Thursday, March 05, 2015

ヘイト・スピーチ研究文献(10-3)「真実・正義・補償に関する特別報告書」の紹介(3)

ヘイト・スピーチ研究文献(10-3)「真実・正義・補償に関する特別報告書」の紹介(3)


3 捜査し訴追する義務

特別報告者は、国家の義務を確認する。国家には人権・人道法違反、特にジェノサイド、戦争犯罪、人道に対する罪、その他の大規模人権侵害(略式処刑、拷問その他の残虐行為、奴隷制、強制失踪、強姦その他の性暴力、その他の国際人道法違反)を、捜査し訴追する義務がある。こうした侵害を捜査・訴追しないことは、人権条約違反となる。

特別報告者は、これを人権の観点に即して、捜査・訴追の義務は実効的な補償の権利につながると言う。被害者や親族が真実を知る権利は補償の権利の一部である。

それゆえ、特別報告者によると、国家は、恩赦や免責によって個人責任を問われている実行者を釈放してはならない。訴追義務には、上官の命令があったとの抗弁や、不合理に短い事項と言った障害を除去することも含まれる。

さらに、各国は、こうした嫌疑を受けた者を裁判にかけるために相互に援助する義務がある。ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪といった犯罪に関しては、これらが行われた場合、それがどこで、誰によって行われたにせよ、国家の義務を果たすために管轄権を設定する立法をすることが求められる(普遍的管轄権)。


こうした義務にもかかわらず、移行期の国家は恩赦などを用いて、最悪の違反者をその法的責任から保護する傾向を示してきた。特別報告者はこうした恩赦に対して重大な関心を表明している。こうした恩赦はある人々を法の上に置くことになる。恩赦は不処罰の文化を作り出すのみならず、再発防止にも反することになる。