Sunday, March 07, 2021

ヘイト・スピーチとソーシャルメディア(3)

スイスの国民投票でブルカ禁止の方針が過半数の賛成を得た。スイスでもイスラモフォビアの激化が懸念される。

 

「マイノリティ問題特別報告者」の報告書の紹介を続ける。

 

Ⅳ 国際法・制度枠組に関する勧告

法的制度的枠組みを指導する人権原則は一般的で技術中立的であるべきだが、ソーシャルメディア等の特別な技術に適用可能である。

②意見の自由、表現の自由、非差別及び平等の権利の間の関係は、積極的で相互に教化しあうとみなされるべきである。ヘイト・スピーチの禁止と意見・表現の自由の繫栄は、補完的であると見られるべきであり、ゼロサム・ゲームと見られるべきではない。

③議論は、ラバト行動計画と人権理事会決議16/18、特にサブパラグラフ5(f)に明示されているように、犯罪化を通じて、ヘイト・スピーチの多様な諸形態に対処する国際文書の適用に関してなされるべきである。

④国際自由権規約第19条と第20条、人種差別撤廃条約第4条のような既存文書の関連条文は、国内法のヘイト・スピーチ法の解釈と適用にギャップがある場合、修正するために用いられるべきである。これらの諸規定は、ヘイト・スピーチの標的とされる広範な集団をカバーするように適用されるべきである。すなわち、宗教、民族、言語、国籍、人種、皮膚の色、カースト等の世系、ジェンダー、難民、難民申請者、移住者、人権保護活動、性的志向、その他のアイデンティティ要因。

⑤国際的に受け入れ可能なヘイト・スピーチの法的定義は、国際人権法、特に表現の自由に合致して、国際協力を通じて、既存の国際、地域、国内のヘイト・スピーチ法規範の分析を通じて、適用されるべきである。

⑥各国はすべての現象形態のヘイト・スピーチと効果的に闘うために必要な多元的で補足的な戦略のための包括的規制・政策枠組みを発展させ、実施するべきである。枠組みは民事措置や行政措置、例外的に刑法措置を含むべきである。

⑦各国はヘイト・スピーチに関する最終手段として、もっとも重大な形態についてのみ訴追を採用するべきである。それゆえ訴追は、(a)ジェノサイドの煽動、(b)差別、敵意、暴力の煽動となる国民、人種、宗教的憎悪の唱道(国際自由権規約第20条2項)に限られ、表現の自由の権利を確保し、情報へのアクセスが弱体化されないようにしなければならない。

⑧各国とテクノロジー企業は、グローバルなレベルで、マイノリティを標的とするヘイト・スピーチ等を扱う戦略の一部として、敵意、差別、暴力の煽動に対処するラバト行動計画を実施し、はっきりと参照するべきである。ラバト行動計画の六項目テストは、どのような基準と条件で国内法において当該煽動が犯罪とされるべきかを示し、コンテンツがソーシャルメディア・プラットフォームから削除されるべきかの基準を示している。基準は、文脈、話者、意図、内容と形式、発話の程度、煽動の蓋然性である。

⑨各国は、ヘイト・スピーチ法と規制が、国民、民族、宗教、言語にかかわらず、マイノリティを抑圧するために用いられないように確保するべきである。検閲や意見・表現の自由の抑圧になってはならない。表現の自由と憎悪煽動の制限を定義する敷居は、国際自由権規約第20条の適用の基準は、非常に高いものでなければならない。各国は差別、敵意、暴力の煽動に当たるものの間で区別をするべきである。

各国は、ヘイト・スピーチについて責任を問う明確な国内法・制度枠組みを発展させ、平等を促進し、言論・表現の自由を尊重するべきである。各国はこの問題を扱う明確、首尾一貫した規範、制度、政策を持つべきである。枠組みには、不寛容、憎悪、その他のヘイト・スピーチの原因に対処する予防措置が含まれるべきである。救済、必要な場合には処罰が含まれるべきである。

⑪各国は、ソーシャルメディア企業の義務、ソーシャルネットワークサービス提供者の行動綱領を策定し、キーとなる擁護と実務を明確にするべきである。

⑫各国は、政治キャンペーン、選挙、危機管理のような、ヘイト・スピーチにつながりそうな文脈を規制することを考慮するべきである。

⑬各国は包括的規制・政策枠組みの効果的設計と実施のため多元主義アプローチを採用すべきであり、国際機関、地域機関、国内人権機関、既成組織、テクノロジー・ソーシャルメディア企業、市民社会組織及びマイノリティ代表を取り入れるべきである。

マイノリティに対するヘイト・スピーチの類型、標的、影響をよりよく理解するために、地域レベルと国内レベルで、マイノリティに対するヘイト・スピーチと暴力に関する申立て受理と情報収集のためにメカニズムを確立するべきである。

マイノリティ権利宣言、ビジネスと人権ガイド原則、ラバト行動計画など国連法的政治的基準とメカニズムが、オンライン・ヘイト・スピーチに対抗するために採用されるべきである。

ラバト行動計画に含まれる勧告の実施が監視されるべきであり、ヘイト・スピーチや敵意、差別、暴力の煽動に対処し対抗する義務に関して各国が利用できる指標を開発するべきである。

各国は、SDGs2030やビジネスと人権ガイド原則のような既存の枠組みを実施について、ヘイト・スピーチと闘うためにとられた措置を報告するべきである。

国連は、ヘイト・スピーチに関する国連戦略と行動計画を関連機関の仕事の中心に据えるべきである。

各国は、国際ホロコースト記憶連合の仕事を支援し、ホロコースト否定法の制定と解釈について国内機関と国際機関に通知できる。

ヘイト・スピーチに関する申立てを受理する関連機関は、その信頼性と能力を構築するためにマイノリティと協働するべきである。