Sunday, March 01, 2015

周回遅れの情報公開なのに特定秘密保護法とは

久保亨・瀬畑源『国家と秘密――隠される公文書』(集英社新書)
日本の情報公開法と公文書管理法の歴史、運用実態、問題点を明らかにし、国際比較を行い(欧米のみならずアジアとの比較も行い、日本がアジア諸国よりも遅れていることも明らかにする)、そこに加わった特定秘密保護法によってますます情報公開が妨げられ、結果として(目的通り)行政の責任と歴史の真相が隠蔽されていくことを論じたコンパクトな本である。

日本の公文書はもともと秘密だらけで、情報公開が進まない。そもそも国家の公文書という意識が希薄で、官僚は公文書を私物化してきた。随意に隠蔽し、任意に処分し、記録を残さず、公開せず、好き勝手な行政をほしいままにしてきた。日本の情報公開は「二周遅れ」だという。「重要な情報の秘匿を許せば、政治権力は際限なく暴走する」。敗戦時の文書焼却は歴史の末梢であった。日本国憲法の下でも情報公開は戦前と同じレベルで推移したと言う。


それでも遅ればせながら、ようやく情報公開法と公文書管理法ができたが、その運用は旧来型思考から抜け出していない。情報公開が定着するにはまだ時間がかかる。と言うところに特定秘密保護法が登場し、情報公開を理念に回復不能なダメージを与えている。著者は「一日も早く特定秘密保護法を撤廃するとともに、情報公開の徹底と公文書管理制度の確立、そして公文書館の拡充整備を実現することこそが、国民主権を保障していく道」と訴える。