中田考監修『日亜対訳クルアーン』(作品社、2014年)
第5章は、イーサー(イエス)の祈りによって天から食卓が下されたエピソードのために食卓と命名された。内容は、むしろ一定の行為の禁止とその違反への刑罰が論じられる。
巡礼、食物、結婚、礼拝のための身体の清め方が説かれ、アーダムの息子たちの兄弟殺しの例が挙げられ、強盗や窃盗の刑罰が確認される。傷害には同害報復であることは有名だ。「命には命、目には目、鼻には鼻、耳には耳、歯には歯、傷には同害報復」(5:45)。
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「信仰する者たちよ、酒と賭け矢と石像と占い矢は不浄であり悪魔の行いにほかならない。それゆえ、これを避けよ。きっとおまえたちは成功するであろう。悪魔は酒と賭け矢によっておまえたちの間に敵意と憎しみを惹き起こし、おまえたちをアッラーの唱念と礼拝から逸らそうとしているにほかならない。これでおまえたちも止める者となるか。」(5:91)
アッラーは厳しいが、赦す寛容の神であることが繰り返されるが、悪魔に関連付けられた事項については、厳しい禁止となっている。
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第5章で重要なのは、もう一つ、ユダヤ教とキリスト教に関する記述だ。
「おまえは、信仰する者に対して敵意が最も激しいのはユダヤ教徒と多神を拝する者たちであるのをきっと見出そう。また、信仰する者に対して愛情が最も親密なのは『私はキリスト教徒である』と言う者たちであるのをきっと見出そう。それは、彼らの中には司祭たちや修道士たちがいて、彼らは高慢ではないからである。」(5:82)
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クルアーンは遠い過去の文書だが、どうしてもイスラエル/パレスチナ関係を想起せざるを得ない。現代の私たちもクルアーンの影響から逃れずにいられないということか。