高橋和夫『イスラム国の野望』(幻冬舎新書)
著者は放送大学教授、著書に『燃え上がる海――湾岸現代史』『アラブとパレスチナ』『イランとアメリカ』などがある。2003年のイラク戦争の時、八王子平和市民連絡会の平和企画の一つで八王子にお招きして、講演を聞いたことがある。とても分かりやすい話をする。
本書もとても分かりやすい。話し言葉で書かれている上、シリアにいた日本人がアサド大統領を「アサちゃん」「おじさん」と呼んでいたとか、イスラム国が「大々的に自分たちの暖簾を出した」とか、シリアとトルコの国境のダビークは日本なら「関ヶ原」とか、イスラムの分裂状態は日本では会津藩と長州藩の対立だとか、エピソードやたとえ話が随所に出てくる。巧みな比喩と言うのではない。ストレートなオヤジギャグレベルのたとえ話である。読者向けに話を分かりやすくするために、あえてそうした話法を採用している。
もちろん、オヤジギャグだけではない。中東地域の歴史をさかのぼり、西欧植民地主義の残滓がいかに残されているか、その下での各地の建国が何をもたらしたか、資源とナショナリズムの中東の政治地図を描いていく。その中で、「イスラム国」とは、どこから来たのか、何を目指しているのか、これにどう対処したらよいのかを整理している。