Sunday, March 08, 2015

居酒屋国際政治論議を超えられるか

三浦瑠麗『日本に絶望している人のための政治入門』(文春文庫、2015年)


オビに大きな顔写真つきで、ほとんど芸能タレント本。NHK「ニッポンのジレンマ」に出ているそうで、1980年生まれの国際政治学者とのこと。「闘え左翼!正しい戦場で。共感せよ右翼!寛容の精神で」という意味不明のキャッチフレーズに見られるように、左翼と右翼、極論と反極論を並べて見せて、折衷説を巧みに売り込む論法が得意なようだ。もっとも、日本外交について日米安保だけが唯一の選択肢と決めつける議論は単なる現状追認。国際政治学者のようだが、自民党と野党の比較、「地方、女性、非正規」など、国内政治についての論述が前半の中心である。おおむね居酒屋論議の延長にある。後半の国際政治論になると、それなりに欧米の外交研究の成果を踏まえた議論も見られる。いずれにしても、苔の生えたようなバランス論、折衷主義、「リアリズム」だ。一つだけ感心したのは、非正規労働問題を民主主義の根幹にかかわる問題として提起しているところだ。