Wednesday, March 17, 2021

ヘイト・クライム禁止法(197)シンガポール

シンガポールがCERDに提出した第1回報告書(CERD/C/SGP/1. 30 January 2019

すべての形態の人種憎悪と差別を禁止している。煽動法は異なる人種や階級の間の悪意や敵意の感情を助長することを違法としている。人種主義活動への援助も含まれる。裁判所は法律適用の際に、異なる人種や階級の間の悪意や敵意の感情を助長する行為は重大であると強調してきた。煽動文書や攻撃的文書の配布の事案では、裁判所は多人種・多宗教社会ではこうした行為が人種的宗教的調和を引き裂く社会的混乱をもたらす傾向を有するとしてきた。こうした事案では施設収容刑を言い渡してきた。

人種や宗教に関して、刑法は、人の宗教的人種的感情を傷つける意図をもってなされた行為、言葉又は音響を犯罪とする。3年以下の刑事施設収容及び/又は罰金である。2007年、刑法改正により、宗教又は人種に基づいて、異なる宗教や人種集団の間に不和、敵対感情、憎悪又は悪意を助長し、又は助長しようとする行動を犯罪とした。

刑法改正に際して、担当大臣は次のように述べた。「毎月の報告によると世界で人種主義や排外主義が33%増加している。多宗教多人種のシンガポールでは宗教や人種の調和が重要である。人種的宗教的調和を維持するには、寛容、中庸、感受性を実行することである。異なる宗教や人種間の寛容と相互尊重が必要である。」

人種的宗教的動機の夜場合に犯罪に対する刑罰加重もなされる。裁判所は刑罰を1.5倍に加重することができる。人種的宗教的刑罰加重される犯罪は、(1)犯罪実行時、その直前又は直後に、犯行者が被害者に被害者の属性(又は属性と見做して)に基づく敵意を表明した場合、(2)犯罪の全体または一部が、その集団の属性に基づいて人種的宗教的集団構成員に対する敵意に動機づけられていた場合。

2005年以後、煽動法又は刑法によって人種宗教関連犯罪で捜査が行われたのは16人である。

行政当局は行政法に服し、そこでは人種差別の助長又は煽動の予防が定められている。人種差別を助長又は煽動する団体の間接禁止措置、及び団体参加の承認の認定が定められている。違法な目的、又は公共の平穏、福祉、公序良俗に悪影響を与える目的のための団体の登録を認めていない。こうした目的を有する団体は大臣が解散させることができる。

さらに非法的措置として、人種的攻撃や差別思想への対処がある。雇用の面では、2016年にパン職人の仕事に関連してマレー人に対して不適切な発言をしたパン屋経営者を解雇した事案が有名であり、3か月間の営業停止とした。2017年には中国系に対して差別的広告を出した雇用主に6か月の営業停止とした。