Monday, August 20, 2012

デザインは資本の論理を超えうるか


グランサコネ通信120820

Grand-Saconnex News. 120820



内田繁『戦後日本デザイン史』(みすず書房、2011年)





内田繁




勤務先の客員教授、桑沢デザイン研究所元所長の本を、ベルン観光の電車の中で読んだ。美術や映像を除いたデザイン分野の歴史であり、著者自身の体験史でもある。420頁。



<著者の内田繁は戦後のデザインの現場を生きてきた。

 本書は、戦災の焼け野原から始まり、

 東北大震災の以後の「いま」に立ち、

 「これからのデザイン」のあり方を呼びかける。

 「古きをいまに再生し、未知をかたちで示す」デザインという分野に

 かかわるすべての人に向けた渾身のエール。

 「こんな本、ちょっとない。」>



焼け跡における再生から、高度成長、バブル、そして失われた10年を経て、21世紀初頭の現在までの日本デザイン史を通覧することによって、これからのデザインの行方を模索している。果たしてデザインは単なる「資本の論理」を超えて人間生活の未来に貢献できるだろうか。エコデザイン、グローバルデザイン、ユニバーサルデザインとは何か。520人に及ぶ人名索引に10回以上登場するのは、内田自身のほかに、青葉益輝、浅葉克己、粟津潔、勝見勝、亀倉雄策、倉俣史朗、杉本貴志、田中一光、福田繁雄、三橋いく代、三宅一生、横尾忠則、吉岡徳仁、エットーレ・ソットサス、アンドレア・ブランジ。なぜか桑沢洋子と桑沢デザイン研究所の名前が出てこないと思ったら、終わりの方、359頁目に、2010年11月に開催されたSO+ZO展「未来をひらく造形の過去と現在 1960」の紹介の形でまとめて登場している。桑沢洋子生誕100年記念展で、SO(桑沢)とZO(東京造形大学)による展覧会。ここから次をいかに切り拓いていくのかという課題とともに。とても勉強になる1冊。ただ、「おわりに」で「無常観」から「無常美観」へ、として、日本回帰で終わっているのは、ややありきたりか。



追記:SO+ZO展について下記のブログ参照。