Tuesday, August 07, 2012

国連人権理事会諮問委員会始まる


グランサコネ通信120807

Grand-Saconnex News. 120807



6日、国連欧州本部で、人権理事会諮問委員会第9会期が始まった。午前中は、議長選出、議題の確定を行い、さらに審議に入った最初のテーマは、「人類の伝統的価値のよりよい理解を通じての人絹と基本的自由の促進」である。人権理事会からは第21会期(本年9月の予定)に報告書を提出するように諮問が出ていて、以前から議論がなされていたが、今回、最初の報告書(A/HRC/AC/9/2)ができて、その報告と討論が行われた。報告書は作業部会の委員たちが議論して準備したもので、カルタシュキン委員(ロシア)の名前で提出されているが、実際に執筆したのはチョン・ジンソン委員(鄭鎮星、韓国)である。チョン委員はソウル国立大学社会学部教授、元国連人権小委員会委員。



報告書は第2部の定義で、伝統的価値の定義、及び、尊厳、自由、責任との関係を整理している。続いて第3部の「伝統的価値と人権の関係」で、このテーマに関する普遍的人権の系譜を確認し、伝統的価値が女性やマイノリティに与える否定的な影響を検討している。他方、第4部の「伝統的価値を通じた人権の促進と保護」では、これが人権教育にどのような意義を有するかや、各国におけるよき実例などを紹介している。報告書の概要を紹介したチョン委員は、今日の議論を経て、さらに修正版を作成すると述べていた。



議論では、委員から、西欧的価値とその他の文化との関係、クリスチャンの価値とイスラムの価値をめぐっていくつかの指摘がなされていた。恐怖からの自由、空腹からの自由との関係も問われた。ウィーン宣言に言及がないのはなぜかとの指摘もあった(入れるつもりが抜けていたようだ)。ロシア、EU、アメリカ、スイス、チリや、いくつかのNGO(カナダのNGOが目立った)が発言したが、チリ以外はすべて西欧白人だった。ここにこのテーマをめぐる捻じれが表れている。西欧中心主義ではなく、人類の様々な伝統的価値の重要性と限界を洗いなおす作業が、西欧白人の手によって進められているように見える。ところが、その報告書を執筆したのは韓国女性のチョン委員である。そして、アジア、アフリカ、イスラム諸国政府は何も発言しなかった。人権と文化相対主義をめぐる議論は一筋縄ではいかない。



諮問委員会は、国連人権理事会の諮問機関。人権理事会は、安保理事会や経済社会理事会と並ぶ機関で、政府が理事になり、47か国で構成される。日本は昨年度まで理事国だったが、現在は理事ではない。6月に開催された人権理事会で、平和への権利に関する諮問委員会報告書(平和への権利国連宣言草案を含む)に関する決議が採択されたが、昨年まで反対投票をしてきた日本は今年6月には理事国ではないので投票しなかった。6月理事会では32か国ほどが賛成、アメリカが反対、EU諸国は棄権で、決議が採択された。



他方、諮問委員会は、人権理事会の下におかれた18人の委員よりなる専門家委員会。委員は、各国政府が推薦して、人権理事会での選挙で選出される。委員の多くは、法律家、宗教者、元外交官など。現在、日本からは坂元茂樹・神戸大学教授が委員になっている。日韓条約合法論を唱えている方だが、前回の諮問委員会では平和への権利について優れた発言をされていた。韓国からは上記のチョン・ジンソン委員。諮問委員会は人権理事会から諮問があった事項について審議する。かつて、人権委員会の下におかれた人権小委員会(差別防止少数者保護小委員会、後に人権促進保護小委員会)は、諮問されなくても、自ら議題を設定して審議していた。日本軍性奴隷制度をめぐるマクドゥーガル報告書や、「戦時性暴力問題は個人の権利問題なので国家間の取り引きによって、なかったことにしてはいけない」というハンプソン決議など、有益な決議を繰り返していた。政府から見れば、人権小委員会はやりすぎた、ということで、諮問委員会は、諮問事項だけを審議することにされた経緯がある。



国連欧州本部新館2階の展示コーナーで「中国宮廷珍蔵絵画展」が行われている。展示されている61点は、唐、宋、明、清代の絵画と書。ただし、本物ではなくレプリカ。古いものは、8世紀の五代の美人画。新しいものは清代の八頭の馬の図。風景、人物、取り、梅、蝶など多彩な作品が並べられている。