ヘイト・クライム/スピーチについて延々と論文を書いてきた。初めてこの言葉に出会ったのは1997年8月に、国連欧州本部で開かれた人種差別撤廃委員会を傍聴した時だった。人種差別撤廃委員が「ヘイト・スピーチを処罰せよ」と言っているのに驚いた。1998年の千葉朝鮮会館強盗殺人事件の時に「ヘイト・クライム」という言葉を使った。
もっとも、ヘイト・スピーチは表現の自由との関係で刑事規制できないと、私も妄信していた。人種差別撤廃委員会で何度も耳にした「ヘイト・スピーチの処罰と表現の自由の保障は矛盾しない」という言葉の意味を理解するのに数年かかった。私自身が刑事規制の議論を始めたのは2009年の京都朝鮮学校襲撃事件からだ。差別擁護の邪教から脱するのに12年かかったことになる。
この間、膨大な論考に学び、私自身『ヘイト・クライム』『ヘイト・スピーチ法研究序説』『ヘイト・スピーチ法研究原論』『ヘイト・スピーチ法研究要綱』『ヘイト・スピーチと地方自治体』と5冊の単著、及び数冊の共編著を公にしてきた。
その中で数多くの憲法学研究に学んできた。当初は刑事規制反対論が圧倒的に多いように見えた憲法学だが、この10年でかなり様変わりした。刑事規制を全否定するような議論は姿を消したと言って良いだろう。消極説と呼ばれる見解が必ずしも多数説でないことも明らかになった。中間説や積極説も徐々に増えている印象だ。
とはいえ、ヘイト・クライム/スピーチをめぐる研究はまだまだ不十分である。初歩的知識すらないのに結論を堂々と述べる論者が少なくない。『序説』では「スタートラインに立ったことがないのに、ゴールでガッツポーズを決めている」と揶揄しておいたが、憲法学にはこの傾向がまだあるようだ。
そうした中、表現の自由との関係でヘイト・スピーチについて本格的に論じる憲法学者がいるので、彼らの研究に学ぶことにして、このブログにその一部を書いてきた。例えば、
*
市川正人(立命館大学)
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/06/a.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/06/blog-post_10.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/06/blog-post_13.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/06/blog-post_14.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/06/e.html
松井茂記(大阪大学・ブリティッシュコロンビア大学)
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post_20.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post_12.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post_13.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post_15.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post_16.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post_85.html
根本猛(静岡大学)
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/01/a.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/01/blog-post_31.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/blog-post_3.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2022/02/e.html
榎透(専修大学)
https://maeda-akira.blogspot.com/2021/04/a.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2021/04/b.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2021/04/blog-post_14.html
https://maeda-akira.blogspot.com/2021/04/blog-post_16.html
(榎透説については、この文章を大幅に手直しして、私の『要綱』109~123頁に収録した)
*
今後も憲法学に学び、対話を心がけながら、私自身のヘイト・スピーチ法研究を進めていきたい。