Thursday, March 04, 2021

ヘイト・スピーチとソーシャルメディア(1)

2020111920日、マイノリティ問題フォーラム第13会期が「ヘイト・スピーチ、ソーシャルメディア及びマイノリティ」をテーマに開催された。パネルディスカッションの話題は4つである。

1)    ソーシャルメディア上のマイノリティを標的としたヘイト・スピーチの原因、規模、影響

2)    国際法・制度枠組み

3)    オンライン・ヘイト・スピーチ規制

4)    マイノリティにより安全な空間に向けて

議論はアジア太平洋と欧州の2つの領域に即して行われた。パネルにおいて、1993年のマイノリティ権利宣言等の国際人権法に基づいて数多くの勧告が提案された。世界人権宣言、国際自由権規約、国際社会権規約、人種差別撤廃条約、女性差別撤廃条約、子どもの権利条約、障害者権利条約、国内マイノリティ欧州評議会枠組み条約、ラバト行動計画、ビジネスと人権原則、ヘイト・スピーチに関する国連戦略と行動計画に従っている。

国連人権理事会のフェルナンド・デ・ヴァレンヌ「マイノリティ問題特別報告者」が、現在開会中の国連人権理事会(2月22日~3月19日)に提出した報告書(A/HRC/46/58. 26 January 2021)はパネルの報告であり、そこで出された勧告をまとめている。

 

報告書が最初に掲げるのは「人権を基礎にしたアプローチを用いてソーシャルメディア上のマイノリティに対するヘイト・スピーチに対処する一般的勧告」である。主な内容は次の通り。

    各国は、オフライン・オンライン双方で、マイノリティの権利を保護促進するすべての国際人権文書及び地域人権文書を批准、同意、遵守するべきである。

    各国は、オフライン・オンライン双方で、マイノリティの人権を尊重、保護、実現する義務と責任を効果的に履行するべきである。各国は、特に被害を受けやすい、危機又は周縁化されやすい状況にあるマイノリティに属する者――女性、子ども、若者、LGBTI、移住者、障害者、及びハラスメント、脅迫、障害を受ける人権活動家に注意を払うべきである。

    各国は、意見・表現の自由及びプライヴァシーの権利を完全に尊重しつつ、平等を促進し、差別、敵意、暴力の煽動に反対するべきである。これらの自由の制限を含む規制には完全に国際人権法の根拠を要する。

    各国はオンライン・コミュニケーションにおけるマイノリティに対するヘイト・スピーチに断固として、迅速に、効果的に対処し、反対するべきである。それには素早く効果的に、責任者を捜査し訴追し、責任を負わせ、被害者に司法と救済に効果的にアクセスできるようにすることが含まれる。

    各国及びテクノロジー企業は、開かれた、安全でグローバルなインターネット、及びデジタル世界への包摂的なアクセスを確保するべきである。

    各国、国際組織、地域組織は、誰もがデジタル世界に参加でき、適切な内容メカニズムの透明性を促進すること規則と手続きを確立するべきである。

    マイノリティ自身及び市民社会は、オンラインの権利に関する法、政策、計画を形成するのに協議し、関与するべきである。内容規制課程に関する協議は、公開で、真に民主的課程で行われるべきである。

    各国は、マイノリティに対する不寛容とヘイト・スピーチに対抗する予防措置を取るべきであり、社会的経済的安定、包摂及び団結の条件を作り出すことが含まれる。

    各国は特に学校教育課程におけるマイノリティの権利に関する人権教育を採用するべきである。多様性と多元主義の促進。差別、ステレオタイプ、排外主義、レイシズム、ヘイト・スピーチと闘うこと。

    各国、国際組織、地域組織、テクノロジー企業、国内人権機関及び市民社会は、マイノリティに対するヘイト・スピーチに対処し、多様性、多元主義、対話、他者の受け入れの文化を促進する専門知、知識、効果的実践を共有するために協力を強化するよう促される。

    各国、国内人権機関及び市民社会代表は、国連人権理事会の特別手続き、普遍的定期審査、人権条約機関、地域人権機関、その他のマイノリティに向けられたオンライン・ヘイト・スピーチと闘うのに適したフォーラムを利用するよう促される。

    すべての関係者は、ヘイト・スピーチに対抗するために、分岐したコミュニティを保護、促進する革新的、教育的、予防的戦略を強化するべきである。