岡本隆司『世界史序説』(ちくま新書)
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西欧中心主義にとらわれた私たちの世界観を反省し、新たな視座を提出する試み。著者は中国史研究者だが、本書ではユーラシア全体の文明史を総合的に展開する。
第1章
アジア史と古代文明
第2章
流動化の世紀
第3章
近世アジアの形成
第4章
西洋近代
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古代から始まる前近代のユーラシア史は、文明のはじまり、遊牧と農耕と都市の意義、世界宗教の登場(キリスト教、仏教、イスラム)、中央アジアとトルコ、そしてモンゴル帝国によって特色づけられる。中央アジアやオリエントと呼ばれた地域の2000年を超える激動の歴史である。
この視座から見ると、西欧は歴史の周縁、僻地であり、主役ではなかった。それが大航海時代、植民地分割、宗教革命、産業革命によって西欧資本主義が形成され、世界史をリードする形になった。
同様に、極東の日本も世界史の外にいた。それが近世近代において、世界史に登場し、西欧的思考を取り入れながら、周辺諸国に影響を与える存在となっていった。
今日、西欧中心主義は、「あらゆる学問の本質に埋め込まれている」。このことを自覚しつつ、学問に向き合う必要がある。
ここから、日本史とアジア史と世界史に向けた意欲的な方法論の模索が始まる。
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著者の世界史にはアフリカの大半とラテンアメリカやオセアニアは含まれていない。その点では、世界史と言っても限られた視座にとどまるが、それでも従来の世界史とは異なる地平を提示していると言えよう。
かつて増田四郎の世界史は地球規模での海洋の世界史という側面があったと記憶するが、岡本世界史はユーラシアの陸の世界史が海に進出する過程を対象としている。