桧垣伸次・奈須祐治『ヘイトスピーチ規制の最前線と法理の考察』(法律文化社)
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「第8章 信教の自由と反差別法」(森口千弘)は、宗教的動機によるヘイト・スピーチとその規制について、表現の自由とは異なる側面があり、「保護されない言論」は存在しても「保護されない信仰」は存在しないという。信教の自由と反差別法が対立する場合、侵攻を理由とした反差別法からの例外的免除が認められるか否かが中心的な争点となるという。
森口はアメリカにおけるMasterpiece Cakeshop事件を手掛かりに、分析する。事件は、ゲイのカップルがケーキ店からウェディングケーキの販売を拒否された。敬虔なキリスト教徒である店主は、同性愛は神の意思に背くと考え、ケーキの販売を拒否した。州公民権委員会は、性的志向に基づいた差別であると認定した。これに対して店主は、真摯な進行に基づいた販売拒否は例外的な法義務免除を受ける権利があるとして提訴した。
森口は、法義務免除と第三者へのコストをめぐって、他にも数多くの宗教に関連する判例を紹介・検討する。特に尊厳にかかわるコストが問題となる。
日本では信仰と差別の緊張関係を主たる論点とする判決はないが、今後、ヘイト・スピーチに関連して信教の自由と反差別法の対立する事案が出て来るかもしれないと森口は見ている。
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信教の自由と差別問題に関するアメリカ法の検討は差別問題を考える参考になる。
もっとも、森口が紹介する事案はヘイト・スピーチ事案ではない。アメリカは基本的にはヘイト・スピーチを刑事規制しないから、ヘイト・スピーチ刑事判例はないだろうが、民事や行政に関連する判決はないのだろうか。
欧州諸国では人種主義ヘイト・スピーチのみならず宗教的ヘイト・スピーチも刑事規制するから、アメリカよりも検討に値する判決が多数あるはずだ。現に欧州人権裁判所においても宗教的ヘイトは取り上げられている。
https://maeda-akira.blogspot.com/2021/09/blog-post_6.html
宗教的ヘイト・スピーチについて検討するのに、宗教的ヘイト・スピーチに関連する判決を紹介せず、関係のない判決ばかり紹介するのはなぜだろう。ちょっと不思議。