セルビア政府が人種差別撤廃委員会に提出した報告書(CERD/C/SRB/2-5. 23
August 2016)
刑法は次の差別行為を犯罪としている。平等侵害(第一二八条)、ある言語や文字を使用する権利侵害(第一二九条)、国民・民族的所属の表現の権利侵害(第一三〇条)、宗教の自由や宗教的サービス利用の侵害(第一三一条)、人種、宗教、民族その他の所属の評判の侵害(第一七四条)。刑法は次のヘイト・クライムを犯罪としている。国民、人種、宗教的憎悪と偏見の勧誘(第三一七条)、人種その他の差別(第三八七条)。犯罪実行者の偏見や憎悪に関連して、墓荒らし、特定の社会集団のための建造物や重要な場所に侮辱メッセージ、落書きを書くことは犯罪である。
二〇一〇年~一四年、及び二〇一五年一月~七月、差別に関連する犯罪は二〇一件、二五六人に対する告発がなされた。うち二四六人は国民、人種、宗教的憎悪と偏見の勧誘である。国民、人種、宗教的憎悪と偏見の勧誘(第三一七条)は一八八件であり、人種、宗教、民族その他の所属の評判の侵害(第一七四条)は六件である。人種その他の差別(第三八七条)は一件である。刑事訴追は、刑法第一三五条の強要と刑法第三一七条の国民、人種、宗教的憎悪と偏見の勧誘が、二九件(二〇一〇年)、四九件(二〇一一年)、三四件(二〇一二年)、二三件(二〇一三年)、三二件(二〇一四年)、二一件(二〇一五年一~七月)である。全体で二四六人のうち一八〇人がセルビア人、二一人がムスリム、一三人がハンガリー人、五人がアルバニア人、四人がクロアチア人である。
同じ期間に、三六件の国民を理由とする身体攻撃があった。うち三二件は公表された。攻撃されたのはロマ人一九人、ハンガリー人五人、セルビア人五人、ムスリム三人、クロアチア人三人である。
二〇一一年と二〇一三年にはセルビア人とムスリムの喧嘩、二〇一〇年にはロマ人とセルビア人の喧嘩があり、セルビア人五人とムスリム一人が訴追された。言葉による敵対行為は四八件のうち四四件が解決したが、三件は実行者が不明であった。刑事訴追された宗教施設損壊は三件で、一件は二〇一三年のスボティカのユダヤ人墓地であった(三人の子どもが三九の墓を壊した)。落書きは六八件で、被害はハンガリー人一三人、ロマ人一二人、セルビア人八人、クロアチア人とアルバニア人各六人であった。ナチスのシンボルを書いたのが六件、ナチスのスローガンが三件である。
公共情報とメディア法第五九条は、一定の条件の下で情報の流布を禁止することを検察官が裁判所に請求できるとしている。同法第七五条はヘイト・スピーチ及び差別の煽動を禁止している。
二〇一二年二月二九日、ベルグラード高等裁判所は、「ゲイ・プライドに反対する五〇万のセルビア人」というフェイスブック利用者がヘイト・スピーチを拡散し、LGBT住民を脅やかしたとして、三月の刑事施設収容及び二年の執行猶予を言い渡した。インターネットによる事案はセルビアでは本件が初めてであった。