Wednesday, March 04, 2015

国連人権理事会28会期(2)死刑問題パネル・ディスカッション

国連人権理事会28会期(2)死刑問題パネル・ディスカッション

3月4日のお月様はうさぎさんが良く見えた。この日、人権理事会は「死刑問題に関するパネル・ディスカッション」を行った。司会は、ルース・ドライフス元スイス大統領。パネルは2年に一度行うことになっているようだ。

最初のパネリストは、ザイナボ・シルビア・カイテシ。彼女はアフリカ人権委員会K議長で、アフリカ人権委員会ネットワークメンバー、1999年から死刑廃止に取り組んできた。アフリカでは死刑廃止条約の批准は少ないが、死刑廃止キャンペーンを始めた時は廃止国が10だったのが、現在は19で、執行しているのは9カ国に過ぎない。他はモラトリアムがあるという。また、アフリカ人権憲章の追加議定書が死刑廃止を定めていて、昨年、最後の詰めが行われたので、間もなく採択される見込みだと言う。

次はスタヴロス・ラムフリンディス。彼はEU人権特別代表で、EU議会副議長、ギリシア人権委員会委員長の経験者。死刑を文化的理由で正当化することを強く批判。80年代以後続いている死刑廃止の爆発的増加の前は、文化的口実の正当化がよく見られたともいう。死刑は権威主義国家や抑圧体制の問題と絡む。また、人間の尊厳を誤って逆用する議論を批判した。

次はトレイシー・ロビンソン。彼女は米州人権委員会委員長で、ジャマイカの西インド大学教授だった。米州ではモラトリアムを含めて死刑廃止が進み、例外はアメリカ合州国とカリブの一部だと言う。これらは「植民地の遺産である」と断言した。NGO席では賛同とともに驚きの反応があった。イギリス植民地のことだ。もっとも、彼女はアメリカでも3分の1の州が廃止集であることを指摘して、変化の可能性を強調した。

次はモハメド・ベジャオニ。国際死刑反対委員会の議長。アルジェリアの憲法改正委員だった?。アラブ人権憲章は死刑を制約しているが死刑廃止を求めていない。重大犯罪に限定している。このことは共有されている。制限の幅をどのように拡げていくかが試みられている。民主主義の重要性を強調した。

最後はサラ・ホサイン。彼女は国際法律家委員会(ICJ)のアジア太平洋コミッショナー。バングラデシュの憲法と家族法の研究者のようだ。南アジアでは、死刑廃止条約を批准したのは2カ国に過ぎず、死刑の対象犯罪が広く、性関連犯罪にも死刑があてられてることを批判的に検討。死刑囚の家族、特に子どもへの影響にも触れた。

続いて各国の意見表明だった。シエラレオネは廃止の立場。ボツワナは死刑は人権問題ではない、死刑廃止の国際法はないと。サウジアラビアは寛容なシャリア法に基づいているとしつつ、被害者の生命を強調。ナミビアは死刑廃止を呼びかけた。シンガポールは刑事司法の在り方は各国の独自性の問題とし、コミュニティの平和と安全のために死刑を肯定。アルゼンチンは人道に対する罪を裁く国際刑事裁判所にも死刑がないと指摘し、テキサスでアルゼンチン人が死刑判決を受けたとし、人種差別の疑い、人身保護請求のことを述べてた。オーストラリアはユニバーサルな死刑廃止を訴えた。ノルウェーは2016年にオスロで死刑廃止大会を開くと予告。ベルギーは人間の尊厳を強調。アルバニアは死刑廃止は外交の優先事項だと述べた。オランダはいかなる犯罪も死刑を正当化しないと述べ、文化的正当化を批判。その後、トルコ、パラグアイ、ブラジル、ロシア、スロヴェニア、南アフリカ、ジャマイカ、アルジェリア、メキシコ、パキスタン、イギリス、フランス、スーダン、ポルトガル、アイルランド、インドネシアなど、存置派と廃止派が入り乱れての論戦。NGOでは、南の風発展政策連合、ピナル・リフォーム・インターナショナル、フランシスカン・インターナショナル、アムネスティ・インターナショナル、クエーカー国連事務所などが発言した。

クエーカー国連事務所の発言は新代表のローレル・タウンヘッドさん。レイチェル・ブレットさんが紹介してくれた。ローレルさん、去年の「死刑囚の子どもパネル」での私の発言を覚えていた。そして、その時のパンフをくれた。

『死刑を言い渡された又は執行された良心の子ども』
Children of parents sentenced to death or executed. Developments ,good practice and next steps. Quaker United Nations Office,2014.
2014年3月11日に国連欧州本部で開催されたシンポジウムの記録である。当日、私は国連人権理事会でフクシマ3周年の発言をしてから、シンポジウムに少し遅れて参加したのでよく覚えている。

Speakerは、Marta Santos Pais(国連子どもに対する暴力特別代表)、Ann Kristin Vervik(同・専門研究者)、Euclides del Moral Arbona(メキシコ外務次官)、前田朗(東京造形大学教授)、Zaved Mahmood(国連人権高等弁務官事務所員)、Rachel Brett(司会、クエーカー国連事務所代表)。