Saturday, January 22, 2022

フェミサイド研究文献レヴューの紹介05

4.4 フェミサイド確認に関する法医学的パースペクティヴ

 

法医学は事件を解決する刑事捜査における証拠の分析と犯罪者の訴追、判決の科学的基礎を提供することに焦点を当てる。法医学研究は、被害者の特徴、関係、殺害場所、被害者発見場所、殺害方法、遺体の状況を調査する。これらの要因は殺人の記録化と捜査に含まれる。Moreschi et al. 2016は、イタリアにおける女性殺害事件を検討し、被害者と加害者の特徴や犯罪をめぐるリスク要因を解明する。

犯罪現場の分析は性的殺人の御捜査にとって重要である。性的動機を確認するために次のような要因が検討される。被害者の着衣状況、体液、性的傷害、身体の性的状況等(Hakkanen-Nyholm et al 2019)。加害者のプロファイリングにおいて、Chan et al. 2010は、法医学調査において人種や年齢の情報も含めることを提案する。犯罪現場の正確な記録は、女性が殺害されたか否か、むしろ自殺ではないか、殺害の動機は何か、フェミサイドであるか否かの決定を可能にする。Bitton and Dayan,2019は、女性の死亡には隠されたフェミサイドがあると指摘する。疑わしい死亡は外よりも自宅で起きる。

 

4.5 統計目的のためのフェミサイド確認のための説明変数

 

フェミサイド、女性殺害のジェンダー動機、ジェンダー浸透性を判定するために、研究文献は、被害者―加害者の特徴づけ、両者の関係、殺害状況、文化的社会的文脈に言及する。Vives-Cases et al. 2016は、被害者と加害者の性別、両者の関係の類型、DV前歴、以前の警察介入歴等をあげる。Walby et al. 2017は、被害者、加害者、事件状況の3つをセットで考える。

実行者と被害者の特徴づけ

Liem and Koenraadt,2018は、親密なパートナーには配偶者や元配偶者だけでなく、現在事実上の関係にあるボーイフレンド、ガールフレンド、同姓関係のパートナーも含まれるという。Dobash et al. 2004は、ゲイ男性が女性を殺害した事例を、男性を殺害した事例と比較して検討する。Caman et al.2016は、スウエーデンの親密なパートナーによる殺害実行犯は、そうでない実行犯よりも社会的に不利益を被っているわけではないという。トルコにおけるフェミサイド研究のToprak and Ersoy,2017は、フェミサイド実行犯は他の類型の殺人犯よりも犯罪歴等が多いわけではないという。

Weldon,2015は、11件の親密なパートナーによる性犯罪を研究し、男性が女性について持っている5つの観念を抽出している。暴力の規範化、支配の欲望、被害者への帰責、薬物中毒の性にして個人責任を否定、犯罪者であるとは認めない、といった特徴がある。親密なパートナーによる殺人の被害者研究と、そうでない殺人の被害者研究は対立する場合があるが、年齢が重要な要因であることは共通している。Shackelford and Mouzos, 2015によると、アメリカでは中年女性に妻殺しuxoricide被害のリスクが高いが、オーストラリアでは若い女性の方がリスクが高いという。

その他に重要な変数とされるのは、妊娠、子ども(目撃者、被害に巻き込まれ)、被害者の職業、女性の売春、政治活動、ジェンダー、LGBTIQ+、健康状態等。

DV前歴・保護命令歴

Vives-Cases et al.2016は前歴がフェミサイド記録における重要要素だという。Koppa and Messing,2019も、被害者保護措置のためにも前歴情報が重要であるという。Mamo et al 2015はイタリアの状況でも前歴の重要性を確認する。

文献レヴューの要約

・攻撃者は被害者と関係があるか、関係を持とうとした

・攻撃者には暴力の前歴がある

・行為は家族関係内で起きる

・名誉、家族の評判、宗教信仰が正当化のために持ち出される

・女性の妊娠も動機となる

LTに対するヘイト・クライム

・女性、人権活動家、ジャーナリストへのヘイト・クライム

・ジェンダーの力関係の帰結としての被害者の従属

・犯罪集団の活動の一部としての殺害

・性的搾取や性的人身売買

・武力紛争における女性殺害

・性暴力の一環としての行為

・女性が情報から疎外されている状況

FGM