Wednesday, February 06, 2019

どこまで壊れていくのか、この国は


斎藤貴男『日本が壊れていく――幼稚な政治、ウソまみれの国』(ちくま新書)


監視社会、消費税、改憲問題を初め、この国と社会の表層と深層を取材し、批判してきた著者の最新刊の一つだ。

第1章「このままでは国が壊れる」では、古賀誠、小沢一郎、亀井静香へのインタヴューをもとに、アベ政治の嘘と傲慢を追及する。息を吐くように嘘をつくシンゾーが、この国の歴史も知性も倫理も破壊してきた。保守政治家の3人でさえも、もはや許せない地点に来てしまったことが確認できる。

第2章「無知と不寛容な安倍政治」では、ヤンキー化しながら大国化への野望をむき出しにした政治と、批判的精神を失ったマスコミへの注文が続く。

第3章「強権政治と監視社会に抗う」では、ケータイ人間と化した軽薄短慮なこの国のトップを見習い続ける人々への警鐘が鳴らされる。

第4章「打ち捨てられる個人」では、「戦争道路」、消費税、暴力団排除という3つの話題を通じて、個人の尊重も良識も、尊厳も連帯も失われている現状を解明する。

第3章では、俳人・金子兜太と漫画家・ちばてつやの闘いも紹介される。金子兜太の戦争体験と、「平和の俳句」の歩み。ちばてつやの「満州」体験と漫画人生。

著者は、かつて梶原一騎の伝記『夕やけを見ていた男――評伝梶原一騎』を書いた(これはいまは朝日文庫で『「あしたのジョー」と梶原一騎の奇跡』)。私は『旅する平和学』で、斎藤のこの文章を引用したことがある。今回は、ちばプロ出身の川三番地の『あしたのジョーに憧れて』があることを教わった。