橋本基弘「都市公園利用権と集会規制」『都市問題』107巻12号(2016年)
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『表現の自由 理論と解釈』(中央大学出版部)の著者による論文である。同書は表現の自由に関する内容規制・内容中立的規制の問題を扱っており、おおいに参考になる(この論点を私はこれまで論じていないが、今年は書く予定だ)。
橋本は、ヘイト・スピーチに関する川崎市事件や、松原市の民主商工会事件を念頭に、都市公園管理権と利用権の関係を整理し、公園管理権と集会規制について、判例、都市公園法を検討する。都市公園占有不許可処分における適法性判断をめぐって、「第1に、公園の種類や規模、構造、設備等が集会の規模と不釣り合いな場合は、占有申請を拒むこともできよう」、「第2に、占有申請が競合した場合には、単純に抽選とすることも許される」、「第3に、その公園の場所と結びつくことで特定のメッセージを送ることができるような集会は、そのメッセージを理由として占有を拒むことはできない」とする。
「少なくとも地方公共団体が設置する公園においては、地方自治法244条を手がかりにして、管理権に制約を課す方法がとられてきたことには合理性があると言うべきである。そして、上尾市福祉会館事件最高裁判決が説示するように、自治法244条は集会の自由を具体化したものと解釈すべきである。」(96頁)
地方公務員向けの概説論文で、わかりやすく整理されていて、便利である。ヘイト・スピーチに関する川崎事件については「これらの点から考えると、冒頭で紹介した川崎市の事例では、はたして全面的な不許可処分が相当であったか。」
(96頁)と疑問を提起しているが、これ以上の記載がないため、具体的に何を主張しようとしているのかまではわからない。