今年もまたパウル・クレー・センターを訪れた。いつもはベルン駅から「クレーへの道」をのんびり歩く。クレーが通った学校や、ベルンの中心のミュンスターを見て回ってセンターへ。今回は真直ぐバスでやってきた。
1階のホールは、ヘンリー・ムーア展だった。20世紀イギリスを代表する彫刻家だ。まず「母と子」のテーマで、20年代の初期作品から50年代まで。次に「マスク」でやはり20年代から始まる。次の「戦争美術家」。第二次大戦期、ムーアは空爆を避けるために田舎に移動し、戦争を見つめ、戦時美術家諮問委員会にもかかわったと言う。「女性像は20~30年代。5番目が「抽象」で、30年代にシュルレアリストや構成主義の影響を受け、彫刻のスタイルを変えていった。このころから現代アートとして展開するとともに、作品が徐々に大型化している。混乱期から安定期に入り、彫刻家として世界的に有名になり、経済的にも安定し、運搬・移動も容易になったためだろう。
地下のホールでは「ベルンのクレー」展だった。ベルン郊外のミュンヘンゼーに生まれ、ベルンで育ったクレーだ。子どもの頃のスケッチにはベルンの街並みが描かれていて、今でも、どこで描いたかを特定できる。ミュンヘンで美術学校に通い、後にバウハウスの教授になった時期にはワイマール、そしてデュッセルドルフ美術大学などドイツで過ごしたが、ナチスドイツに追われてベルンに逃げ帰ったので晩年はベルンだ。念願のスイス国籍を取得できず、ドイツ国籍のまま亡くなったが、心はスイスだったと思う。クレー作品のコレクターももとはベルンで、ハニー・ビュルギ、ヘルマン・ルプフなどだという。最初の個展もベルン美術館だったそうだ。子ども時代と晩年の作品が展示されていた。