3月2日、国連人権理事会第28会期が始まった。国連欧州本部が厳戒態勢。プレニー門の警備員が増えていると思いながら中にはいると、途中から外交官専用車以外の車は通行止めになっていた。大会議室の前の荷物検査もいつもより厳しく、外交官の荷物検査も行っていた。NGOメンバーは本会議室に入室できず、別室で映像を見る状態。パリの銃撃事件のためだろう。
こんなに厳しいのは2003年3月のイラク戦争の時以来だ。あの時は、国連人権委員会で、連日、イラク代表が空爆被害による民間人殺戮を訴えたが、アメリカは一切無視し、フランスやドイツが「イラク問題を国連人権委員会で取り上げるべきではない」と執拗に発言し、他の諸国を沈黙させ、4月上旬、イラク政府代表が姿を消した。つまり、この時、国連人権委員会はイラク人の人権は無視しても構わない、という態度を明確にした。あの時、国連欧州本部の警備は異様に厳しかったが、今回はそれ以来だ。
最初の3日間はハイレベル・セグメントと言って、政治家の演説だ。トップはマケドニア大統領で、70年前と現在を対比して、特に宗教間対話を呼びかけ、サン・シモンを引用して社会秩序の在り方を論じた。近代世界とは、と言う問いかけである。次にフィジー首相が、pacific rightという言葉を使い、フィジーの植民地支配の経験がユニークな文化を生んだと述べた。ベルギー首相は、テロリストは人権、人間の尊厳、正義、民主主義を破壊するとし、他方ヘイト・スピーチについて表現の自由には限界があると述べた。ギリシア外相は、女性に対する暴力への対処を強調し、ヘイト・スピーチについて過度の介入も過度の不寛容も不適切と述べた。Right to hate to other peopleという言葉を用いて、こういう権利はないと。スロヴァキア外相は、ウクライナ支援に触れた上で、国内で「人権戦略」を採択したことを紹介した。パラグアイ外相は、世界人権宣言以来の積み重ねを振り返り、UPRの重要性を唱えた。オランダ外相は、死刑廃止とFGMについて論じた。ロシア外相は、現在、人権保障の国際システムの危機であるとし、ナショナリズム、外国人嫌悪、不寛容が世界を覆っているとし、ナチスのスローガンを叫ぶ者たちがウクライナでクーデタをおこしたと批判した。ロシア外相は演説終了後に、議長団と握手をしなかった。他の発言者はみな、議長や副議長と握手する。イラン外相は人権の二重基準を津よK批判し、イスラモフォビアが表現の自由の名のもとに蔓延しているとした。ヨーロッパの言葉を話す二世のテロリストが無辜の民を殺傷している現実にどう向き合うのかと述べた。ボツワナ外相は、ナイジェリア、フランス、パキスタンでテロリストが事件をおこしていると非難した。アメリカ国務長官は、シリア、朝鮮、ウクライナ、イラン問題を取り上げた。さして中味はないけど、ケリー長官、演説はうまい。モルディヴ外相、カタール外相、タイ外相と続いた。