなされたにもかかわらず、どこにも通用しない「一般論」をタテに回答を拒否するのは「誠実」と言えるでしょうか。

 

私たち(前田)は40年近く反差別の人権論研究に携わってきましたが、その中で心ない発言をしたために「差別的だ」と指摘されたことが何度もあります。その時、採るべき対応は事実を確認し、相手と対話し、謝罪することでした。

アイヌ民族が遺骨返還を要求した時、北海道大学は面会も対話も拒否しました。琉球民族が遺骨返還を要求した時、京都大学は面会も対話も拒否しました。民族差別の被害者を無視し、排除することは民族差別の上塗りではないでしょうか。

 

並木さん

なぜ、あなたは「回答するなどといったことは行っておりません」と撥ねつけるのでしょうか。なぜ、対話を拒否するのでしょうか。

 

琉球民族遺骨返還問題は、京都大学に留まる訳ではありません。東京大学も琉球民族遺骨を保管しているため、その返還運動が始まりました。

「松島氏ら、東大に情報開示請求 琉球人遺骨を保管か 支援者と連携、訴訟も視野に」

.https://ryukyushimpo.jp/news/national/entry-4484277.html

東京大学は本年7月、アイヌ民族の遺骨19体を小樽のアイヌ民族」などの団体「インカルシべの会」に返還しました。その際、東京大学総務部長が「アイヌ民族の方々の尊厳を深く傷つけたことは誠に申し訳なく、深くお詫び申し上げる」と、初めて謝罪しました(松島泰勝「差別の清算を求めて――琉球人遺骨と東京大学・上(学者の人骨研究特権化、遺族への配慮感じられず)」(『沖縄タイムス』202585日)。

 

私たちは今後も、盗まれた先住民族遺骨返還運動を通じて、琉球沖縄に対する差別と偏見の是正・解消を求めていきます。

 

並木さん

せめて、あなたが差し出している、その差別の手を引っ込めていただくことはできないでしょうか。

 

                                 以上

 

2025年8月7日

 

前田朗(ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク(のりこえねっと)共同代表、青年法律家協会弁護士学者合同部会・元東京支部長、朝鮮大学校講師、東京造形大学名誉教授)

松島泰勝(琉球民族遺骨返還請求訴訟元原告団長、琉球民族遺骨情報公開請求訴訟元原告、ニライ・カナイぬ会共同代表、龍谷大学教授)

 

*本書簡へのご意見やお問い合わせは下記へお願いします。

前田 E-mail: akira.maeda@jcom.zaq.ne.jp

松島  E-mail: matusima345@yahoo.co.jp