Tuesday, December 07, 2021

フェミサイドの現状04

7 新型コロナ・パンデミックはジェンダー関連殺害にどんな影響を与えたか?

 

新型コロナ・パンデミックのジェンダー関連殺害への影響についてはデータが十分ではない。2020年、西欧では11%増、南欧では5%増だが、北欧では特に変化はなく、東欧は微減である。北米では8%増、中米では3%、南米で5%増である。これは過去十年の増減の範囲内である。

国別では、14か国の月別データが得られたが、ロックダウンによる影響は確認s慣れていない。14か国とはアルメニア、バハマ、クロアチア、エクアドル、ギリシア、イタリア、ラトヴィア、リトアニア、メキシコ、モロッコ、ミャンマー、オマーン、スロヴェニア、スペインである。

新型コロナの移動制限がジェンダーに基づく暴力に与えた影響はデータが不十分である。2020年初頭の第1波の時期の隔離によって若干減少している。

欧州とラテンアメリカの数カ国のDVヘルプラインのデータも複雑な様相である。自宅における女性への暴力が急増した国もある。例えばイタリアでは4倍増である。アルゼンチンでも急増した。デンマークとメキシコでは隔離措置後、暴力は微減である。利用できるデータからは確定的なことは言えない。

 

8 政策的含意

 

報告書は最後に、フェミサイドへの政策的介入を4つの領域に分けている。

1)ジェンダー関連殺害のデータ・ギャップを埋める

2)ジェンダー関連暴力の予防と対処

3)ジェンダー関連殺害実行犯の効果的な訴追と制裁

4)ジェンダー関連暴力の証拠に基づいた予防の投資

 

1)ジェンダー関連殺害のデータ・ギャップを埋める

ジェンダー関連殺害についての包括的なデータ収集が重要である。多くの国ではまだ不十分である。データのある国でもジェンダー関連暴力の定義が多様である。UNDOCが用意した統計枠組みを参照して、現在の制約を超えて、各国が情報収集することが必要である。

2)ジェンダー関連暴力の予防と対処

DV法はすでに155か国で制定され、ジェンダー関連暴力行動計画を策定している国も多い。

・保護命令――保護命令は、親密なパートナーによる暴力を減少させてきた。警察の介入後に暴力がエスカレートすることもある。暴力的パートナーから保護するための更なる介入方法が模索される必要がある。保護命令や登録制度、24時間ホットライン、シェルター等の組み合わせが危機の予防になる。

DVサービス――ヘルプラインやシェルターのようなDVサービスは親密なパートナーによる殺害を減らしてきた。こうした支援は長期間継続する必要があり、保護目入れなどの法的手段と組み合わせるのが効果的である。

・銃器統制――家に銃器があれば暴力のリスクが高まる。DV加害経験のある実行者が銃器に接近できないようにする制限が殺害防止に必要である。

・離婚――離婚法制は女性・少女に対する暴力への影響可能性を考慮して慎重に検討されなければならない。離婚時は女性が被害を受ける時期となるので、全体的アプローチが必要であり、行政府や裁判所が暴力の予防と対処をする必要がある。

3)ジェンダー関連殺害実行犯の効果的な訴追と制裁

被害者・生存者が司法にアクセスしやすいようにして、暴力実行者の責任を問い、社会に明確なメッセージを送るべきである。ラテンアメリカでは、ジェンダー関連殺害について刑事司法の対処を特に定めた特別法が制定されている国がある。ジェンダー関連殺害事件を担当する特別班を設置し、ジェンダー関連殺害に適正に対処しない刑事司法公務員(警察官や検察官のこと?)を監視する必要がある。

4)ジェンダー関連暴力の証拠に基づいた予防の投資

長期的には多元的な介入方法が検討され、多様な予防介入の組織的見直しがなされるべきであり、国連は「尊重枠組み」を基に予防戦略を構築する。

・関係スキルの強化――女性、男性、カップルへの介入戦略

・女性のエンパワーメント――経済的社会的エンパワーメント

・サービス保障――警察、法律扶助、健康、社会サービスを被害者に提供

・貧困対策――貧困縮減を目指した労働力移転の介入

・安全環境――安全な学校、公共空間、労働環境を作り出す

・子ども虐待予防――家族関係修復、体罰禁止等

・態度、信念、規範の変更――有害なジェンダー態度、信念、規範、ステレオタイプ、男性優位・女性従属・暴力正当化となる慣習の見直し

以上の措置は独立ではなく、相互横断的であり、広範なアプローチが求められる。

 

以上。